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text by Mayu Uchida
photo by Rebecca-Marian Irene

Fashion/Reborn: 「現在は、郊外と平凡さが醸し出す安心感について探求しています」Interview with Rebecca-Marian Irene

NeoL Magazine JP | Photo: Rebecca-Marian Irene Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara


誰もが経験したことのないニューノーマルの時代に突入している中、クリエイティヴ業界では、アート/コマーシャルの垣根を超えて新たな側面から制作に取り組む姿勢が見受けられる。今回は、様々なバックグラウンドを持つフォトグラファーたちの創造力・技術への向き合い方を探りながら、華美な物語からストリートで巻き起こるファッションフォトグラフィーの過去・現在・未来においてどのような変遷が起きているのか掘り下げていく。
影と光を駆使し、飾らない神秘的な雰囲気を醸し出すとともに、背景や構成においてミニマリズムを追求したスタイルが特徴のメルボルン拠点のファッションフォトグラファーRebecca-Marian Irene。多くの作品には一貫として鮮やかな色を纏ったフラワーが用いられ、そのフェミニンなムードが溢れる官能的な空間に引き込まれていく。時代の流れが変化してきている中、日頃目にする身近なものからインスパイアされている彼女のスタイルがどう今後変化していくかを追っていく。(→ in English


ーー自己紹介をお願い致します。フォトグラファーになった経緯など。

Rebecca「家族全員がアーティストで、多くは画家やミュージシャンであったり。私の祖父はフォトグラファーだったのですが、彼から技巧について語られることはありませんでしたね。私の最初のカメラは、小学6年生か中学1年生に家族旅行で買ってもらった使い捨てのカメラです。母が写真を現像してくれました。のちに、祖母から母へ受け継がれたOlympus Trip35を母が私にプレゼントしてくれました。今でもそれで撮影することは度々あります」

ーーどのようなプロセスを経て、現在のスタイルに至ったのかお聞かせください。

Rebecca「自身のスタイルはまだ発展し続けていると思います。いつでもそうであり続けると思います。ちゃんとしたトレーニングを受けてきたわけでも無いので、その発展していく過程において、実験的なアプローチをとっていることが多いです。同じアイデアを異なるコラボレーターとともに様々な写真を通じて自分の気持ちが晴れるまで追求しています」

ーーどのように自身の個性/アイデンティティーを作品に落とし込んでいますか。また、どのようにそれを極めているか教えてください。

Rebecca「意図的である、でないに問わず自然とそれは作品に映し出されます。私の作品の軸になっているのは薔薇です。それはいうまでもなく母の薔薇を植える姿を見て育ったから。誰も気づくことはない(気付いて欲しくもない)のですが、多くの作品は私の人生の中で起こった出来事を反映させています。そのようにして作品に自分の核を落とし込んでいます」

ーー作品をクリエイトする際、心掛けることはありますか。

Rebecca「題材はよく変わります。現在、郊外と平凡さが醸し出す安心感について探求しています。ロックダウン(都市封鎖)が発令される前は、異なるチームと二度、自分の地元地域を見てまわりました。今は、モデル、スタイリスト、ヘアメークアーティストとお仕事は出来ないのですが、政府から義務付けられている短時間の外出の際、カメラを必ず持っていき、近所付近を歩きまわります。自粛要請により、自分の中で郊外の捉え方が変化してきたため、このシリーズは、思っていたより長引きそうです。また、平凡さは必ずしも身の安全を保証してくれるとは限らないということ」

ーー撮影の際、ライティングなどこだわっている点がありましたら、教えてください。

Rebecca「デジタル操作による加工より、カメラが映し出す自然な状態が好きなんです。私だったら放射状に溢れ出すブルーム加工をフォトショップでするよりも、UVフィルターにワセリンを塗って同じような加工を作り出します。薄いジェルを用いて撮影するのはとても楽しいです。コンピューターをいじくり回し頭を悩ませるより、実践的な方法を応用して、思い描いていたものを生み出していくほど、楽しいことはありません。映画制作に携わっていた頃は、実践的な方法を用いて自然な光を生み出すのにこだわっていました。それは、登場人物のシーンを際立たせるのにとても重要な役割を果たしていました。ですが、フォトグラフィーにおいては、そこまで重要ではありません。また、ストロボやスポットライトなどの人工的に作り出されるライティングを用いて撮影するのが大好きです。光はどこからでも入ってきて、誰もそれについて疑問に思うことはありません。見ている側はその写真を現実に存在しているものとして捉えるより隔離された世界として捉えます」

ーーインスピレーション源はどこから湧いてきますか。

Rebecca「それはどこからでも。映画業界において黄金期と呼ばれる時代の煌びやかな映画スターたち。1970年代のPlayboys。ルネサンス期の絵画。Wong Kar-wai(ウォン・カーウァイ)監督が手がけた映画。眠りにつく際に、突如よみがえってくる自分がティーンの頃に選んでいた不気味なスタイリングなどの変な思い出。不適合者やプロムクイーンを題材としたアメリカ映画。アイデアのリストを作ろうと心がけているのですが、足していくのを毎回忘れてしまいます」

NeoL Magazine JP | Photo: Rebecca-Marian Irene Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara


ーーどのように現代の流れと自身のスタイルのバランスをとっていますか。

Rebecca「言葉にするのは難しいです。メルボルンで流行ったカウボーイスタイルのトレンドは素晴らしいと思いました。特に、自分自身がマカロニ・ウェスタン(1960年代から1970年代前半にかけて製作されたイタリア製西部劇)が好きだったので、その要素を取り入れるのはとても簡単でした。ですが、詳細を省いて言うと、他にも退屈だと思い、出来る限り取り入れないようにしていたトレンドもあります。自分のスタイルとトレンドの両立に関しては、そこまで考えたり、問題だと感じたことはありません。意図的であっても、そうでなくても、私のスタイルは自然とその過程の中で反映されていきます」

ーー新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、ファッションフォトグラフィーの業界においては、どのような影響がありましたか。

Rebecca「私は自分の作品で生き抜く術を失いました。どん底に落とされた気分です。社会隔離が始まって最初の1ヶ月は仕事ができず嘆いていましたが、今はコマーシャル以外でどのようにフォトグラフィーに従事することができるか考えるようになりました。これまで長い間、自分の創造力をバネに経済的成功へとつなげていたので、それが通用しないことに対し恐怖感を感じたものの、解放された感じがします。アートはアートのためにという捉え方になりました」

ーーSocial isolation(外出自粛)の期間が長引いている中、自身のクリエーションに対する捉え方などに変化はありましたか。

Rebecca「完全に新たなものになり、まだ手探り状態です。これまでの自分の創造力とは異なる発想が求められることに対し、衝撃が隠せず、その現状を徐々に受け入れている段階です。様々な手法を試していますが、まだ表で語れるようなことはありません。完成度が100%でない限り世には出したく無いのです」

ーー今後、新たにチャレンジしてみたいことはありますか。

Rebecca「あるといえばありますが、無いです。今は、自分のペースでゆっくりと現実を受け止めています。残念ながら、新型コロナウィス感染症と同じタイミングで、私の身の周りで悲劇が並び、精神面は完全にやられました。目標は、これまでの普段の生活を取り戻すまで、自分と身の周りにいる人々を大切にすることに注力を注ぐということですかね」

ーーこれからどういう風にファッションフォトグラフィーは変化していくとお考えですか。

Rebecca「残念ながら、私には予測することはできません。直感に反するかもしれないのですが、今はあまり考えないようにしています。私たちが知っている世の中はなくなりました。なので、これから到来する新たな時代に適応できよう備えたいです」

NeoL Magazine JP | Photo: Rebecca-Marian Irene Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara

Photographer & Stylist: Rebecca-Marian Irene
IG @rahmsmohamed
Photo assist: Ivy Rose
IG @toogothforgranma
Model: Rahma Mohamed of Duval* Agency
IG:@rahmsmohamed
@duval.agency


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