次なる目となるデザイナーを見出すべく、ファッションシーンの誰もが注目するセントラル・セント・マーティンの卒業コレクション。コロナ禍での修了、卒業制作を迎える学生たちは何を考え、どう己のクリエイションと向き合ったのか。第4回目はSarabande FoundationやAlexander McQueen Scholarにも選定された気鋭Torishéju Dumiによるコレクションとインタビューを紹介する。(→ in English)
――セント・マーティンのファッション科で学ぼうと思った理由は?
Torishéju「自分自身について、そしてものをつくるということについてもっと学びたかったからです」
――ロックダウン中の卒業制作、ファイナルコレクションということで、制限や限界を感じたことは?
Torishéju「ええ、時々は感じました。でもものづくりには常に制限が必要だと思うんです。(皮肉なことですが)それはデザイナー/アーティストに自分のいつものやり方や力量を超えた新たな境地や力を与えてくれることになるから」
――パンデミックの最中に修士課程を修了しましたが、ファッション業界へ進むための準備はどのように進めましたか。制作過程は全体的に何か変化がありましたか。
Torishéju「人生で準備できることは限られていて、すべてが計画通りに進むわけではありません。しかし、突然の変化にどのように適応するかというのは、あなたという人がどんな人かを定義づけるものだと思います。だから変化があったとしたら私の制作の過程ではなく、私の思考プロセスだけですね」
――卒業コレクションについて教えてください。
Torishéju「このコレクションは“キメラ”と名付けました。アートや映画におけるボディホラーのイメージからインスパイアされており、究極的なコントロールの喪失を表しています。身体というものから解放された形態、新しく、不要でありながら、自分自身であるものをつくりだすこと、秩序から生まれる無秩序。Torishéjuは常に、伝統的な男性シルエットの様相を考えるから始まります。人間というものを形どったそれらは見るものに安心感を与えますが、その形を徹底的に歪曲することで安心を阻害するのです。Torishéjuの目標は、突き出し、ねじれたこれらの新しい形で、なじみのあるものの中心部で混乱を起こすこと」
――あなたの感情が卒業コレクションに影響を与えたと思いますか。
Torishéju「ええ、感情を抜きにしてアートがつくれますか?」
――あなたにとって肉体の形はどんな意味を持ちますか。
Torishéju「全てです」
――このコレクションで最も見せたかったものは。
Torishéju「コレクションを見せるのではなく、物語を語りたかった。結局のところ、私はその両方を見せ、語ることになったと思います」
――セントラル・セント・マーティンはイギリスのファッションシーンでどんな役割を果たしていると思いますか。
Torishéju「学校ではなく、学生が大きな役割を果たしているんじゃないでしょうか。まだ活躍は始まったばかりだけど、もっとおもしろいことになると思いますよ」
――サステイナビリティはファッション業界の大きなテーマ。2番目に汚染を生み出している業界として、この業界は何ができるでしょう?
Torishéju「私はファッション業界のことを代表して何か言う立場ではないのですが、ただ、この業界で働く人々はもっとコンシャスであるべきだし、透明性を尊び、思慮深くあるべきだとは感じます。でもそれだけで汚染は止まるものではないですよね」
――今興味のあるブランドやデザイナーはいますか。
Torisheju「パートナーがCibo Mattoにハマってて、私もずっと聴いてます。すっごく良いバンド」
ーー卒業後の予定は?
Torishéju「予定。ああ! 2020年が何か教えてくれたとしたらそれは物事は予定通りに行かないということ。でも来月(2021年4月時点)Sarabande Foundationと、私のファースト・エキシヴィションを行い、“キメラ”を皆さんに初お披露目します!」
photography Asia Werbel
music Grizzle
text Maya Lee
Torishéju Dumi
https://www.instagram.com/toshiju/
https://sarabandefoundation.org/blogs/whats-on/chimera-the-exhibition-torisheju