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田辺晋太郎「本当にあった旨い店」第四回 銀座 IBAIA

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素敵なレストラン

 

人生の中でそう思える店っていったいいくつ出会えるんだろう

 

味がいい 人がいい 雰囲気がいい お酒がいい 場所がいい 値段がいい

 

そのどれかが突出していてはいけない そしてどれもが高みにいなければいけない

 

素敵って難しいのかも

 

不思議だね でもいつの間にかそんなお店に出会ってた

 

運命という川の流れに身を委ね流れ着いた店

 

「銀座 IBAIA」

 

来るたびについついうっとりしてしまう

 

そんな 素敵なレストラン

 

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ボルドー産のホワイトアスパラに焦がしバターソース、エシャロットやパセリ、パルメザンチーズをまとわせる

 

そしてほろ苦いアスパラに更にグレープフルーツの皮を少しだけ、苦味の足し算

 

するとどうだろう、シンプルながら白ワインをどんどん引き込む引力が存在する料理に着せ替えられた

 

 

でももし例えばアスパラが弱かったり、ソースや香草類が強過ぎたらどうだろう

こんなに美味しいはずはない ピントの甘い写真のようになってしまう

 

 

個性派役者を生かすも殺すも つまりは 「塩梅」

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バスク地方の鴨ハツの料理と中央アジアの羊の串焼きにインスパイアを受けた牛ハツスパイシー串焼き

 

カルダモンと山椒をベースにしたスパイスの風味が、一瞬ヨーロッパから思いを旅立たせるのにまたすぐきちんと郷里に戻ってこれるこの 「加減」

 

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パセリとガーリックが入った衣で牛フィレ肉の旨味をグッと閉じ込め、涙をためてこらえている名子役のように肉汁を操る 「揚げ具合」 の牛フィレカツ

 

さっきまで子役だったフィレ肉は、ポルト酒とマデイラ酒、トマトなどで作ったソースで化粧を施し大人の階段を登っていく

 

口の中で噛み締めた途端 娼婦のような妖艶さでその涙と汗を解き放ち心の隙間をうめつくす

 

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そうだ、これが食べたかったんだ!

 

 

心が納得をする その時点でもう虜になってしまう自分がいる

 

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オーナーである兼安さんの自家農園で育てた 赤玉ねぎのスライス アンチョビ風味 でまた新たに肉を迎える準備は完成

 

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パプリカパウダーとグリーンピーマンの色使いが楽しい 岩中豚のバスク風グリル

 

牛フィレカツに続いてやはりこれも深味シェフの火入れの 「妙」 そして脂の旨味に赤ワインがもうどうにも止まらない

 

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「うちは全部あとづけなんですが気づいたら今みたいなお店になっていたんです」

 

兼安さんと深味さん このお二人の呼吸がこのお店自体とシンクロしているからこそ生まれる安心感があり、大河に揺られているような極上の安定感が生まれる

 

 

 

バスク語で 川 を意味する「IBAIA」

 

 

 

大きな川を渡る小さなカヌーに必要なのは 乗員の息の合い方、そしてバランス感覚

 

 

 

いつまでも流れに身を任せていたい そんな素敵なレストラン「IBAIA」

 

 

ここも 本当にあった旨い店

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