2月にLUMINE0にて開催されたポスト9.11のデザイナーとして選出されたクリエイター9組による『NEW YORK, NEW WORK』展。伝説的デザイナーSusan Cianciolo、HOOD BY AIRの創立者LUAR、Rihannaらが着用するアクセサリーブランドCHRISHABANAをはじめ、BARRAGAN、ECKHAUS LATTA、HOMIC、Nhu Duong、HEIDILEE、Petra Ptackovaらの作品とともにインタビューを紹介する。
Susan Cianciolo
—今回の作品のテーマを聞かせてください。
Susan「コンセプトは人生、死、夢、睡眠です。ここで寝ているドールと同じように、女性のパフォーマーが寝るというインスタレーションになっていて、1997年にパリで公開したものの再構築になっています。寝ている間に起きることと起きている間に起こること、生と死だったり空想の世界と現実の世界を表現しているものになっています。
このパフォーマンスはパリ以降、ベルリン・ビエンナーレやアメリカ、ポーランドでも行っていますが、この作品以外にも私は何度も作品の再構築をしています。世界を旅させる中で、どんどん人形の数が変わったり、見せ方が変わっていくのです。
今回の展示の大きなテーマは9.11。私自身も実際に現地で体験し、死というものを強く感じた出来事です。一度死んで新たな自分に生まれ変わるという経験をしたのです。それを経て、改めて私の作品で重要なのは、死、生命、夢だと思いました。死後はわからないし、未来も予想できない。それは寝ている時に見る夢と似ている部分がありますね」
—ランウェイコレクションはいまは行っていないけれど、ホームコレクションを再始動されましたよね。
Susan「はい。娘と二人で共同でやっています。あとは1990年代にアシスタントだった人と同等のポジションで作っています」
—娘さんと一緒にというのは具体的にどうやって?
Susan「人形の手のグリッターは彼女のものです。クーポンも切ってくれ、フェルトやペイントも彼女が描きました。この人形自身も彼女が実際に使っていたベッドのシーツを使っています。『なんで私の大切なシーツを使っちゃうの!』と言われました(笑)。ポーランドの展示の時に、この人形を五体作らなきゃいけなくて、素材が間に合わなかったから、娘のベッド以外にも家中の生地を全部剥がして作ったら娘が悲しんで。大事なものがどんどん取られてしまうから大切なものは隠しているんです。娘は毎日私のために作るアートピース用のものと、それには渡したくないパーソナルなものとのふたつを作っていて、そこがすごくかわいいんです」
—娘さんはアートという意識で作るというよりもママとの大切なコミュニケーションとして作っているんですか?
Susan「アート作品としてと、私との思い出の両方の意味で捉えていると思います。すごくパーソナルなものだけどアートピースとして世に出てしまいますよね。彼女自身もパーソナルなものを作ることとパブリックなものを作るとことの区別やアーティストとはなにかということを、作る過程でどんどん学んでいっているんだと思います。そして、私にとってこれらは娘を思い出させてくれる大切なものです」
—あなたにとっては大切な家族が創作の原動力になっているんですね。
Susan「まさにそう。外にあったアトリエを家の中に戻して、家事もアートとして捉えるようになりました。家族は、唯一無二の大切なものです」
アメリカン・インディアンの ヒーリングと薬の文化からヒントを得て、モダンにファッションを再構築し続けている彼女はデザイナーでもあり、マルチメディア・アーティストでもある。2011 年に一旦活動休止宣言をしたが、それは ファッションから手を引き、アートに専念する決心だった。今になり少しずつファッション界に顔をのぞかせている彼女は、昔から音楽ともアートとも限りなく近いデザイナーであり、現在でも幅広いジャンルの若手アーティストから尊敬と憧れの眼差しを受けている。
https://www.bridgetdonahue.nyc
INSTAGRAM: @susancianciolo
BARRAGAN
—作品のテーマを教えてください。
BARRAGAN「ダイバーシティ、多種多用性がテーマになっていて、モデルたちが第二の人間のような格好をして、ぶら下げている筆で自由に床にドローイングしたり、インタラクトな動きをしたり、インプロビゼーション形式で行います」
—ポスト9.11というテーマはその表現にどう関わってきますか?
BARRAGAN「9.11と直接的な関係はないですが、多様性について考察しています。メキシコ出身で当時アメリカにいなかったのですが、アート作品を作るにあたっていろんな人と関わり、多文化とか何か、人種の違いや差別などを発信していきたいと思うようになりました」
—あなたの作品には工業デザイン出身というバックグラウンドだからこその独特の視点があります。
BARRAGAN「メキシコはファッションを学ぶ場所があまりないので、元々独学でファッションの勉強をしていました。工業デザインも学びましたが、そうした自分の歴史を見ても独特にならざるをえないし、それが良い方向に作用したと思います」
ビクター・バラガンはメキシコで生まれ、現在はNYを拠点に活動。メキシコで工業デザインを学んだ後、2010 年にファッションレーベル YtinifninfinitY を立ち上げる。ブランドは Tumblr を駆使して瞬く間にネットコミュニティーでカルト的人気を獲得。 当初このブランドはグラフィック T シャツに限られていたが、より幅を広げるために Barragan をスタート。 Barragan は、ファッションを通じてジェンダーやアイデンティティを表現する実験的なブランドとして、ファッション、メディア、ポップカルチャーなど私達の現代消費活動の在り方を問いかけている。ビクターは現在、彼が住むNYに Barragan を常設する場所を探している。Barragan は今日におけるドレス、消費活動、そして生活 についてその限界を模索している。
http://barragannnn.com
INSTAGRAM: @barragannnn
CHRISHABANA
—展示作品に関して聞かせてください。
CHRISHABANA「元々ゴス、パンク、トライバルという攻撃的な近未来的な傾向がありますが、今回の展示ではそれらをもっと爆発させたいという思いがありました。いつものコレクションラインをもっと発達させ、フルメタルとゴムで作られたハンドピース、フェイスマスク、ヘッドピース、貞操帯などを作りました」
—素材感やエッジを作ることで、とライバルな要素が近未来的に見えていくというのはとても面白いと思いました。
CHRISHABANA「そう、捉え方を変えるとトライバルは近未来になりますよね。もともとあるマイ・エネミーや、シルバーラインなどはまだトライバルさが強いと思います。しかし突き詰めていくと、お客さんにももっと挑戦してもらいたいとか、目にするものに対して考えてほしいという思いが強くなって、こういう作品にシフトチェンジしていきました。単なるジュエリーとしてじゃなく、何かしら見る人の心に訴えるものを与えたいというのは根本にあり、トランスフォーム(変身)できるジュエリーであるという信念をもって今回もこれらを発表しました」
イーストビレッジにアトリエを持つクリスハバナは、2008 年のデビューから、パンクやトライバルなデザイン要素を持ちながらも、現代的に鮮麗されたジュエリーを発表し続けている。フィリピンで過ごした幼少時代は、主に宗教とサイエンスフィクションに熱心で、ファンタジーに時間を取られていたという。HOOD BY AIR、OPENING CEREMONY, GYPSY SPORTS(2015 年 CFDA 受賞)など注目度が高いブランドとコラボレーションを発表。RIHANNA、Katy Perry や FKA TWIGS などのポップスター達の支持も強く、アルバムや雑誌のカバーに起用されている。
http://www.chrishabanajewelry.com
INSTAGRAM: @chrishabana