美食都市 TOKYO 本家フランスよりもミシュランの星の数は多く輝く街
しかしその輝きは本当に私達に見えているのだろうか?
雲に隠れて見えない星よりも、もっと煌く星は実はこんな近くに、息を切らして駆け抜けてきた道端にこそっと瞬いているのではないだろうか?
そんな思いからスタートしたこのプロジェクト
「本当にあった 旨い店」
鉋みたいに命を削っては情熱を灯している店主の想い、味、その店の空気を
「終わり無き旅」として
あなたと共有したいな、そう、していきましょう。
第一回 「吉祥寺 赤身 肉山」
「なぜ あなたは山にのぼるのか?」
「そこに山があるから」
これはエベレストに登頂したイギリスの登山家ジョージ・マロリーの言葉。
あたかも抑えられない衝動を表すかのように用いられることがあるが、真意はこうだ。
「この名峰があるから 私は登るんだ」
そんな強いこだわりを表している言葉であり、その名峰に強く惹かれるからこそ登ろうとする自分がいる。
そして名峰であればあるほど、その頂から見える景色というものは美しく、力強く、そして優しい。
そこに魅せられた人々がまた登頂を繰り返し、伝聞が広がる。その素晴らしさを伝える。
吉祥寺 赤身 肉山
赤身肉にこだわり、日々その焼き方を研究し、「肉が焼かれたことに気付かないくらいの焼き方が目標」とした主人 光山英明さん。
オープンから一年もたたずに瞬く間に噂は広がり、今や半年先まで予約が取れない都内屈指の超人気店となった。
その理由はなにか? 考えてみた。
*写真は5,000円のコース2人前 (撮影 中野修也)
完全に肉汁を封じ込めた焼き具合で提供されるくまもとあか牛のランプやカメノコ、阿蘇の馬フィレや馬ハラミ、岩手産短角牛のソーセージや蝦夷鹿のスペアリブといった数々の赤身肉がもたらす、噛むことによって感じられる多幸感ゆえか。
赤身肉が太陽なら、その輝きを吸い込み夜に静かに我々を照らす月のような存在であるアスパラやエリンギ、季節の野菜のホイル焼きといった野菜から相性を考えたワイン、ウィスキー、焼酎など肉を美味しく食べるためのアクセントがあるからか。
野球の名門校で高校、大学と主将を務めた光山さんのキャプテンシーとフランクなトーク、そして強い肉への探究心といった豪快さと繊細さを併せ持つ人柄からくるものか。
答えがわかった。 全部だ。
どの道から登っても全ての道がホンモノであり、どこから登ってもたどり着いた頂から見える景色は未だ経験したことのない至福な肉景色。
「高ければ高い壁のほうが登った時気持ちいいもんだ」、それは山もしかり。
「まだまだいくでー!」
更に高みを目指す光山さんの想いが肉山の標高を上げ、一度登頂してももう一度登りたい、他のどの山でもなく肉山に登りたい、そう思う登山フリークを増やし続けている。
吉祥寺 赤身 肉山
紛れも無い名峰である。