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text by Ryoko Kuwahara

Craft Curiosity Issue :「バランスはとても大事。ノスタルジックになりすぎないようにしないと。なぜならそれはかつてあったものということだから。けれど、あまりにも未来的であると、今度は少し異質なもので自分には関係ないものであると感させてしまうかもしれない。身に着けているジュエリーに感情的な繋がりを持つことは非常に重要」Interview with Marland Backus




フィジカルな距離を求められる今、オンラインに没入する時間が増加傾向にある。情報収集や人との繋がりはもちろん大切だが、同時に自身を落ち着いたオフラインの環境に置くこともまた重要だ。自分が求めるものや喜びを感じるものを、己の手を動かして創り上げる時間は、長期戦が見込まれるこのニューノーマルを生き抜くための術でもある。NeoLではハンドメイドのアートで人々を魅了する作家の作品を紹介するとともに、ものづくりの時間へ誘う。
大学でインダストリアル・デザインを学び、陶磁器を作る過程で砂をモチーフにしたネックレスを制作したことからジェエリーデザインの道に進んだMarland Backus。METAL、CLAY、VINYLなどコレクションごとに扱う素材も変えて新しいジュエリーを生み出す、尽きることない自由な創造力と素材への愛や理解。日本のキッチュなヴィンテージ/リサイクル品を生まれ変わらせたチャームネックレスなど、彼女の冒険は止まることを知らない。

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ーー創作を始めたきっかけを教えてください。


Marland : ジュエリーデザイナーになろうとは全く思っていなかったんです。私は家具と陶磁器を中心にインダストリアル・デザインの勉強をしていました。粘土、シリコン、工業用金属などの素材を使って作業をしている間に、それらを使って実際に身に付けることができるものを作ることに興味を覚えていきました。


ーーアイデアからジュエリーを作るまでのプロセスを具体的に教えてください。


Marland : アイデアが浮かんだらスケッチするところから始まり、その後プロトタイプを作ります。通常はプロトタイプを試しにつけてみたり、別の視点を得るために写真を撮ったりして、そこから調整を行い、最終的にプロダクトの完成版を作り上げるという流れです。


ーーその過程で最も難しいところは?


Marland : スケッチからプロトタイプを作る過程が一番難しいと思います。私はしばしば自分の心の中に浮かんでいるものを見て、それをスケッチするんですが、実際に作ってみると重力や物理学のようなものに阻まれて、イメージしているものを作るのが不可能だということがあって。イマジネーションと現実の狭間で落とし所を見つけるのは難しいですね。





ーー立体物を作ることやクラフトに関心を覚えたのはなぜ?


Marland : 私はグラフィックデザインを勉強するつもりで美術学校に入学しましたが、最初の学期中に3Dと呼ばれるクラスを受講して、イラストよりもはるかに向いていることに気づいたんです。


ーーアクセサリーを作る上で必要な知識や技術はどのように習得したんですか?


Marland : ジュエリー制作を学んだことがないので、テクニックやプロセスはすべて独学で得たものです。しかし、ビーズのルーミングや金属細工のようなことを教えられていないからこそ、より創造的になり、ルールに縛られないでいられます。


ーー作品のいくつかはあなたの手作りものとヴィンテージの素材が混じっていますよね。その手法はどのようにして生まれたのでしょうか。


Marland : 日本に住みだしてからチャームネックレスを作り始めました。市場やリサイクルショップで素晴らしいヴィンテージアイテムをたくさん見つけて、刺激を受けたんです。ハローキティのチャーム、ベスト・フレンド・ブロークン・ハート、ミッキーマウスなどのキラキラしたものたち、子供の頃に身に着けていたものを思い出させるネックレスが大好き。そこから子供の頃に夢に描いたネックレスを作るというアイデア、私が愛したすべてのものを1つのネックレスに詰め込むというアイデアが湧きました。このためにリサイクル品を使って作っているのですが、日本にはリサイクル品が潤沢にあって、まるで誰も何も捨てないでその全てがリサイクル品としてあるみたい! 日本のリサイクル文化が大好き!



ーー最初に作った作品はどのようなものでしたか。また今振り返って自身にどのようなアドバイスをしたいですか。


Marland : 大学時代、「ナショナル・ジオグラフィック」誌で顕微鏡越しのように微小なところまでを写した砂の写真を見ました。 Yという文字に少し似た形のこのピースが、どういうわけかずっと頭から離れなくて。当時、私は陶芸の工房で毎日を過ごし、食器のデザインをしていたので、粘土を少し使って砂粒を拡大したネックレスのペンダントを作って身につけていました。その時は真剣にジュエリーを作ろうとは考えていなかったのですが、ネックレスを買いたいという人が多かったので、作り続けようと思ったんです。





ーー作品の中にご自身の“核/個性”をどのような形で表現されていますか。


Marland : 私の個性はさまざまなものが混じってできているので、自分にラベルを付けないようにしています。ひとつの素材やひとつのスタイルにとらわれることはないので、それが作品にも表現されていると思います。コレクションごとに新しいことに挑戦したい。いつも新しいことに挑戦したいんです。


ーージュエリーのタイトルや形状、コレクションテーマには素材の名前が使われていたり、それに関連するものだったりしますが、どうしてでしょうか。


Marland : 最初にジュエリーを作り始めた当時、インダストリアル・デザインの勉強が自分の大部分を占めていたので、素材にフォーカスすることは必至でした。使用している素材の多様性は、私のブランドを際立たせていると思います。


ーーあなたの作品はフューチャリスティックであると同時にノスタルジーを感じさせます。そのバランスに関してはどう捉えていますか。


Marland : バランスはとても大事。ノスタルジックになりすぎないようにしないと。なぜならそれはかつてあったものということだから。けれど、あまりにも未来的であると、今度は少し異質なもので自分には関係ないものであると感させてしまうかもしれない。身に着けているジュエリーに感情的な繋がりを持つことは非常に重要だと思います。あまりにも馴染みのないものだとしたら、手元に置くのは難しいんじゃないでしょうか。


ーーどんなものからインスピレーションを得ていますか。


Marland : 古い宝石やファッションの本を見るのが大好きです。70年代にも素晴らしいものがありますが、古代のオブジェや文化的工芸品を見るのも大好きです。しかし、作品のインスピレーションは船の索具やコンピューターケーブルのような予想もしていなかったものから受けることが多いですね。


ーー次はどのようなジュエリーを作りたいですか。


Marland : 今はノスタルジックなものと未来的なもののバランス、そしてありふれたものとグラマラスなもののバランスに興味があります。私は、ステンレス鋼や糸などの産業用素材、日常の素材を扱ってきました。そして、それらを天然石や真珠などのより貴重な素材と組み合わせることを考えています。





ーーこれから創作を始めるビギナーに向けて、技術的、精神的なアドバイスをお願いいたします。


Marland : この時代を生きるデザイナーにとって、Instagramのように心を曇らせ、自分のアイデンティティを歪めるようなものに近づかないことが重要。他の人が何を作っているかを見るのは良いことだと思いますが、最良のアイデアはあなた自身から生まれるのです。


ーー素材や道具の購入にオススメのメーカー/オンラインショップがあれば教えていただけますでしょうか。


Marland : 素材を購入するのにお気に入りの場所は浅草橋。宝石店もたくさんあって、何年通っても新しい店を見つけられるくらいなんです。


ーー新型コロナウィルス感染症(COVID-19)でクリエイティヴ面にどのような影響が出ていますか。


Marland : COVID-19によって、作業にいつもより多くの時間を費やすことができました。しかし、一日中家にいてインスピレーションを得ることは難しいので必ず散歩に行きます!


ーーこの側面で新たに気づいたこと、やってみたいアイデアがあれば教えてください。


Marland : 常に知能、技能を広げて、新しい材料とプロセスについて学びたいと思っています。そして日本語が上手になりたい!


ーー事態が好転し、COVID-19が収束したらしたら何をしたいですか。


Marland : すぐに浅草橋に直行します! 素材を手に入れたら、やりたいアイデアがたくさんあるんです。


ーーニュースなどお知らせがあれば教えてください。


Marland : Radd Roungeでのポップアップショップが3月に開催される予定だったのですが、COVID-19でキャンセルになったんです。事態が収束したら改めてポップアップのスケジュールを組む予定です。


Marland Backus
jewelry designer

IG : @marlandbackus
www.marlandbackus.com

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