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text by Ryoko Kuwahara
photo by Peng Shina

「再生可能な素材の服を集めたセレクトショップをやりたい。アートを作ってる人みんなで集まって一緒に新しい文化を作りたい」I & Fashion Issue : Rou




パンデミックで引き起こされた様々な変化を受けて、ファッションも転換期を迎えている。かねてより懸念されていた環境問題に関してのエシカルな動きは加速し、工業的な変化はもちろん、Black Lives Matterなどのムーヴメントからも文化の盗用やフィッシングをはじめとする問題にもさらに目が向けられるようになり、作り手のアイデンティティが強く問われる時代。そんな時代に、オリジナルを生み出すにはどのような思考、プロセスが必要なのか。中国から文化服装学院に入学し、セレクトショップなどで目利きのバイヤーとして名を馳せたRou。現在は自身によるオンラインのセレクトショップの準備をしながら貿易業を営むRouに中国のシーンと、サステイナブルについてなどを聞いた。



――まず、自己紹介からお願いします。


Rou「Rouです。日本で4年くらい生活しています。去年1度上海に戻って、2ヶ月遊んでまた日本に戻って仕事をして、今は輸入貿易をやっています。ずっとファッションが好きで、7歳くらいから自分で服を選んで買っていました。もっと小さい頃は絵を描くことに熱中していたのですが、洋服好きな両親の姿を見ているうちにファッションに関心が高くなって。それでお金はないけれどいろんなお店を回って、家に帰ったらお父さんに今日見た中であれが良かった、これが良かったということを伝えて買ってもらっていたんです。お父さんは意思を尊重してくれたけど、お母さんはスカートを穿かずにメンズの服ばかり好むのでちょっと怒っていました(笑)。
上海にいる頃からサステイナブルなファッションに特に興味がありました。中国では古着を着ている人が少ないんですけど、2014年に上海のアメリカン ラグシーでパンスタ・チャイナさんという人が古着の服を出していて、そこで知り合って影響を受けて、ヴィンテージやエコに興味を持ったんです。上海の東大というところに文化服飾学院の先生が来て面接試験を受けるというシステムがあるのですが、2015年にその試験に受かって2016年の4月からファッション流通科のリテールプランニングコースに通っていました。ファッションの中でもビジネスや企画の方に興味があります。バイイングやマーケティング、人の関心がどこにあるのかが好きだし、自分で好きなブランドを見つけるのも得意。学生時代もエコの企画を出して先生に選ばれたりしていたんですが、当時はまだみんなサステイナブル・ファッションに興味が薄かったですね。学校ではチームで動くことも学べたのがいい経験になりました」


――そこから卒業してセレクトショップで勤務していたんですか。


Rou「実は就職はすごく苦労しました。アパレルを11社くらい受けたけど、面接が厳しくて、緊張して一言も出なかったり。毎日放課後に先生に面接の練習してもらいました。でも上海のYOHOODという展示会でGR8のバイヤーの方と知り合って、そのバイヤーさんが辞めた時に自分を紹介してくれたことからGR8の面接を受けて入ることになったんです。まだ学校を卒業していない2018年から、最初は販売員のバイトとして経験を積んだんですが、3か月働いてすぐにバイヤーになりました。学校の帰りに仕事をしに行って、3時間で50万販売したり、売り上げが良かったことも後押しになりました。 自分はいろんなカルチャーにも興味があるから、深いバックグラウンドを持つMaglianoのようなブランドをバイイングしていました。1年半くらい働いて上海に戻って、また別のセレクトショップに入ったんですけど、COVID19でお店自体には人が来なくなってオンラインが中心になったのでそこは辞めて、今は中国のファッション業界で昔から活躍している資本家と一緒に会社をやっています。それはもっとビジネスの方面だから、オンラインでファッションのセレクトショップを開こうと企画中です」


――Rou自身のファッションもとても素敵ですが、ファッションで自己表現をする時に哲学はありますか。


Rou「今日は持ってないけどいつもはサングラスのイメージが強いかな。1日で5個持ち歩いて、気分で変えたり。高校の時は帽子が好きで、1ヶ月毎日違う帽子を被っていました。アクセサリーはシルバーもの以外はあまりつけない。自分の肌色にも合うから」


――ヴィンテージも好きだそうですが、特にどの年代が好きとかありますか。


Rou「90年代生まれだから、90年代の日本のファッションは見ていたし、面白くて大好きでした。アジアのその時期の中でかなり独特だったと思います。今もその時期のファッションは好きだし、文化的背景もわかってるんだけど、自分のスタイリングはミックス。その年代のもちょっと入れて、今のものと組み合わせてます。やっぱり自分らしさを出したいからその年代のままというのはやらない」





――ファッションにはどんなパワーがあると思いますか。


Rou「自分の世界観を表現できる。そして、その時代ごとに、すごく進歩的なファッションリーダーみたいな人たちが作っているもので、みんなが考えなければならないこともガイドできますよね。人種問題のようなものだけでなく、新しく発展してきていることを大衆に発信し、それで動き出すこともできている。ファッションは単純に楽しいという側面もあるけど、長く残るブランドには背景もコンセプトも必要で、そのパワーは今の人にも未来にも影響を及ぼしていると思います。例えば私はジャン=ポール・ゴルチエが好きで、今も実際に影響を受けています」


――考えるべきことという点では、サステイナブルに関しても今はファッション業界の取り組みが非常に注目されています。


Rou「みんな口には出しているけど、実際にはどこまでやっているかわからないですよね。本気で考えるなら深い構造の部分も考えるべきだし、全面的にやるとなったら何年かかるかわからない。同時に働いてる人たちの給料面とか労働条件も考えるべきだと思います。自分がやる時は徹底的にやりたいですね」


――中国では2016年頃はまだ古着などが注目されていなかったそうですが、現在はどうですか。


Rou「今は古着を着る人は増えました。日本にもよく旅行にしているのでその時にたくさん買って着ているし、昔は中国にヴィンテージショップは全然なかったのが今は若い人たちが何店舗か上海にお店を出したりしています」


――中国のファッションはどんどん大きな力を持ってきていますが、そういう勢いは感じますか。


Rou「感じます。今年のファッションウィークに初デビューした友達がいますが、やはり注目されているし、これからもどんどん新しいものが生まれると思う。今の上海は、日本の90年代っぽい。パワーがあって、クレイジーで、まだまだ行きたい! って勢いがある。その期間がまだ続くと思うんです。上海ではたくさんイベントもあって、ドラァグのヴォーギングイベントなんかもすごく盛り上がってます。ドラマの“POSE”みたいなことになってて、それがファッションと繋がっててすごく面白いんです。自分の態度やライフスタイルがファッションで表現できるのはすごくいいことですよね」





――COVID19でフィジカルよりオンラインのランウェイが増えたり、プレゼンテーションの方法も変わってきていますが、そこはどう見ていますか。


Rou「オンラインの進化もすごくて、AIが既に色々な場面で活用されていますよね。あるセレクトショップでは、お店に入ったら IDが自動で認識されて、3 D 鏡でおすすめや着たらどうなるかというシミュレーションができるようになっていて、そこから直接注文もできるらしい。それが進んだら、将来は服を着なくても3Dで交流できてしまうんじゃないかって思ったり。実際に、ファッションは自分のスタイルを表現するものだけど、オンラインだと何を着てもいいから、格好良いものを着ようという気がなくなりそうとよく思います。
今はオンラインだけど、自分は会って顔を見てと言うのが好き。オンラインだと繋がってる感じがしないし、仕事も家でリモートになってるし、ちょっと寂しい(笑)。今ってただでさえ会うよりSNSで話してるような時代なのに、さらに寂しくなってしまう。やっぱり対面じゃないと気持ちが伝わるかわからないから、個人的にはできるだけ元に戻ってほしいかな」


――では自粛などでモチベーションも下がったり?


Rou「ちょっとダウンの時もあるんだけどすぐ気分を変えられるんです。自分にとって仕事は自分の人生の価値を実感できるし、最初から使命感を持ってると切り替えられる。それこそCOVID19でいろいろ変わってくるじゃないですか。だからファッションに関してだけじゃなくニュースもよく見るし、エコ関係に関してもものすごく調べるし、一人の時もたくさん考えて行動してる。自分は止まったら気をもんで駄目になっちゃうから、もっともっとやった方がいいと思ってます。今みんなコロナでダウンだから、今の期間ですごく努力したら結果が出ると思って、ポジティヴに頑張ってます」


――今後のヴィジョンは?


Rou「まずは貿易でビジネスしつつ、オンランのセレクトショップを準備しています。中国の面白いブランドを見つけて試しに売ったりしてみてるんですが、結構売れてるんですよ。将来的には、全てを再生可能な素材での服を集めたセレクトショップをやりたい。再生の素材はお金がかかるので、現実的に幅広くデザイナーが使えるにはもっと年数がかかっちゃうんですよね。あとやっぱりみんな洋服を買う時に素材よりデザインにこだわってるから、そのバランスも取らなきゃいけない。そのためにも、再生可能な素材がもっと幅広く使われるように開発が進んでほしいです。
あと、まだ夢の段階だけど、大きなビルを借りて、下はアンダーグラウンドのクラブで上はサロンやアパレル、ネイルとか全部若い人たちが集まっているような所を作りたい。元々東京は面白いところだから、そのカルチャーを失くさないようにみんなで集まりたいです。アートを作っている人がいたら、みんなもっと集まって一緒にやった方がいいんですよ。一人二人だと力が足りなくても、みんなで集まってどんどん面白いイベントとかを発信していったら大きくなるから。今の若い人たちで勉強したものや関心があるもの、理解してるものを、みんなで会って話して発信してほしい。そうやって新しい文化を作りたいです」




Rou
https://www.instagram.com/allen_evl/
https://www.instagram.com/potatohead__tattoo/

photography Shina Peng 
text & edit Ryoko Kuwahara 

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