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text by Momo Nonaka

BLACK LIVES MATTERについて知る:読書編 – 野中モモ



Black Lives Matterは白人の警官による黒人の市民への不当な暴力がきっかけとなって広がった運動とされる。そこで抗議の対象とされているのは、ひとつひとつの不正行為だけにはとどまらない。いま街で、あるいはネットで声をあげている人々は、これまで長きにわたってそうした不正を生み出してきた制度的・構造的な差別を改めよ、と訴えているのだ。
問題とされているのは、現代社会およびその基盤となる資本主義の成り立ちの深いところに組み込まれた人種差別。そうした社会構造への理解を深め、差別の問題においては自分が被害者にも加害者にもなり得ることをはっきりと認識するためには、やはり歴史に目をやり、変革を試みてきた人々の声に耳を傾けることが必要不可欠だろう。とんでもない逆境にあっても決して諦めずに希望をつないできた人々の経験と視点には、学ぶべきところがたくさんある。ここに紹介する5冊は、すべて日本の書店や図書館で気軽に手に取ることができるはずだ。






『アメリカの黒人演説集 キング・マルコムX・モリスン 他』
荒このみ編訳 
(岩波書店)
19世紀の奴隷解放運動において大きな影響をおよぼしたとされるデイヴィッド・ウォーカーの訴え(1829)から、21世紀に入ってバラク・オバマが大学の卒業生たちに向けて送った祝辞(2005)まで、21人の演説が収められた一冊。うち女性はソジャーナー・トゥルース、アイダ・B・ウェルズ=バーネットなど7人(現代に近づくにつれ増える)。圧倒的に不利な状況に置かれながら、それぞれに戦略を考え前進してきた人々の声の記録だ。
https://www.iwanami.co.jp/book/b248704.html







『MARCH 非暴力の闘い』1~3
ジョン・ルイス作 アンドリュー・アイディン作 ネイト・パウエル画 押野素子訳 
(岩波書店)
2009年1月20日、オバマ大統領の就任式が執り行われる日。連邦議会下院の議席を30年以上にわたって守り続けてきたジョン・ルイス議員は、平等を求めて公民権運動に身を投じた自らの青年時代を振り返る。アメリカ合衆国では1863年に奴隷解放宣言が交付されたものの、それから100年の時を経てもなお、あの手この手で有色人種の政治参加を阻む仕組みが残されていた。1950年代から60年代、そうした制度的な差別を撤廃するために人々がどんなふうに闘ってきたのかを学べるグラフィック・ノベル。
https://www.iwanami.co.jp/march/







『塩を食う女たち 聞書・北米の黒人女性』
藤本和子 
(岩波書店)
公民権運動が社会変革の大きな波を起こした60年代、そして「ブラック・パワー」がさかんに謳われた70年代を経た、80年代初頭のアメリカ。社会運動は一定の成果をあげて引き潮になったように見えるけれど、まだまだ平等にはほど遠い状況下で生きる黒人女性たちのもとを、リチャード・ブローティガンの翻訳などで知られる藤本和子が訪れ、話を聞いた。彼女たちの強さと優しさに触れて、現代の物質主義を超越する人間の力を信じたくなる。
https://www.iwanami.co.jp/book/b427320.html







『「他者」の起源 ノーベル賞作家のハーバード連続講演録』
トニ・モリスン 荒このみ訳・解説
(集英社)
昨年8月に惜しまれつつこの世を去ったトニ・モリスンが、2016年にハーバード大学でおこなった講演を収録。1987年に『ビラヴド』でピューリッツァー賞、1993年にはアフリカ系アメリカ人として初のノーベル文学賞を受賞。作家としての輝かしい経歴に加え、編集者としても大学教授としても経験豊かなモリスンが、名作とされる白人作家たちの文学作品を参照しつつ、人はなぜ「よそ者」を必要とするのかを考察し、物語の力を論じる。『世界と僕のあいだに』のターネハシ(タナハシ)・コーツによる序文も、アメリカの現状への理解を深める助けとなるだろう。
https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0985-b/







『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ』
アンジー・トーマス 作 服部理佳 訳 
(岩崎書店)
BLM運動の興隆を直接に反映した内容で高い評価を得た2017年のヤングアダルト小説。翌年にはアマンドラ・ステンバーグ主演で映画化された。主人公のスターは低所得者層の黒人が多く”ゲットー”と呼ばれる地域に住みながら、生徒の大多数を裕福な白人が占める私立高校に通っている黒人の少女。幼なじみの少年カリルが疑わしいというだけで白人警官に射殺され、その唯一の目撃者となってしまったスターは、さまざまな葛藤を乗り越えてカリルのために証言しようと決心する。細やかな生活描写を通じて今を生きる若者たちの姿が立体的に見えてくる作品だ。
https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b351474.html


野中モモ
ライター/翻訳者。著書に『野中モモの「ZINE」 小さなわたしのメディアを作る』(晶文社)、『デヴィッド・ボウイ 変幻するカルト・スター』(筑摩書房)がある。共編著『日本のZINEについて知ってることすべて 同人誌、ミニコミ、リトルプレス―自主制作出版史1960~2010年代』ばるぼら・野中モモ(誠文堂新光社)。
訳書に『世界を変えた50人の女性科学者たち』レイチェル・イグノトフスキー(創元社)、『飢える私』ロクサーヌ・ゲイ(亜紀書房)、『GIRL IN A BAND キム・ゴードン自伝』キム・ゴードン(DU BOOKS)など。
自主制作出版物オンラインショップLilmagの店主も務める。
twitter
instagram
http://www.tigerlilyland.com






BLM支援のための寄付
Black Lives Matter
Black Visions Collective
The Okra Project


被害者遺族への寄付

Official George Floyd Memorial Fund
Justice For Breonna Taylor
In Memory Of Tony McDade
I Run With Maud [Ahmaud Marquez Arbery]
Justice For Regis [Korchinski-Paquet]
Justice For David McAtee
R.I.P Belly Mujinga

署名
Justice For Breonna Taylor
• #JusticeForFloyd
Justice For Belly Mujinga
Defund The Minneapolis Police Department
National Action Against Police Brutality

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