オランダのクリエティヴ業界を盛り上げているアーティストたちを取り上げる「.nl Issue」。近年、多くの国が国境を閉鎖しナショナリズムが高まり、世界共通の言語でもあるアートを通して団結することが以前よりも重要となってきている。NeoLでは、現在の状況と予測不可能な未来のために、議論ができる空間を様々な形で人々に提供するアーティストやアクティビストへのインタビューに取り組み続けている。本特集では、限界に挑み続け、フロントランナーとして走るオランダに在住するアーティストを紹介し、国の魅力についてはもちろん、今現在の環境、社会構成、政治などの問題を乗り越えるために必要とされる緊急性と行動力を喚起したい。
17年前、Rem D. Koolhaasは、建築とファッションの分野を組み合わせるというリスクを冒し、United Nudeが生まれた。シューズと建築の間の完璧なバランスを生み出したブランドは、リテール業界を席巻。LADY GAGAでさえドアをノックし、Issey Miyake、Zaha Hadid、Iris Van Herpenなどとコラボレーションし、このブランドは止まることを知らぬ勢いを持つと知らしめた。モデルのShaun Rossとのコラボレーションでは、幅広いジェンダーレスシューズを発表し、靴の未来が持つ無限の可能性を世界に再び示した。見事な見た目と快適さを兼ね備えていることでも最強なUnited NudeがNeoLに登場する。(→ in English)
-United Nudeは2003年にメビウスシューズの制作とともに設立され、それ以降数え切れないほどのデザインを発表しています。新しい10年の始まりに、改めてデザインの原動力は何か教えてください。
Rem「私たちのデザインアプローチは、長年の間にかなり変化しました。初期は常にコンセプトを優先して形作っていましたが、今は快適さとメイクアビリティにも非常に気を配っています。履いてくれる方のお気に入りになることができる靴を作ることが目標であるため、快適さが主要な優先事項の1つになってきたのです。これは私たちの靴が以前ほど面白くないという意味ではなく、制作技術が上達したということですね」
ーーUnited Nudeが3Dプリンティングでの実験を行なっている何年も前に、この技術は高価で、おそらく独占的に使われるだけだろうと言及していますね。そこから時が流れましたが、まだこの意見に賛成ですか、それとも3Dプリントで作られたシューズがマスに販売される時期にきていると思いますか。
Rem「私はまだ大量生産の方法としての3Dプリンティングは従来の生産方法と競合することはできないと思っています。ですが、3Dプリントの現状については、現実的な視点だけでなく常に様々な将来の可能性をポジティヴに見据えていますよ」
Los Res Car
ーー靴はファッションと建築の中間に位置しています。あなたのデザインアプローチは他とは非常に異なるように思いますが、新しい靴をデザインするときに行うクリエイティブの過程について説明していただけますか。
Rem「私はいつも靴(特にハイヒール)の構造を小規模な建築物として捉えています。カンチレバーの建物から得られるのと同じ興奮を同様の構造の靴のかかとからも得るのです。重力に逆らうことは建築で行う最もマジックに近いことの1つです、どのような建築のスケールレベルでもね」
ーーストアのコンセプトもあなたにはとても重要ですよね。ほとんどのストアが特別仕様でデザインされていますが、United Nudeの店に足を踏み入れた消費者にどのように感じてもらい、どのような体験を作りたいと思っていますか。
Rem「そこも数年かけて少し変わっていますが、思い出に残るひとときを体験してもらいたいですね。デザインを変えているのは、他と違うものにすることが主要な目的ではなく、お店を改善しながらも何か新しいことに挑戦するためです。停滞することが嫌で、現在は一時的なポップアップショップやイベントスペースをよくやっています。私は空のギャラリースペースが大好きで、その時だけのヴァイブスを作り出すのも好きなんです。小売業は将来的にはそういう方向に向けて進むべきだし、そうなると思います。各店舗はギャラリースペースのように、そしてブランドは遊牧民のようになるんじゃないでしょうか」
ーーなるほど。UNは珍しいデザインにもかかわらず手頃な価格設定です。リーズナブルな価格で販売しながら、このような革新的な靴をどのように制作できるのでしょうか。
Rem「“価格ではなくデザインによってエクスクルーシヴである”。これはブランド設立当初から常に私たちの主な目標の1つになっているのですが、すべて生産量と生産地にもつながる部分なので簡単ではありませんでしたね」
ーーブランドはアジアのさまざまな国で成功を収めています。これらの地域では、なぜ靴に対する需要が高いのだと思いますか?
Rem「急速な経済成長と文化の変化が原因ではないでしょうか。だからこそ西洋ほど回顧的な志向ではないというか。デザインに関して、アジアの新しいもの、実験的なもの、未知のものへ惹かれることがよくあります」
UN x Issey Miyake SS20 Collection
ーーIssey Miyake、Zaha Hadid、Iris Van Herpenとコラボレーションしていますが、他にも進行中のコラボレーションはありますか?
Rem「私たちは最近、国際的なスーパーモデルのShaun Rossとともに、初となるジェンダーフルイドハイヒールを発売しました。それ以外にも、ロサンゼルスのデザイナーとのローカルでのコラボレーションをいくつか行っています。コンテンツ主導のブランドとして、私たちは常に複数のパートナーと同時にコラボレーションしていますよ」
UN x Issey Miyake SS17 Collection
ーーデザインしている靴が他のどれにも似ていないため、多くの人があなたにブランドを始めるようにすすめたそうですね。自分のブランドを維持しているデザイナーとして、自分のブランドを立ち上げることを目指しているデザイナーに何かアドバイスはありますか?
Rem「何かユニークなものを作ってください。必ずしも独自のプロダクトである必要はありませんが、それを作ることで自分だけのマーケティングや販売戦略にすることができます。理想的には3つすべてを備えた方がいいですね。また、現実的な計画と十分な資金がなければブランドを立ち上げないことをおすすめします。多くの新しいブランドが、財政上の制約のために成功していないのが実情です」
ーーあなたは建築家Rem Koolhaasの甥ですが、2人を比較したりないまぜにするような質問をされることにうんざりしていますか?
Rem「まさに、紛れもなくイエスです」
ーーでは次の質問にしましょう。Tech-wearはファッション業界で最近話題になっていますが、シューズの未来はどのようになると思いますか?
Rem「ますます実用的なものになると思いますし、Tech-wearはその方向性にぴったりなものです。快適さと製品エンジニアリングが向上し続けるのは本当に素晴らしいことです」
ILABO shoes
ーー以前にLADY GAGAの靴をデザインしましたが、どのような人が自分の靴を履くと想定して作っていますか。
Rem「強くて自信のある女性と男性」
ーーデルフトのTU工科大で建築の修士号を取得しています。オランダは建築の最前線として有名ですが、なぜこの国は革新的な建築家を生み出し続けているのでしょうか。
Rem「オランダ人は潤沢な国土を持っていなかったので、生き残るために創造的になる方法を学びました。彼らは造船業者になり、国際的な海上貿易を始めました。何世紀にもわたってオランダの文化に創造的な革新をもたらしたのは、その同じ精神だったと思います」
SS20 Collection: Square Sandal Hi Shoe
SS 20 Collection: Glam Slingback Shoe
text Ayana Waki