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text by Yukiko Yamane
photo by Noel Richter

14 Issue:Gudrun Gut(Musician, DJ, Producer)




年齢は単なる数字であって、オトナになるという境界線は人ぞれぞれ。定義できないからこそ、誰もが答えを探している。多感で将来のことを考え始める14歳の頃、みんなは何を考えて過ごしたのか?そんなファイルを作りたいと始まった「14歳」特集。東京、NYに続くベルリン編には、年齢やバックグラウンド、仕事の異なる個性豊かな15名をピックアップ。
ラスト15本目を飾るのはドイツ人ミュージシャン兼DJ、プロデューサーを務めるグードルン・グート。3枚目となるソロアルバム『Moment』をリリースしたばかりの彼女は、1970年代後半から現在に至るまでベルリンのサブカルチャー・シーンで活躍している。当時を語る上で欠かせないバンド、マニアD、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン、マラリア!のメンバーとして知る人も多いだろう。その才能はバンド音楽の域を超え、レコードレーベルの設立、DJ、そして実験的なフェミニストコラボレーションと幅広く展開中。ベルリンのラジオ局『FluxFM』での収録を終えたばかりの彼女にインタビューを敢行。彼女はどんな10代を過ごしたのか、そしてユースたちへ送るメッセージとは?(→ in English



ーー14歳のときはどんな子でしたか?


グードルン「北ドイツのリューネブルガーハイデに住んでいました。母と妹と3人暮らし、女系家族でしたね。母が仕事でいない午後は、妹と一緒によくハウスパーティを開いてたんです(笑)。友達を家に呼んで、こっそりタバコを吸ってましたね。母はとてもオープンだったので、わたしたち姉妹は自由でした。でも内心では少しだけもっと厳しくしてくれないかなと願ってたんですよ。たまに家の中を裸で歩き回る母は、とてもクールで温かい人。そんな生活の中で、わたしたちは自分たちでオーガナイズすることを学びました。妹と一緒にランチを作り、時々ディナーを準備して母を待つんです。技術的なことも習得しました。母は修理などが本当に苦手なので、わたしたちで電球やテレビを直してたんです。後でとても役に立ちましたよ、技術面に関しては何も心配ないですね」


ーー14歳のときにどんな24時間を送っていたか、円グラフに書いてみてください。





ーーでは、14歳のときにどんなことを考えていましたか?




ーー当時の思い出でよく覚えていることがあれば教えてください。


グードルン「学校でブンデスユーゲントシュピーレ(日本でいう体力テスト)がありました。アートは大好きですが、本当にスポーツが嫌いでして。友達と抜け出して茂みの中で初めてハシシタバコを吸ったんです。でもハシシは好きじゃなかったし、今でも好きじゃないですね(笑)」


ーー14歳のときに抱いていた夢は何ですか?


グードルン「うーん、覚えてないですね」


ーーでは音楽に夢中になったのはいつですか?


グードルン「10代の頃、ドイツのヴァージン・レコードのディストリビューターであるインディペンデントレコードショップ『Flash』で働いていました。通販システムがあったのですが、わたしは電話でレコードを販売できなかったので、メインの仕事は箱の梱包。その頃はヘンリー・カウやホワイト・ノイズのような変わった音楽を聴いてましたね。最近改めてホワイト・ノイズを聴いてるんですよ。デリア・ダービーシャー、元気にしてる? とても素敵でかなり変わった曲。いつも音楽に興味がありましたし、友達みんな音楽が好きでしたね。よく隣町のレコードショップへ行っては全新譜を聴くのですが、レコードを買える十分なお金はありませんでした。少なくとも試聴はできましたよ」





ーー楽器を始めたのはいつですか?


グードルン「7〜8歳の頃にフルートを演奏してました。祖母がピアノ奏者だったので、妹とわたしは楽器を習わなければいけなかったんです。それで祖母からアコーディオンを教えてもらいました。1979年にパンク・ロックが流行って、友達と一緒にバンドを組むことに。好きなドラマーがいなかったので、自分がドラムをプレイしたかったんです。最終的にドラムとシンセサイザー”Korg MS-20”を担当しました。Korgはいいメーカーですし、MS-20は未だにわたしのお気に入りのひとつです」


ーー作曲も担当されていますよね。


グードルン「実際のところ作曲が簡単ということに気付いたのは驚きましたね。他の人にとって難しいかもしれませんが、自分にとってはとても簡単なんです。わたしはクリエイティヴ、でも音楽、アート、映画、この中からどの道へ進むのか分かりませんでした。なので今でも自分のことはミュージシャンではなくアーティストミュージシャンと呼びたいですね。子どもの頃強制された反動で、リハーサルや練習が今でも好きではなくて(笑)。作曲と制作が大好きなんです。もちろんライヴも毎回楽しんでますよ」



“B-Movie: Lust and Sound in West Berlin 1979-1989 (2015)”



ーー1975年にベルリンへ引っ越して以来、あなたは常にベルリンのオルタナティヴ・ミュージック・シーンの中にいます。80年代の女性ミュージシャンの立ち位置はいかがでしたか?


グードルン「当時わたしたちは20代でとても若かったから、ミュージシャンとして活動することはとても自然でした。ガールズバンドもたくさんいましたしね。10年後に気付いたんです。うーん、ボーイズバンドはキャリアを築いているけど、わたしたちは違うって。それっておかしいですよね。当時はそれについて考えていませんでしたが、今は違います」


ーー音楽業界において、女性ミュージシャンは男性ミュージシャンに比べると残り続けることがまだ難しい状況です。それについてどう思いますか?


グードルン「そのことについてわたしはフェミニストです! 特に音楽業界は女性の声に耳を傾けることがとても重要。なぜなら、女性が男性よりも才能が劣っていることはないので。わたしのアートクラスの女の子は男の子よりも優れていました。エレクトロミュージックとデジタルアートにおける、女性・トランスジェンダー・ノンバイナリーアーティストの国際的なネットワーク『female:pressure』は、世界中のフェスティバル出演者たちの男女比を集計しています。80〜90%が男性です。しかし現在、少し変化があります。優れたフェスティバルはこの問題を認識し、改善しようと動いているんです。もう無視されていないってことですね。ライブをしなければ女性ミュージシャンの音楽はよくなりません。彼女たちにはもっと機会が必要なんです」


ーーミュージシャンを始めてよかったこと、大変なことはありますか?


グードルン「旅行は大変ですね。フライト、空港での待機、時差などがありますし。音響がよければ、ライヴはとてもおもしろいですよ。やっぱり楽しいですし、オーディエンスから得るものもあります。作曲が好きなんですが、これにはいい部分悪い部分どちらもありますね。何か新しいものを生み出すのは素晴らしいのですが、よく行き詰まります。一生終わらないんじゃないかと思う、あるいはそれが嫌いになる。まるで穴に入って二度と抜け出せないような感じ。でも突然アイデアを思い付くんです。その瞬間は最高なのですが、いつも浮き沈みが激しいですね。なんだかんだ言って大好きですよ!」








ーー当時はどんな音楽を聴いていましたか?


グードルン「グラム・ロック。デヴィッド・ボウイとT・レックスのマーク・ボランが大好きでした。初めて行った大きなライヴはジェネシス。『Flash』のボスがわたしたちを連れて行ってくれたんです。彼は若くてクール、ブライアン・フェリーのような人でした。10代の頃は友達とディスコへ行き、カンをはじめとするクラウトロックのライヴをたくさん観ました。今でもライヴとクラブナイトの両方が好きですね」


ーー14歳のときに影響を受けた、大好きだったものはありますか?


グードルン「当時は自分のことがよく分からなかったので、自分自身を見つけようとしていました。でも16歳の頃にファッションデザイナーであるクラウディア・スコーダのTVドキュメンタリーを観たことをはっきりと覚えています。こんなにも自由な人たちがいることをそれまで知りませんでした。自分がやりたいことをする、人生を経験しいろんなことに挑戦する女性たち。”すごい、とてもおもしろい!”。1920年代に活躍したダンサー、ヴァレスカ・ゲルトも好きですね。TVのトークショーに出演した彼女は化粧の濃い老婦人で、オーガズムを踊っていたんです。クレイジーで最高でしたね」


ーーいま14歳を生きている人たちに何かアドバイスはありますか?


グードルン「わたしはラジオが大好きで、新しい音楽をチェックするためにオンラインラジオをよく聴いています。新しい音楽を見つける手段としてラジオはとてもいいんですよ。ベルリンにはいいラジオ局がいくつかありますし、その中でわたしはCashmere Radioが好きですね」


ーー彼らに伝えたいメッセージはありますか?


グードルン「勇気を出して」


ーー最後に何かお知らせがあればどうぞ。


グードルン「最新アルバム『Moment』が発売中で、現在リミックスを制作しています(8/16発売予定)。マラリア!のダブルアルバムを今秋リリース予定、ちょうどアルバムのジャケットカバーに取り掛かっているところです。いつか日本でもライヴしたいですね、多分わたしが80歳のときかな!」



Malaria! “Your Turn to Run” (1991)









photography Noel Richter
text Yukiko Yamane

Gudrun Gut
www.gudrungut.com
@gutgudrun:https://www.instagram.com/gutgudrun/




This interview is available in English

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