ロンドンコレクションで発表されたJW ANDERSON 2023年春夏ウィメンズコレクション。そのコンセプトを改めて振り返る。
ゲームセンター。それは、人々が没頭してしまう擬似世界や代替世界など、様々な現実が並ぶ回廊。コンピューターの中に捕らえられた人々がキーボードやスクリーンセーバーと一体化し、新たな世界を探検するパラレルワールド。デジタル編集された自然は、それを作り出した人にとってもうひとつの原風景となる。ゲームセンターは、ゲーマーだけの世界ではない。
このゲームセンターでは、プロポーションは拡大され、テクノロジーはざらついた煌めきや輝きになる。ハンガー、キーボードなどのオブジェやスクリーンセーバーは洋服やバッグ、そしてアクセサリーの中に閉じ込められている。今季コレクションは、現代において「現実」が意味するものが何であれ、それを追求する「リアリズム」をメッセージとし、還元主義的言語をもって声高に主張している。
日が昇り沈むように、エッセンシャルなシェイプや、拡大されたディテール、そしてプレーンな中にひねりが垣間見えるデザインの数々が、繰り返し登場。シワ加工を全体にほどこしたTシャツには特大の洗濯表示タグをあしらい、キャミソールは拡大したブラのカップの片方がトップスとなるデザインに。その他にも、トップスのネックラインにパンツのウエストバンド、巨大なキーボードキーがデコレーションされたドレス、小さなキーをパヴェのようにあしらったトップスが登場する。さらに、真っ赤な魚が中を泳ぐビニール袋を想起させるドレスや、造形的シルエットのミラードレス、ガーデンチェアに良く使 用されるようなプリントが施されたドレスなど、抽象的なバルーンシェイプも多く登場。重要なもうひとつの要素である「レジャー」は、ハンモックをドレスに仕立てたシルエットや、ハンガーに吊るされたセーターやTシャツを模したデザインに落とし込まれている。ショルダーにカットアウトをほどこして肩が露わになるドレスや、煌めく素材を用いたテーラードスーツやドレス。フィンが突き出たTシャツは、サーフボードから着想を得ている。そして、極めつけとしてサンセットがプリントされたセカンドスキンのようなボディースーツや、ブーツ、スリッパシューズ、バッグが揃う。バッグではミニチュアサイズのモデルも登場。
サイズは、現実に重要な意味を持つ。