石原海監督最新作『重力の光』北九州市の困窮者支援をするキリスト教会に集う人々と聖書劇を作る日々を記録した、挑戦的なドキュメンタリー映画。2022年4月7日まで、制作費と公開に向けたクラウドファンディングを実施中。
https://motion-gallery.net/projects/jyuuryoku_hikari
本作『重力の光』『重力の光 -祈りの記録編』は、元生活困窮者の人たちや、極道だった人、虐待を受けていた人、生きる意味に悩む人、NPOで働く人、教会で働く夫婦などを含む9人のキリスト教会に集う人々が演じた作品。9人が演じるイエス・キリストや十二使徒、大天使などに扮した新約聖書の演劇と、その練習風景や日常、インタビューなどを交差させた挑戦的な映画だ。
福岡県北九州市にあるこの教会は、監督自身も、困っていた時に辿り着き「ここに引っ越そう」と決意した場所でもある。様々な境遇を経験した人たちの言葉と、演劇素人が聖書に書かれていることを演じるその光景から、コロナ禍で苦しんでいる人、コロナじゃなくても生きるのが辛い人、全く生きることは辛くないけど映画が見たいという人に見て欲しい作品。
「命は人間を照らす光だった。光は暗闇の中で輝いている。」八木咲撮影
資生堂ギャラリー『第15回 shiseido art egg』で発表した『重力の光』(2021年/30分)の制作費と、東京都写真美術館で開催される恵比寿映像祭にて、2月にプレミア上映される「重力の光 -祈りの記録編」(2022年/72分)の製作費、そして全国公開をするための資金を集めたいとクラウドファンディングを実施。
この作品は、文化庁の助成金の申請に落ち、石原海監督の友人や友人の会社などから借金をして何とか制作することができたという。借金返済し、できるだけ多くの人にこの作品を見て欲しいと、全国公開に向けてクラウドファンディングを実施。
八木咲撮影
【監督からのメッセージ】
コロナ禍で2年半住んだイギリスから日本に帰ってきて、友達の家を転々として過ごしていた。半年くらい経って、さすがにこんな生活も続けていられないなと思い、いきなり北九州に住むと決めたときには、アタシはもうずいぶんと途方に暮れていた。こんな混沌とした状況の中で自分の人生をどう進めたらよいかわからなくなっていたし、とにかく疲れ果てていた。そういえば数年前も(当時の状況は今よりももっともっと酷かったし、アタシ自身もどうかしていた)行くあても帰る場所もないという似たような生活をしていた。その当時、友人に連れられて東京から北九州を訪れ、教会に寝泊りしていた生活の記憶だけを頼りに、地元でもない土地にこうして戻ってきたのは、祈りでもしないと生きてることに耐えきれなくなっていたからだと思う。
教会に通うようになって、お金をたくさん稼がなくても、美しくなくても、大酒飲みでも、そんなありのままの自分の存在を許されていると感じるようになった。カメラを持っていないのに、その場にいても居心地が悪くないと感じることができる場所は初めてだった。しばらく経って教会の人たちと過ごしているうちに、今度は教会のみんなと一緒に作品を作りたいと思う気持ちが芽生えてきた。この教会に集う傷ついた愛すべき罪人たちの人生、星の輝きを宿した無名の人々を記録したいと思ったのだ。誰からも必要とされていないという感覚、いつまで経っても何者でもないという感覚が根付いてる自分にとって、この愛すべき罪人たちの、無名の輝きが、あまりにも美しくて眩しかった。
初めて映像を撮ったいつかのあの日と比べて制作費はかなり膨らんできたものの、どうやって出資してくれる人と出会うかわからない、宗教色の強い作品で当てはまる助成金が見つけられなかった、などなどの理由により、もう作品を作り始めてだいぶ年月が経っているものの、相変わらず自主制作(つまり借金!しかも見たこともない額にまで膨らんでしまった)でこの作品を作ることになった。
そんな多くの人に支えられて出来た映画の予算として、プロデューサーが周りに頭を下げて借りてくれた400万円は、(でもこんな全貌の見えなかったプロジェクトに、いつでも良いからとお金を貸してくれただけで大感謝…)文字で見ると気が遠くなるくらい多額だけど、今回関わってくれた人々には微々たるほどしか支払うことの出来ず、大半は制作費として消えてしまいました。あまりにも大きな額すぎて、400万円も借金があることのリアリティがないけれど、もう既にいくらかは返していかないといけない現実が目の前に迫っていて、途方に暮れそう、だけどそんな時間もなく、クラウドファンディングという形で、どうしても皆さんの力を貸していただければと思っています。
次々にいろんな新しい作品が作られるこの世の中で、東京を離れて北九州に住み、教会の人々と時間を過ごす中で作られたこの作品は、アタシ自身のいままで作った作品の中で、そしてアタシの生きてきた人生を決定的に変えてくれた重要な作品となりました。アタシたちは生きているだけで許されているのかもしれない、ということをなんとなく理解できるようになった。もしかしたらいつか、愛されていると感じることができるようになれたらいいな。ギリギリに張り詰めた中で、どうにか崩れ落ちないように踏ん張っている人に、この作品の光が届いて、重力から解放される瞬間が訪れますように。
石原海(UMMMI.)監督プロフィール
HP: http://www.ummmi.net/
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