ECKHAUS LATTA
—すばらしいテキスタイルですね。
LATTA「この作品はNYファッションウィーク用に作ったもので二部構成になっており、MoMAとスージー寺山という別々のところで発表したもののうち、MOMAで発表した作品の再構築をしたものです。子供演劇の衣装を再構築したものと自分のマンガをミックスさせています。私はアート活動以外にマンガを描いているのですが、マンガは通常一方に進行していくけれど、私の作品は自分で切り取って順番を変えてそれぞれのストーリーを作れるようになっています。そのマンガの内容は“don’t touch me i’m tuck chic“。9.11を経験した女の子が、そこから避難して日本にやってきて3.11を経験するというストーリーになっています」
—服に西洋絵画的な要素を感じたのですが、絵を描いていらっしゃるということで納得しました。
LATTA「ファッション出身ではなく、美術学校出身で絵を描いていたので絵画からの影響はあると思います」
—あなた方にとってファッションはどういった位置づけですか?
LATTA「その答えわかっていたらこの活動はしてないと思います。作ったものを人がどういう思いで着るか、着た人がどう解釈するのかが重要だと思っています」
—アートと同じで、受け取る側とのインタラクティヴな関係を楽しんでいるのですね。
LATTA「ファッションとアートは切り離しておらず、同じ枠組みで考えています。ミュージアムやギャラリーでも商業施設でもやるし、ファッションとアート全部ひっくるめていろんなとこで活動できるというのがコンセプトとしてあります」
ECKHAUS LATTA はマイク・エクハウスとゾーイ・ラッタによるファッションブランド。彫刻とテキスタイルデザインを学んだ2人は、大学卒業後、多くのブランドやアーティスト、研究機関で様々な活動に従事。マイクは Marc by Marc Jacobs と Opening Ceremony で 2 年間 メンズアクセサリーのテデザインを担当。ゾーイは自身のテキスタイル会社を設立し、Calvin Klein, Opening Ceremony, Marc Jacobs などにニットや生地を提供。アート、ファッション、教育現場での経験も豊富な2人は2011 年にECKHAUS LATTA を立ち上げ、 最も注目されるブランドの一つと言われている。
http://eckhauslatta.com/collections/
INSTAGRAM: @eckhaus_latta
Nhu Duong
—今作のテーマを教えてください。
Nhu「去年のSSコレクションのテーマがユニフォームや作業着だったのですが、そこからインスパイアを受けた作品になっています。型にはまったパブリックなものをパジャマのように着るなど、公を私に変化させて表現できるかにチャレンジしました。着る人によって見え方が違うという、着こなしの部分を重要なポイントとして考えています」
—Karl Holmqvistとコラボレーションしたのはなぜですか。
Nhu「言語や陶芸といった彼の分野に興味があったからです。今回のコラボレーションが初めてではなく、以前に彼のパフォーミングアートの衣装を提供してたこともあって、逆に自分の作品関わってもらうという形でファッションショーを開き、ベルリン・ビエンナーレにも出ました。私はファッションも言語だと捉えています。言葉が色々なパーツを合わせたら文章として表現として成り立つように、ファッションも色々なパターンを組み合わせたらひとつの表現になります」
—9.11がテーマの展示にこの作品を選んだ理由は?
Nhu「私は直接的に9.11に関わっていないかもしれないけれど、ポスト9.11のアーティストとして、その時代を生きる一人として来ました。9.11の時はNYではなくスウェーデンにいたんですが、自分の周りにいる同世代の人やコラボレーション相手などで実際に経験した人も多く、人ごとじゃなく自分も深く関わっていると感じています」
ホーチミン生まれの彼女は、カンフーマスターであり仕立て屋の父を持つ。7歳でスウェーデンに移り、フィレンツェでファッションの勉強を始めた。Acne Studiosのアシスタントデザイナーを勤とめる傍ら、アーティストとコラボレーションをしながら創造する重要性を自身のブランドを通じて伝える。ヌーは単にコレクションをランウェイで発表するだけではなく、アートイベントや、映画の衣装、募金活動などに積極的に関わり、自身のライフスタイルとしてのクリエイションを発表している。世界の流れ身を委ねつつ創造するスタイルは、カンフーの教えに似ていなくもない。
http://nhuduong.com
INSTAGRAM: @nhu_duong_
LUAR
——今回のテーマをおしえてください。
LUAR「NYに生まれ育ったのは、多分この展示アーティストの中では僕が唯一なので、9.11以降のNYの現状をまとめて表現しました。例えばこの足場は、塗装の人が使う竹馬のようなものをイメージしていて、どこに行っても工事中の光景を目にする日常を切り取っています。こういう蛍光灯も常に光っていますしね。ドレスはNYの歪なビルの形をイメージしています。単なるゴミのような汚いものでも僕らにとっては美しいものでもある、そんな表現です。
もっと遡ると、80年代、90年代のNYは過酷な状態でした。僕が住んでいたウィリアムズバーグというブルックリンの方はすごく治安が悪くて、おしゃれな洋服を着て電車にも乗れなかった。差別も当たり前にありました。でも高校の時に通っていた学校がメキシカンもいればラテン系もアジア人もいるメルティングスポットで、いろんな影響を受けました。多様性があるコレクションはそのせいなのかも。いまのNYはいろんな刺激があってクリエイションが生まれやすい。僕は物書きではないけど、その代わりとして服やアートピースで表現しています。
——創作のインスピレーションはそうした生活に密着したことですか?
LUAR「街を歩いて思いついたことだけじゃなく、図書館に行って本を見て勉強したり、思いついたものと学んだものの両方を取り入れています。アーティスト名をLuarにしたのは、反対から読むと本名のRaulになるという、二面性の意味を込めている。それくらい二面性があるブランドなのです」
——クリエイティヴと商業のバランスをとるというあなたのフィロソフィーもまた二面性に繋がります。
LUAR「そう、そのバランスがまさに僕なんです。例えばこのパンツはアートなものだけど、デコラティブな部分を取り外しすると普通に着られる機能性もある。元々オシャレが好きで、ショートパンツなどを積極的に穿いてたんだけどパーティでは長いズボンを履かなくちゃいけないから、フードを足につけて長さが変えられるものを作ったり、どっちにも対応できるということをやっていました。僕が着たい実用的なものが二面性を兼ねているのです」
ブルックリン、ウィリアムズパーグで生まれ育ったラウル・ロベスは、 2年ぶりにNYファッションウィーク 2017SS で Luar を発表。以前 LUAR Zepol として活動していたラウルは、シジェンダーの限界に挑むデザイナーとして、また HOOD BY AIR の創立者として、全く新しいコンセプトをファッションに持込んだクリエイターとしてその地位を確立。現在は Luar としてメンズウェア、レディスウェア、 アクセサリーのコレクションを発表。彼の新たなシグネチャーデザインとなるハンドライティングのデザインと、商業性と創造性のバランスを重視した作品に焦点を当制作している。
http://luar.io
NSTAGRAM: @luar
Petra Ptackova
—今回の作品のテーマを教えてください。
Petra「自分の考えている脳内をキャンパスに描いて、洋服たちに変身するというのがコンセプトになっています。毎回新しいコレクションを考える時は絵を描いてからやっているんですが、今は私自身の分岐点として立ち止まる時で、いつもと同じような感覚ではいかなかったんです。なので、今回はすごくパーソナルな作品になっています。普段いろんなものを見たり学んだりして吸収するんですが、今回の作品は自分の内側を問いつめていってできた作品です。そしてあの無造作な部分のドローイングは自分の中の遊び場を表現しています」
—ポスト9.11というテーマはどのようにこの作品にコネクトしているんですか?
Petra「私自身が交通事故で経験した視覚障害と9.11との間に共通するのがトラウマなんですが、そうした出来事の後でも生きていかなきゃいけない。未来や過去ではなく、今あるものでなんとかやっていくという風に考えることができたらポジティヴになるんじゃないかなと思います。今を楽しんでいれば未来のことは関係なくなりますよね。この作品を作るのにもとんでもないプレッシャーがありました。今の時代、多種多様でいろんな選択肢があるかもしれないけど、今そこにあるものでなんとかするというのが私の信念です」
—それは素晴らしい信念であり、このペインティングもスランプなんて感じさせない強さと繊細さがあります。
Petra「ありがとう。ペインティングで無造作に描かれたラインをそのまま洋服に落とし込んで、ラフなシルエットにしました。巻けたり、いろんな形にできるので、作品で身を包んで心を安らかにできるんです」
昨年住んでいたパリで遭遇した交通事故による視覚障害をベースとした「I see, twice.」という画期的なコレクションを発表。コートが 3 パターンの顔を見せる作りや、ジャケットがショルダーバッグになるデザインなどで、自身の目の見え方 = 物の捉え方が大きく変わった事を表現している。彼女の作る一着は様々な変形が可能で、着ている人達にも新しい着こなし方を促す。ブランドのコンセプトは、幻想的で気まぐれなスポーツウェア。彼女はブラジルの格闘技カポエイラの熟練者であり、プロのスタントウーマンでもある。プラハ出身のペトラは、新しい生活を始めたNYで様々 なインスパイアを受けながら制作を続けている。
http://petraptackova.com
INSTAGRAM: @petraptackova
edit&interview Ryoko Kuwahara