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メキシコのルーツを探るーーRICK OWENS 2020SS WOMENS COLLECTION 「TECUATL」RUNWAY

Rick Owens Fashion Show
Ready to wear Collection spring Summer 2020 in Paris


今シーズンのテーマである「TECUATL」 これはリック・オウエンス自身の母方の祖母の旧姓にちなんでつけられた。今まで自身にメキシコの血が流れていることをことさらに探求したことはなかったが、アメリカとメキシコの国境に関する議論は自身が分離してしまうようで自らのルーツをさらに意識させると彼は語る。メキシコとの国境に物理的な”壁”を建設する計画を実行に移そうとしているアメリカのDonald Trump(ドナルド・トランプ)大統領へのRick Owensなりのリアクションとも言える。


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Ready to wear Collection spring Summer 2020 in Paris


ネイティブメキシカンの母親と、ポータービルの裁判所にて移民労働者の権利を守るため翻訳者として働いてる父親のもとに生まれた彼は、米国の農業産業が抱える移民の労働者問題と彼らの苦労を見て育ってきた。そんな父親に連れられて、小さな町の寂れたメキシコ映画館へ度々訪れた。


その中で彼はMARÍA FÉLIX(マリア・フェリックス)という女優に出会う。メキシコ映画の黄金時代(1930年代-1950年代)を象徴する役者のひとりであり、当時の男性優位な社会でそれに反抗するような強い女性をよく演じていた。また、彼女はパリへ移り、カルティエのジュエリーを多数所有したことでよく知られている。彼はその映画の中の曲で使われている “CORAZON, TU DIRAS LO QUE HACEMOS(私の心が、何をしたいかを決める)”というフレーズを繰り返す彼女の声を使ってランウェイの音源を作ることを依頼した。


Rick Owens Fashion Show
Ready to wear Collection spring Summer 2020 in Paris


アニ・アルバース(1899‐1994)は、20世紀のテキスタイル、工業デザイン、版画、ジュエリーの分野で活躍したアーティスト・教師。彼女はドイツの美術学校「バウハウス」で夫のジョセフ・アルバースと出会う。彼らは1930年代にドイツを離れ、メキシコの考古学サイトを訪れる。彼らのモダニズムデザインはそこで出会ったピラミッドやヒエログリフの幾何学的モチーフから着想を得た。彼らの生み出した革新的デザインは、いまでもなお斬新さを保ち続けている。


幾何学的なモチーフはドレスの肩紐のデザインや、ダッチェス・サテンのボンバージャケットのレースのデザインから感じられる。今回のランウェイで度々登場する幾何学的な平面と直線で構成されるニットドレスは、ダイナミックにカットされ深くスリットが入っていて、体のラインを大胆に露わにしている。

Rick Owens Fashion Show
Ready to wear Collection spring Summer 2020 in Paris


カラーリングやディテールは、母方のルーツである“メキシコ”をテーマにした20SSメンズコレクションと連動した要素も多い。リック・オウエンスらしからぬ、彩度の高い色使いは、メキシコ人の建築家のルイス・バラガンからインスパイアされたものだ。煌めくゴールドのシークインを散りばめたロングドレスや、オーロラのごとく輝くスカート、シューレースを幾重にも巻き付けたかのようなジャケットなどは、ネイティブメキシカンの母が教会の野外劇で着ていたスパンコールがたくさんあしらわれた民族衣装などから発想を得ている。



まるで兜のような存在感のあるヘッドパーツは、アステカ文明の王冠を表現。これはイギリス在住のデザイナー、スティーブ・ウィンタークロフトに依頼して作ってもらったもので、FRITZ LANGのSF映画に出てくる近未来的なエイリアンを彷彿させる。また、彼のコレクションで毎度注目されるサングラス、今回は1950年代のアメリカ西海岸・イーストロサンゼルスにおいてメキシコ系移民(いわゆる「チカーノ」と呼ばれる人々)が行っていた車高を低くするカスタムを特徴とする、ローライダーと呼ばれる人たちの間で流行っていたものにインスピレーションを受けている。

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Ready to wear Collection spring Summer 2020 in Paris


今回のコレクションでリック・オウエンスらしい構築的なフォルムとして特に印象に残ったのは、ショルダー部分のデザインだろう。トライアングル状のパーツを型にあしらったアウターや、空に向かって突き出したショルダーが印象的なドレスなどがランウェイに姿を現す。ブレザーやオーバーシャツにはストラップがあり、取り外して腰に巻くこともできる。民族的なシンプルでオーバーサイズで着れるコートやマントには、スタッズついた絹やメガプリーツが施された頑丈でカラフルなマッドコットンといった生地が使われていたり、彼のこだわりが感じられる。





厚底ヒールの綺麗なカウボーイブーツやファーストルックから度々登場するウエストバックは、骨盤から突き出たツイストを加えた彫刻のようなパーツになっている。また、バブルアーティストの一団が無数のシャボン玉を浮遊させ、幻想的な空間を作りだす。モデルたちが淡々と歩みを進めているランウェイのなかに、メキシコ映画のような牧歌的な陽気さを表現した。

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Ready to wear Collection spring Summer 2020 in Paris




RICK OWENS 2020SS WOMENS COLLECTION 「TECUATL」RUNWAY
THURSDAY 26 SEPTEMBER 2019, 18H00
PALAIS DE TOKYO, 13 AVENUE DU PRÉSIDENT WILSON 75116 PARIS
https://www.rickowens.eu/

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