根本宗子を演劇の道に導くきっかけとなったENBUゼミナール。演劇、映像俳優から映画監督まで、それぞれの第一線で活躍する講師陣を幅広く擁したこの専門学校からは毎年多くの逸材が輩出される。根本がENBUで学んだこと、さらには多くのファンを虜にする彼女の作・演出術についても話を訊いた。
ー根本さんがENBUに入ろうと思ったきっかけは?
根本「もともと中学生くらいから芝居が好きで、年に120本くらい観てました。特に大人計画やTHE SHAMPOO HATをよく観てたんですが、ちょうどわたしが高校を卒業した年のENBUの講師一覧にTHE SHAMPOO HATの赤堀雅秋さんの名前が載っていた。それで一気に背中を押された格好でした」
ーENBUではどういうことを教えてもらえるんですか?
根本「最初の2ヶ月は基礎を叩き込まれました。その上で徐々にいろんな作風を持った方の授業を受けていく。当時の俳優コースの講師陣は赤堀さんと、カムカムミニキーナの松村さんと、東京タンバリンの高井さんと、東京オレンジの横山さん。今考えてもかなり豪華ですよね。あと、最後に卒業公演を一本やるので、こういう風に公演を打つんだよという流れも学べます」
ー赤堀さんの指導や言葉で印象的だったものは?
根本「入学当初の私たちを地道に導いてくれた赤堀さんのこと、本当に凄いなって改めて思います。あと、卒業公演はすべて有料で行うのですが、一円でもお金を貰う以上そのレベルに達していなきゃっていうプロ意識を学びましたね。そういった気持ちは今でも焼き付いてます」
ーその後、根本さんは作・演出にも進出していくわけですよね。
根本「一度、在学中に芝居を打つ際にみんなでちょっとずつ短編を書いたのが初めての経験でした。それで卒業と同時に劇団旗揚げと言う感じになって」
ー今や根本さんの作品はその独特の世界観が人気ですが、演出面で心がけてることは?
根本「どんなにリアルを追究してもファミレスで聴こえてくる生の会話には勝てない、というのが私の持論なんです。だからリアリティを演技体で表現するよりはむしろ芝居の持つエンタテインメント性の中でリアリティを見せたい。それを形にする上では、役者への当て書きを多用したり、あと自ずとお芝居に細かい演出を盛り込むケースが多くなってしまいます」
ーそうやってリアリティが有機的に構築されていく、と。
根本「“実際に会ったイヤな女”についてが多いですね。アイツうざいな、って。嫌いって意味じゃなくて、むしろ『面白い!』って思っちゃうんです。頭の良い人はいろんなことを覆い隠して巧く生きていくじゃないですか。そうじゃなくて、私が大好きなのは真逆の人。あの全然“隠せてない”感じ、一体何なんだろうって(笑)」
ー根本作品はそういうシニカルな視点から生まれてくるんですね。
根本「これまでは女性を主演にした作品が多かったのですが、8月の公演では男性を主人公にしてみようかとも思っています」