「今シーズンは、ローマから一歩離れて、少なくともローマという都市をグローバルなコンテクストの中に置いて見たいと思いました」と、クチュールおよびウィメンズウェアのアーティスティック ディレクターを務めるキム・ジョーンズ(Kim Jones)は語る。「今回のコレクションでは、さまざまな都市、つまり京都、パリ、ローマの断片に目を向けています。記憶のかけら、あるいは過去、現在、未来の印象といった、物事の断片的な性質がコレクション全体で繰り返し表現されています」
今シーズン、ジョーンズとイタリア ローマを代表するラグジュアリーブランド、FENDI(フェンディ)のアトリエの職人たちはパリンプセストとしてクチュールコレクションに取り組んだ。反復され、透けて見える過去の断片が現在を作り上げ未来へとさりげなく移り変わっていく。
クチュールの伝統は人間らしく、親しみやすく作り替えられ、明るく、輝きを放ち、着やすい軽やかさをまとっている。大がかりな作り込みは影をひそめ、よりソフトで、飾り気のないしなやかさと、着る人に主体性を与えるものに取って代わっている。
日本文化の中心である京都が出発点。ここで18世紀の着物の端布を見つけ、コレクションではそれらを再構築、再解釈して未来への基盤としている。数百年もの間、変わらずに受け継がれてきた丹念な型友禅を再び用いて作り上げている。京都で作られた伝統的な絹織物を薄く裁断し、アシンメトリーにリフォームして、床をなぞるほど長いドレスのシルエットに仕立てている。17世紀の「オード・トゥ・オータム」というファブリックデザインからインスピレーションを得たイロハモミジの葉のカスケードがさまざまな形で使われ、とりわけコレクションの最後を飾るチュールガウンでは、繊細な刺しゅうの壮麗さが最高潮に達している。
東洋と西洋、マスキュリンとフェミニン、自然と人の手が加えられたもの、伝統とモダン、それらが秋冬を通して対比。しなやかに体を包み込む型友禅ドレスには、パリの構築的な精神を反映した波状に輝くクリスタルケージをはじめ、京都から遠く離れた大陸との融合が果たされている。
フレンチ「ジャポニズム」の感覚と、緩やかな輪郭の中に佇むアールデコオーナメントに、ビクーニャ、レザー、ファーを用いたタイユールが、イタリアらしさを加えています。マスキュリンな仕立ては、ビクーニャファブリックのスーツ生地や、コニャックのカーフレザーの小物に見られ、内側に、そしてときには外側の構造にひときわ表れている。多くのアイテムの構造には、身に着けた人にしかわからない密かな楽しみも隠されている。伝統的な日本の生地がスーツやドレスのインナーに裏地やキルティングとして使われているのだ。短く刈られたミンク製のスーツにはインターシャが施され、フェンディ ファーアトリエの比類なき技量が発揮されている。ここでは”ロープマウンテン(Rope Mountain)”と名づけられた、同じく18世紀に遡る伝統的な日本の生地の断片が抽象的に再解釈されコレクションの基盤を成し、末永く残るものとして生まれ変わる。
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