2024年秋冬コレクション『Machines of Loving Grace』は、YUEQI QI(ユェチ・チ)がワルキューレの騎行になぞって描いた物語。
デジタル社会に立ち向かうために渋々集まったヒロインたちが、スマートフォンの灯りに照らされながら本来の自然へと立ち返る旅。現実と拡張現実との区別がつきにくくなってきている現代における、その煩わしさを表現している。彼女たちは本物を求めているのだ。
確かな手法で、花は解剖され、固定され、人工素材で再構築されている。デッドストックのヘッドフォンは花の雄しべとして再利用され、リサイクルされたPTEはレーザーカットされた 衣服の花弁として使用されているだけでなく、編み込まれた衿ぐりやカフスは、花柱を支える萼(ガク)の役割を果たしている。また、花はバーンアウト加工やストーンウォッシュされたデニム素材で構築。
ウォッシュド加工されたデニムやジャージーには、絶滅した植物の化石のような花の印象がみられる。レーザーカットされたボンバースカートの花弁は象形文字のようで、本来の自然の記憶が複雑なパズルのように再構築されている。菌糸体を模したシャツとスカートは、菌類とその他の広大な生態系ネットワークからのオマージュ。
花のヘッドピースはデニム素材を裁断し、ウォッシュ・レーザー加工することで、頭蓋骨のように象られている。ボンバージャケットにはヘッドフォンの雄しべモチーフと星が組み込まれている。現代を生きるわたしたちは星の輝きを都市の光と交換してしまっており、それらを恋焦がれる想いからこのディテールが生まれた。バニラミントとブラウンプードル色のフェイクファーのムートンコートは花柄で、スタッズ加工が施され、さらにとても暖かい仕様になっている。
ユェチは顧客に使い古した衣服をアップサイクルプロジェクトのために送るよう呼びかけた。役目を終えた衣服を受け取り、ショーピースに作り変えたもの。ニットは解かれ、その糸はかぎ針編みのフラワードレスのために使用された。大半の衣服は漢字の「愛」のロゴにレーザーカットされ、花のショーピースにも取り入れられた。このプロセスは記録され、寄付した人々はショーに招待され、生まれ変わった自分の服を目撃することとなったのだ。
このショーは、アディダスとアップルのサポートを受けている。アディダスはショーのためにスニーカーを寄付し、それらは解体され装飾された。アップルはアップルウォッチを寄付し、デジタルアクティブなネックレスへと再構築している。
本コレクションは、現代技術と未来に反しているのではなく、人間の努力による自然と技術の調和的な共生のヴィジョンを祝すもの。私たちは『Machines of Loving Grace』の下で自然へと還るのだ。
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