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Our Body Issue : 4 female stories on Netflix

Sex Education Season 1




妊娠中絶規制法への強い抗議を示しており、同法が施行された場合ジョージア州での事業を撤退する可能性を示唆しているNetflix。そんなNetfixが送り出す作品の中から、身体と性、はたまたそこにまとわりつく権力構造について描いた4作品をピックアップ。


Sex Education Season 1




Sex Education Season 1



『セックス・エデュケーション』


配信開始から4週間で4000万を超える世帯が視聴し、異例の早さでシーズン2の制作が決定した、青春ドラマの傑作。自宅でセックスセラピストとして働く母親ジーンと二人暮らしの高校生オーティスが、学校一のバッドガールと評されるメイヴに才能を見出され、学校内で性に悩むティーンたちのカウンセリングを行っていく。個体差のある身体への戸惑いや恐怖という普遍的な悩みとともにSNSでの誇張やネットリンチなど現代ならではの問題が織り交ぜられたストーリー構成、傑出したキャラクター設定とその多様性、展開の軽妙さなどなど魅力は尽きないが、ただ一言で言うならば、自分がティーンの頃に求めていたものはまさにこれだったんだと思う。「なぜ性交を急ぐんだ?」とのオースティンの問いに、ある少女は「取り残されなくない、落ちこぼれたくない」と声を絞り出す。「みんながしているように見えるけどしていない生徒もたくさんいる。レースじゃないんだよ」。求めていたのはこうやって同じ目線で悩みを聞いてくれるオースティンのような相談相手だった。オースティン自身も、性へのトラウマを抱えている。メイヴも、親友のエリックも、いけ好かないいじめっ子のアダムも誰もが問題を抱え、孤独で惨めな気持ちを味わっている。信頼できる相手に話してみることで惨めな気持ちは変わるかもしれない、そんな扉を開いてくれる優しい友人のような作品。


Sex Education Season 1




Netflixオリジナルシリーズ『セックス・エデュケーション』
独占配信中













『レボリューョンー米国議会に挑んだ女性たち』


2018年の中間選挙に、米国議会議員候補として出馬した女性の新人民主党員4人、ネバダ州4区候補のエイミー・ヴィレラ、ミズーリ州1区候補のコーリ・ブッシュ、ウェストバージニア州上院議員候補のポーラ・ジーン・スウェアレンジン、そしてニューヨーク14区候補のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)を追ったNetflixの新作オリジナルドキュメンタリー。監督であるレイチェル・リアースがクラウドファインディングで資金を集め、彼女自らプロデュース・撮影もつとめた。今年のサンダンス映画祭の観客賞を受賞し、Netflixがドキュメンタリーとしては破格の10億円で配給権を買い取った注目の作品である。
「女の身支度は決断の連続。今日、どんな自分を世界に見せるか。男性候補者ならある程度の決まりがある。スーツを着るか、明るめのシャツにズボンで腕まくり。だいたいこの二つでしょう」
冒頭、AOCが化粧をしながらこう話すのを観た瞬間に、本作が女性のための物語だとわかる。政治が題材ではあるが、そこに横たわるのは権力者と現状に身をまかせるがままの人々、そしてこれ以上搾取されまいと抗う人々という、女性問題にも通じる構造だ。米国史上最年少の女性下院議員となったAOCの華々しい勝利を追ったドキュメンタリーと思われている方も多いかもしれないが、選挙に敗れた3人にも均等にフォーカスされていることからも、監督が見せたいものが単なる奇跡の逆転劇ではないことがわかる。大口の寄付者である企業らと繋がり地域の人々の生活を本当には考えていない政治家たちによってもたらされた、それぞれの生活に根ざした問題/不利益を解決するために出馬した4人のうち、当選したのはただ一人。AOCの勇躍が讃えられる一方で、変わらぬ未来と変えられなかった未来のために泣く者たちにカメラが向けられる。トランプの再選も有力視されるアメリカの、光と闇がここにある。





Netflixオリジナル映画『レボリューョンー米国議会に挑んだ女性たち』
独占配信中







『フェミニストからのメッセージ』


フェミニズムの第二波、いわゆるウーマン・リブが席巻していた70年代に写真家のシンシア・マカダムズがアクティビストの女性をニューヨークやラスベガスで撮影した写真集を発表した。本作は、その写真集に登場していた女性たち数人にインタビューを行いながら、フェミニズムの歴史を振り返っていくドキュメンタリーだ。大きな事件が起こったり、ドラマティックな展開があるわけではない、しかし当時の活動家の声を聞くことから、どういう問題に対してどのように立ち向かい、解決をしようとしていたのかという女性の権利問題の根本と現状までの進歩(または変わらなさ)を知ることができる貴重な資料と言える。今と昔、アメリカと日本。様々な違いはあれど、女性であるというただそれだけで理不尽な扱いを受けたことがある人ならば、自分をフェミニストと呼称していなともどこか共感する部分があるのではないだろうか。不当な扱いを受けた時、自分はどんなアクションを起こすのか。そんな時は私たちが生きる今のためにたたかったフェミニストたちを思い出してみよう、きっとあなたの背中を押してくれるはずだ。







『彼女の権利、彼らの決断』


米国で人工妊娠中絶を認めた”ロウ対ウェイド判決”を覆そうとする過去数十年にわたる政治運動を、中絶支持派や反対派へのインタビューとともに振り返るNetflixオリジナルのドキュメタリー。「本来中絶は女性と医師の間で決めることなのに、政治化されすぎている」。これは中絶手術を行っているある婦人科医の発言だ。実際、アメリカでは人工妊娠中絶問題が倫理だけではなく、政治や宗教が絡み合った複雑なトピックとなっている。トランプ大統領が以前は中絶容認派だったが保守派の票集めのために反対派に乗り換えたのはわかりやすい一例だ。アラバマでは中絶禁止法が制定され、この問題はさらに拡大の一途をたどっている。中絶全面禁止となったアラバマでは、銃で腹部を撃たれ流産した妊婦が「妊娠しているにもかかわらず喧嘩を仕掛け、子供を流産した」と過失致死罪で起訴、投獄されて波紋を呼んだ。この問題は対岸の火事ではない、意思決定権を奪われるのは驚くほどにあっという間で、弱者の権利は政治の前で常に翻弄される。アメリカにおける「人工中絶問題」についての驚くべき事実が学べる本作を観て、この問題の本質とは何なのかを知ってほしい。


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