2020年にリリースしたデビュー・アルバム『Kid Krow』は全米アルバムチャートで初登場5位、ポップ・アルバムとしては初登場1位という記録を打ち立て、新世代のポップ・アイコンとして世界的に知られる存在となったコナン・グレイ。叶わぬ恋や理解されない孤独などを描いたアルバムの収録曲とは異なり、約1年ぶりとなる新曲”Overdrive”は、相手との未来がどんなに不確かなものでもその先の見えない運命に向かって走り抜けようとするポジティヴな内容。ジャステ ィン・ビーバー、デュア・リパ、マルーン5などを手掛ける豪華プロデューサー陣も参加している秀逸なポップ・ソングだ。今作に向かわせたモチベーションや、自身と友人で作り上げたミュージック・ビデオなどについて話を聞いた。(→ in English)
ーーステイホーム期間中は何をして過ごしていますか。
Conan Gray「大っぴらにするにはかっこいい話じゃないんだけど、友達とビデオゲームをよくやってる。いっぱい電話もしてるね。こんな時間を乗り越えられるのも全て友達のおかげだよ。今は直接会うことができないから、彼らがどんな時間を過ごしてるか話を聞けるのはすごく嬉しいんだ。みんなもそうしてると思うけど、本を読んだり、たくさんテレビドラマを観たりもしてる。あとは、たくさん曲を書いてる……曲を書きながらちょっとおかしくなっちゃいそうになることもあるけど、うん、まあいい感じかな」
ーー”Heather”と”Maniac”はTikTokでバイラルヒットになっています。どのような要素が同世代からの支持や反響を呼んでいると思いますか。
Conan Gray「僕は自分の人生について書いてるだけだよ。僕自身Z世代だし、この世代で生きている人間で、同年代のみんなと同じようにインターネットに触れて育った。僕はただ、自分が経験していることを嘘なくそのままに書いてるだけ。曲に書いてみないと自分が何を感じているのかわからないことも多いんだよね。だから僕にとって曲を書くことは自分のためなんだ。自分の感情を理解するために曲を書いて、それがアルバムになって、そこで僕が密かに考えてたことなんかをみんなに聞いてもらってる。みんなから好かれる理由なんてわからないけど、多くの人が共感してくれていることに本当に感謝してるし、僕が考えてることがどうやらそんなにおかしいわけじゃないってわかってよかった(笑)」
ーー 新曲”Overdrive”のテーマについて聞かせてください。
Conan Gray「”Overdrive”は、自分の人生でやりたいと思っていたことを全部やって、将来のことや心配事や抑制、人が自分のことをどう思うかってことを何も気にしない、そういうことを全部自分で引き受けることについて歌ってる。僕は超ロマンティストで、街なかで素敵な人を見かけるといつも、『ああ! あの人はすごく特別な人、とんでもなく美しいし、僕はもうあの人を愛してしまってるから一緒に海外に引っ越して残りの人生を送るんだ!』なんてことを考えてる。実際の僕はめちゃめちゃ人見知りなんだけど、”Overdrive”は、もし僕がこんなにシャイじゃなかったら見知らぬ美しい人と出会ってどんなことをしたいかについて考えた曲。だから、これはファンタジーだよ。現実逃避で、ちょっとした白昼夢。
僕は本当に一日中空想ばっかりしてるんだよね。常に何か考えてる。みんなのこととか、もしこうなってたらとか、別のこんな人生を送ってたかもしれないとか、そういうことをいつも考えている。だから、”Overdrive”は、見知らぬ人と残りの人生を一緒に生きていく勇気があったらとか、僕がいつもやりたいと思ってたことを全部やる勇気があったらという空想から生まれてる。僕はそんな向こうみずな人間じゃないからこそ、そうやってちょっとしたファンタジーを描く。そういう日々の経験から生まれた感情があって、曲を書きたくなった。僕の人生のファンタジーとして存在する曲。自分が生きたかもしれない人生、生きたいと思う人生だね。実は、この曲、めちゃめちゃ早くできたんだ。書き始めてすぐに歌詞が全部出てきた。最初に“Only met on the weekend(訳: 会ったのは週末だけ)”って歌い始めたら一曲丸ごとできちゃったんだ。すっごく変な感じだった! なにか僕のからだに取り憑いてる?って感じ。この曲を書くのは超おもしろかったよ。トバイアス・ジェッソJr.と一緒に書いたんだけど、彼も”今なにが起こった?”って感じで、僕も”わからないよ!”って。クールな経験だったな」
ーー”Sad Pop Prince”とまで呼ばれるようになった『Kid Krow』に比べて、”Overdrive”はポジティヴで、虹のようなエネルギーを持った楽曲になっていますね。
Conan Gray「うん、この曲は意図的に”悲しくない”ものにした。悲しくない曲を作りたかった。自分に“コナン、人を泣かせないものを出そうよ”って言い聞かせたんだ。喜びで涙が出たり、ホッとさせるようなものを出したくて。ただ僕はこの世のなによりも悲しい曲を書くことが好き。だから、すぐにまたみんなを悲しませるような、憂鬱な曲を出すよ(笑)。でも、今年はポジティヴな気持ちでスタートしたいと思ったんだ。“ちょっとだけ、ほんの少しでも、物事が好転しているかもしれない”って気持ちで今年を迎えたいと思った。だから現実とは真逆の、自分が生きたいって思う人生を歌った。
リスナーには、ちょっとした安心感とか現実からのエスケープみたいなものを感じてほしいし、とにかくみんなに楽しんでほしい。人を悲しい気分にさせる曲もあれば、アンダーウェアだけで跳んだり踊ったりしちゃうくらい幸せな気分にさせる曲もあるけど、今年は悲しい気持ちはもう充分味わったし、みんなに少しでも楽しんでもらいたかったんだ。
同時に、あまり見せない自分の一面を見せたかったんだと思う。僕だっていつも悲惨な気分なわけじゃないんだ。僕はなによりも友達を愛しているんだけど、”Overdrive”は友達と一緒に車に乗って大声で叫んでいるような気分になる曲。その感情が大切だった。今までは自分がどれだけ落ち込んでいるかについて歌っていたし、人生がどれだけ美しいものなのかについてあまり歌ったことなかったから変に聞こえるかもしれないけど、多くのことを当たり前のように受け入れてた2019年を経て、自分に足りないものについて色々気づかされた2020年だった。”Overdrive”の感覚こそが、僕に欠けていたものだったんだよ。その自由なフィーリングこそが、僕に本当に欠けていたものだった」
ーー”Overdrive”のミュージック・ビデオの監督、撮影、編集をすべて自分で行ったそうですが、このビデオを作る上で特に力を入れたことは?
Conan Gray「僕と、一番の親友のひとりディラン・マシューと、僕らの共通の友達との3人でビデオを作ったんだ。パンデミックだから3人だけで、ものすごくDIYに作っている。このビデオでは向こうみずさと興奮と自由なフィーリングを純粋に表現したかった。僕が自分の人生を生きてるように、街なかで見知らぬ人に出会うことにロマンを感じているように、その中にある感情を表現したかった。ビデオの中では、線路の向こう側に誰かを見かけて、突然、彼女との人生を想像してしまうんだけど、実際にそうやって僕は生きてる。そういう僕にとっての真実をビデオで表したかった。僕はとてもロマンティックな人間で、自分の身に起こる全てのことを常にロマンティックにしている、それが僕という人間だってことをね。
こんなに小さいチームで撮影するのは本当に大変だったけど、とてもリアルだったし、楽しかった。ビデオの中には失敗したところもたくさんあるけど、現実の中にある揺らぎのようなものを捉えられていると思う。そもそもこのビデオは、フェイクのような艶やかな美しいものじゃなく、本物であってほしかった。ディランが目の前でカメラを構えているというのは、とてもリアルだ。まさにそれが映したいものだった。もちろんタフだったし、すごく寒くて、なんでこんな裸みたいな衣装を選んだんだろうとも思った。撮影中ずっと寒かったんだよ! 大変だったけど、リアルで現実味があるビデオが作れるなら多少ハードな撮影になったって構わなかった。パンデミックの真っ只中に、セットに100人も呼んで撮影したくなかったしね。いま大人数で撮影している現場なんて非常識だし、本当に無責任だと思う。他のミュージシャンたちも目を覚ましてもらいたいね。危険なのに誰も気にしない。馬鹿げてるよ!」
ーー本当にその通りですよね。撮影現場での思い出に残るエピソードはありますか。
Conan Gray「うん! 僕とビデオに出演してるサダが一緒にプールに飛び込むシーンがあるけど、あの夜は外気が4度くらいで、水はー7度くらいだったんだ。ビデオの中ではすごく楽しそうに見えて、プールに飛び込んじゃえ!って感じなんだけど、実際は凍えるような寒さだった! なんでこんなことをしたんだろうって、めっちゃ後悔してた。僕ってバカかもしれないって。まあ、一時的なもので、すぐ立ち直ったけどね。あのシーンを観る時には、凍えるような冷たい水の中に飛び込んだってことを思い出してほしいな。僕はファンをものすごく愛してて、『ファンのためにやろう!』って飛び込んだんだ」
ーー大学時代に映像の勉強をしていたそうですが、ビデオにはその知識も活かせました?
Conan Gray「大学は1ヶ月間だけ通って、すぐにレコード契約を結んだんだ。正直に言うと、その1ヶ月間の大学生活では、ほとんど何にも学べなかった。授業も全部サボってたし。本当にひどかったね」
ーーでは全部独学だったんですね。
Conan Gray「そうだね… うん、そう、そう! 僕がすごいんだよ。僕がただ頭がいいってことにしておこう(笑)」
ーー最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。
Conan Gray「まずは僕のことや僕の音楽を好きになってくれて本当にありがとう。日本が恋しいよ。毎日考えてる。みんなには本当に感謝しているんだ。みんなに直接会って、一緒に僕の歌を歌って、また日本語を教えてもらえる日が待ちきれない。残念なことに、もう日本語を結構忘れちゃってるんだ。みんなが無事でいてくれることを願っているし、早くみんなに安全なハグをできることを願っている。本当にありがとう!」
Conan Gray “Overdrive”
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Conan Gray
米カリフォルニア州サンディエゴ出身のシンガー・ソングライター。アイルランド人の父親と日本人の母親を持ち、幼少期は日本の広島県で過ごす。歌手デビューする前は、TwitterやYouTubeで赤裸々な人生模様を世界と共有し、フォロワーとの強い繋がりを築き上げる。2018年のデビューEP『Sunset Season』以来、これまでに30億回以上の音楽ストリーム数を記録。エルトン・ジョンや テイラー・スウィフトなど数多くの著名人からの賛辞を受けるコナン・グレイは、自身の寝室を周囲に潜む暗闇からの逃避場所とし、創作活動に取り組む場所へと作り替えた。
“フレンドリーで、可愛らしく、明るくて、クール。それでいてどこか切ない”、そんな彼が紡ぎだす思いと豊かなメロディ使いが同世代から絶大な支持を受け、2020年3月20日に発売したデビュー・アルバム『Kid Krow』は全米アルバムチャートで初登場5位、ポップ・アルバムとしては初登場1位に輝き、2020年における新人による最大のデビュー実績を記録。デビュー・アルバムリリース前に行った3回の北米ツアーと2回のヨーロッパツアーは全公演完売。Billboard誌の「ベスト・ニュー・アーティスト」、さらにPeople誌の 「注目のアーティスト」にも選ばれ、Vogue, V Man, Teen Vogue, Forbesをはじめとする多くのメディアからも称賛を受ける。ベッドルームから世界へと活躍の場を広げる新世代ポップ・アイコン。
日本公式サイト:https://www.universal-music.co.jp/conan-gray/
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