COVID-19やBLACK LIVES MATTERなど社会がドラスティックに変化をしている中、情報の取捨選択や知識の獲得は生きるための大きな武器となる。私たちはどのようなツールを使って、どのように情報を取捨選択していくべきなのか。さらには、「知る」という行為やそこに込められた意味とはなにか。
6月12日、アーティストの清水文太とCrossfaithのベーシストであるHiroki Ikegawaがホストとなり、オンラインワークショップ「知るを知る」を文喫六本木にて開催。(https://www.neol.jp/culture/98332/)
「知るを知る」では、事前に参加者に募ったアンケートの答えをもとに参加者とホストが一緒になって「知る」について議論し、それをインスピレーションに各自が音をレコーディング。ワークショップ終了後、回収した音源を用いて清水が音楽を作成し、読書のためのスイッチミュージックとして参加者に提供されるというものだ。NeoLではこのトークの模様を記録、4回にわたる連載としてお送りする。清水文太とHiroki Ikegawaが、それぞれの考える「知る」について意見を交わした初回からすでに濃厚で本質的な議論がなされていることに刮目。
清水文太 「今日はよろしくお願いいたします。清水文太と申します。普段は、クリエイティブディレクターをしています。去年から音楽も作り始めたんですけど、元々雑誌やweb でコラムを連載していて、その流れで音楽と本をつなげて、本を読むための音楽を作りたいと思っていました。そのためには、まず“知る”ということが一番大切だと思ったんだけど、そもそもなぜ“知る”ことがそんなに大切なのかを探らないといけないということで、今回のワークショップを開くことにしました。
いまの時代、簡単に知ったふりはできてしまう。だけど、COVID-19やBLACK LIVES MATTERなど様々な問題が起きている中、僕たちは何を知らなければいけないのか? どんな方法で? 本当は自分は何が知りたいのか? ということについて、このワークショップで探っていきたいと思ってます。
Hirokiくんに今回来てもらった理由は、僕の言葉に対して『目を背けたくなるくらい真っ直ぐな言葉を書けている』と言ってくれたから。僕の考え方を理解してくれるなと感じて、彼とワークショップをやったら面白いことになるんじゃないかと思いました」
Hiroki「Crossfaithというバンドでベースを弾いたり、バンドのTシャツデザインをしたりしています。基本的に本や音楽や楽器、あとはお酒が大好きです(笑)。文太くんのコラムや彼の言葉を見ていると、目を背けたくなるし、鋭利な言葉だったり、深淵を除きに言っているような姿勢が常に出てて、自分も共感する部分がすごくあるなと思います」
Q. あなたにとって「知る」とはなんですか?
清水文太「僕にとって“知る”とは、目の前の人をお母さんと認識したり、生きていて一番最初に出会うことだと思うんです。“知る”という手段や情報そのものは、成長するにつれてどんどん増えていくと思うんですよ。でもそれによって、自分はどのツールを使えばいいのか、どの情報が正しいのか混乱する。だから、僕にとっては“知る”という行為自体を探るのがすごく大事だと思います」
Hiroki「俺にとって“知る”は、ある種、一個人にとって自分を見る実験なのかなと思います。今2020年に地球で生きていて、ネガティヴなものもポジティヴなものも含めて、自分がその出来事に対してどう反応するのか、共感するのか、おかしいと思って立ち上がるのか、自分を試せる実験なのかなと思うんです。あと、“知る”というのは、人々に広めて良いもの、逆に触れないほうがいいものを判断して他人に伝える教育というものの原体験、原風景なのかなとも思いますね」
清水文太「確かに、僕たちは生きている上でずっと実験をしているよね。食べ物だったら好き嫌いは食べないとわからない。人間関係でも、この人と合うか合わないかというのは、1年経ってわかること、5年経ってわかること、10年経ってもわからないこともある。僕たちがどんどん生を全うして、長く生きていくほどに変わっていくこともあるし、僕たちの人生はその実験をずっと続けていく作業の連続なのかもしれないよね」
Hiroki「大阪での黒人差別反対のデモにも参加してきたんだけど、やっぱり“知る”ことは一個人としての実験でもあるけど、2020年のこの瞬間に生きている自分の人生も含めて、前の世代からバトンを受け継いでいる行為だなというのは何度も思うね。未来の子供たちが、俺らの世代が何をしていたのかを後に知ることになるから、自分たちで何ができるのかを考えて生きている部分はあるかな」
清水文太「うん。10年、20年経ったら、僕たちが何をしていたのかの影響がかなり出ると思うんです。僕たちは歴史の中でいま転換期に差しかかっていて、ある意味レアで、重要な時代に生きていることになる。だからこそ、どうやって進化していくべきなのかを知らなければいけないなと思います。まず自分自身を充分に知らないと差別は無くならないし、自分自身を見つめないと相手の痛みや苦しみもわからない。“知る”をどんどん追求していくことで、変わることはあると思う」
Hiroki「“知る”ことと同時に“話す”ことも大事と今回のCOVID-19の件で実感した。一個人の負った傷というのは話さないと伝わらないから、それを共有するというのは、知る側も話す側にもプラスになると思う」
清水文太「確かに。規模の大小に関わらず、自分が思ったことを話せる場所とかコミュニティを探ることができる機会がもっと増えるといいなと思います。あと、Hirokiくんのような影響力の大きい立場の人が、黒人差別などの問題について発言するのは大きいことだなって思うね」
Hiroki「俺は特に黒人の友達がいるとかではなくて、ふと自分のおかんと話してて、おかんの中にも差別的な考え方があるなって感じた。日本でも江戸時代には士農工商という差別制度があったり、昔から差別は存在していた。黒人差別についても我々の話をしているという思いで向き合ってます。この2020年で一番大きい差別問題に対して、声を俺らが挙げられたら、他の面でも子供たちに教育できるんじゃないかと思って俺は動いていたつもりです」
第2回に続く
清水文太
1997年12月1日生まれ。
スタイリストとして、19歳から水曜日のカンパネラのツアー衣装や、著名人、テレビ・企業広告のスタイリング、Benettonをはじめとしたブランドのアートディレクションを手掛ける。コラムニストとして雑誌「装苑」の連載などに寄稿。2019年11月20日にアルバム『僕の半年間』を発売。RedbullMusicFesでのDJ・ライブ出演など、アーティスト・スタイリスト・クリエイティブディレクターとして多岐にわたる活躍を見せている。
Instagram:@bunta.r / @bunta.works
Twitter:@0caloriefood
公式HP:https://www.buntashimizu.com/
Hiroki Ikegawa
1990年5月21日生まれ。兵庫県宝塚市出身。これまでに40ヵ国以上200近くの都市に渡りCrossfaithのベーシストとして世界を駆け回る。またバンドにおいてのマーチャンダイズ、LOOKBOOKのディレクターでもあり、warp Magazineの20周年特集号への文筆での参加やカルチャー面での活動も精力的に行なっている。5月20日にCrossfaithから新譜「SPECIES EP」が発売された。
Instagram:@hirocrossfaith
Twitter:@hirocrossfaith
文喫
文化を喫する、入場料のある本屋。
人文科学や自然科学からデザイン・アートに至るまで約三万冊の書籍を販売。一人で本と向き合うための閲覧室や複数人で利用可能な研究室、小腹を満たすことができる喫茶室を併設する。エントランスでは雑誌と関連するテーマの書籍を販売。普段はあまり出会うことのできないラインアップも交え、来店されたお客様の新たな興味の入り口となる。また、企画展も定期的に開催。
入場料 1,500円(税別)※土日祝は1,800円(税別)
珈琲と煎茶はおかわり自由。
YOURS BOOK STORE
文喫のイベントや展示の企画を手がけるブックディレクションブランド。本を用いた空間プロデュースや企画コンサルも行う。今回のワークショップは有地和毅、深井航が企画運営を担当。
https://yoursbookstore.jp
『READING Intro』
清水文太、文喫
2020年6月12日(金)、清水文太と本と出会うための本屋「文喫」が、本を読む前に聴く音楽を考え、制作するオンラインワークショップ「知るを知る。」を開催。最後にはレコーディングを行い、参加者それぞれが表現した「知る」について音や言葉を録音した。その音源をベースに、制作したのが「READING Intro」だ。 本を読む前に聴くことで、「本と向き合うモード」へと切り替える手助けをする。よりディープな読書体験に没入するための音楽。本を読む前のルーティンとして、知ることと向き合うためのスイッチとして、「READING Intro」に耳を傾けてみてほしい。
AppleMusic、Spotifyなど各種音楽配信サービスにて2020年8月17日にリリース予定。
Spotify
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