ディオールは、9月26日（火）15時（現地時間）パリにて、2024年春夏 コレクションを発表した。ディオール ウィメンズ クリエイティブ ディレクターのマリア・グラツィア・キウリは、過去と未来が同時に存在する「現在」の意味を再考し、コレクションを制作。
「現在」というポイントは、様々に解釈でき、収束を意味する、これまで以上に、女性が自身の価値に気づき、違いを表現することを手助けする責任がファッションにあるという信念のもと、マリア・グラツィア・キウリはフェミニニティとフェミニズムの関係を探求し続けている。それゆえ彼女は、男性中心の社会において独立を主張し、その体制に異議を唱えてきた反逆者たちに関心を抱いた。その反逆者たちには、魔女や、植物学を伝承し、自然の時間を尊重する、地母神の知恵の継承者などが含まれる。
ファブリックには、イタリア人アーティスト、アルベルト・ブッリの作品に対する物質性、時間的記憶、深い造詣が込められ、涙、裂傷、燃焼といったパフォーマティブな要素が見られる。エレナ・ベラントーニによるモニュメンタルで、没入感のある芸術作品『NOT HER』は、女性たちを既存の枠組みに閉じ込める固定観念に対して、拒絶する精神を永続させる。
エレナ・ベラントーニが手がけた新規プロジェクト『NOT HER』は、ディオールの2024年春夏コレクションショーのために、一連のフォトコラージュをベースにしたビデオインスタレーション。
イタリア人の彼女が2015年以降集めてきたアーカイブをもとに制作されたこのユニークなアート作品は、300枚以上の性差別的 な広告で構成されている。この上なく「不快な気持ちを呼び起こす」イコノグラフィーは、「完ぺきな主婦」というステレオタイプから、上から下までカメラ「目線」の女性を映した1960年代の広告まで、カテゴリー別に分類。「お人形」としてほとんどお飾りとして見なされていた女性に、女性解放運動で明らかな反撃を見せたものの、実際にはなおもモノとして扱われた1970年代、性差別的な容姿や表現が激化した1980年代から、その後、古くからのお決まりの女性のイメージが一部の男性たちの人気の的となった2000年代まで。様々な女性の姿をたどる。この作品の中心テーマは、女性の身体とその商品化、そして擬物化だ。エレナ・ベラントーニは、女性の身体を擬物化するメカニズムやコントロールするための道具として用いることを拒絶し、身体の境 界線や関係を制御する権力装置にNOを突きつけることで、自らの立場をあきらかにしている。エレナ・ベラントーニのアート作品は、マリア・グラツィア・キウリによる2024年春夏コレクションショーの舞台演出における鍵となっている。
本コレクションはこのようにして、体と洋服の関係を、とある1日や、懐古的な時間ではなく、複数にまたがる時間の文脈に据える、というアイデアに立ち返らせた。
