ーああ、確かに型がある中での革新というのはやり甲斐もあるけどチャレンジングですよね。でもJOHN LAWRENCE SULLIVANの服は、メンズでもレディースでも一目でわかるじゃないですか。ロゴなんかなくても、シンプルなジャケットでも、そのシルエットや佇まいが強くてエレガントだから。それはすごいことだと思います。
柳川「僕は理にかなった服を作るのが好きなんです。例えば張りのある生地を作ったら、この生地を活かすにはどういうフォルムが一番いいのかと考えて、ちょっと丸みを出すとか。食材を活かす料理というか、生地を活かすために縫い目をこういう風に取ろうとか、そのちょっとしたところで違ってきますから。そして材料となる生地にしても、納得がいくまで何度も生地屋さんとやり取りをします。新しく入ったパターンナーなんかは、ここまでやるんだって驚いてますね。企業のいち事業とは異なり、自分たちで全て責任を持って行っているブランドだからこだわれるところには限界までこだわりたいんです」
ーそれがトレンドとは一線を画す服である所以であり、憧れのブランドとなっている所以ですよね。
柳川「この間も雑誌の方に憧れのブランドと言われて、嬉しかったんですよ。それは自分が目指していたところなので。例えばレディースでは、感覚に余裕があって、仕事もちゃんと出来て、自立してる女性が何を着るか、何にグッとくるかと考えながら作っているんですが、独自のスタイルがあるから着るにしても雰囲気が必要になると思うんです。メンズもそうなのかもしれませんが、誰彼にも売れる気軽な服じゃないというのがJOHN LAWRENCE SULLIVANの大変なところでもあるんです。そもそも大多数を取りに行くとシルエットはゆとりのあるものにならざるをえない。でも本当にクールなものはどこにあるのかとなった時に、自分たちがそれをやらないと、という気持ちがあるので、突き詰めていくとミニマルなものになってしまう。でも本当にほしい人がちゃんと理解して買ってくれればそれでいいとも思っているんです」
ーちなみに柳川さんがレディースを作る時に描くのは理想の女性像ですか?
柳川「理想の女性とはまた違うかもしれませんね」
ーじゃあ自分が女性だったらこういう服を着たいという感覚ですか?
柳川「着たいと思います。こういう服しか着ないと思います」
ー納得です。柳川さんはメンズの服の作り方にしても、シャープさの中にフェミニンンさ、繊細さがあるし、やっぱり女性的な目線、感覚が備わっているんだなって改めて思いました。
柳川「そういう部分はありますね。洋服に美しさを求めてるというか。ジャケットなんかも、着てみて鏡の前に立って動いてみた瞬間のエレガントさがすごく好きなんです。素材がフッと靡いたり、歩く時のふわっとした感じ、そういうところにこだわってしまうので、多くの日本のメンズデザイナーとはちょっと違う感覚かもしれませんね。どういう人をイメージして作ってるかという質問も多いんですが、メンズでもレディースでもイメージにないようなものを作りたいからやっているので答えられないんです。まあ強いて言うと、ジェンダレスのイメージですね」
ー ああ、それはいいな。
柳川「女性もドレスを着たいという一方で、マニッシュなものを着たいという願望もある。男性にしてもワークウェアも好きだけど、スーツのようなセクシーな服を着たいときもある。その狭間、ギリギリの部分が好きです。感覚でしかないですけどね。リサーチ能力さえあれば分かりやすい世界観を作る事は出来ると思います。でも自分たちでやらないといけない事を考えると、そことは違う独自の感覚になってくる」
ー人に見られるためとかそういう次元じゃない、ある種、すごくストイックな作り方ですよね。
柳川「一番重要なのは自分達のマインドですから。トレンドじゃないと言われても、今これを作りたい、これはこのシルエットでやりたいっていう。深夜に絵を描いていて、わかりやすい方向に近づいていたらそれは切って、自分らしいものに変えていく作業はすごくしていますし、僕が作っているのは単なるファッションではなくスタイルなんだという想いがありますね」
ー今メンズはパリコレクションで発表されていますが、レディースの展開でもそのようなことを考えていますか?
柳川「海外の展示会に出せるようなスピードにはしたいです。実際、できなくもないと思ってます」
ーその前に、東京でショーを見たいです。
柳川「実はやりたいと思ってるんです、できるならば。なんと言われようが、完全にJOHN LAWRENCE SULLIVANの世界観を打ち出せるようなものにしたいという気持ちはあります」
ーそれはめちゃめちゃ見たい。ぜひ実現させてください。