#1: 幼なじみが撮ってくれた実家での自分
フィジカルには距離を置かねばならない現状に際し、アイデアや情報のシェアでポジティヴに自宅での時間に向き合うための「Self Isolation」特集。アーティスト/クリエイターによるいまの状況への向き合い方やオンラインで楽しめる情報などを随時アップデートしていく。
世界でも広く認知されるCrossfaithのベーシストとして、生活の大半をツアーや音楽活動に費やしていたHiroki Ikegawa。COVID-19が猛威をふるう直前のヨーロッパでその様を体感し、日本でも段階的に深刻化する状況を目の当たりにした彼は、緊急事態宣言が出る以前から、事態の考察や自宅での過ごし方についての自身の意見をSNSを通じて発信していた。個人としての価値観の変遷について、そして誰もが考え、行動する未来について、Hiroki Ikegawaの言葉を下記に綴る。
(→ in English)
ーー新型コロナウィルス感染症(COVID-19)で生活、クリエイティヴ、ビジネス、それぞれの面でどのような影響が出ていますか。
Hiroki「自分はバンドを生業としています。いろいろな形はありますが、主にライブと音源制作の2つがバンドのメイン活動となり、ライブに関していうと1月末から5週間に渡るヨーロッパツアーがあったのですが、イタリア公演(2/24)はキャンセル、またスイス公演(2/28)も開演1時間まで政府側の許可が下りないという事態に陥りました。帰国後には国内の事態も深刻化し8月まで夏の海外ツアーも含め全てキャンセルになりました。そんな中で打ち合わせは全てオンラインに移行し、家での時間が増えたことで初めて自分の部屋について考えるようになりました」
ーーこの側面で新たに気づいたこと、心がけたいことがあれば教えてください。
Hiroki「COVID-19以前の生活では資本をベースに企画を考えることが多く、たくさんの無意識の取捨選択があり、そのサイクルの中で死んでしまったアイデアがあったのでは?と今では感じます。これから新たなプラットフォーム、遊び場を創るにあたってその様な考え方、働き方は一度離れる必要があると思います。
また、当たり前だった人間活動にいかにノイズが多いのかということ。打ち合わせに行く、電車に乗る、外で食事を摂る。年の半分以上家に居ない生活をしていた自分はこれが当たり前で、家の環境に関してもただ寝る場所としてしか機能していませんでした。今は人と物に関しても自分にとって関係性の高いものから取り上げて静けさが必要な部分に関しては一つ一つ精査してもう一度自分の空間に置くと言う作業をしています。
この機会で断食を1週間ほどしてみたり、自分でご飯を作って食べたり、1日自分の声しか聞かない日があったり。少しずつ落ち着くと言う事を覚えていっています」
ーー緊急事態宣言に向けての精神的、物理的対応があればお聞かせください。
Hiroki「まず本を買いました。普段なら選択しない領域の学問や美術館のガラス展の図録などを買って興味が向いた時に学べる環境を作っておく。ヨガを日課にして身体を動かすことを習慣付ける。日記として感情を抜いたものを英語で、思ったことを日本語で残しておく」
#2: Zepp Tokyo, 10.27.2017
ーーご自身の活動を鑑みて、室内でどのような創作、作業が可能だと思いますか。
Hiroki「フィジカルの部分を除けば今こそ何でも出来るタイミングです。今までの活動をいかにCOVID-19の状況下に転換し、劣化版ではなく新たな経験を生むことです」
ーーオンラインの活用方法や1人でもできる施策など、良いアイデアがあればシェアをお願いできますでしょうか。
Hiroki「普段話さない人とFaceTimeする。新たな言語をオンラインチャットで学ぶ。新しい楽器を学ぶ。自分の部屋を機能性だけではなく、家具の配置から日当たりまで考えて心地よい空間にする。掃除をする」
ーー新たにチャレンジしてみたいことはありますか。
Hirki「僕は政治をあまり良く知りません。イギリスのリーズフェスティバルのバックステージのバーでは先ほどまでステージにいた人や、その人の絵描きの友達も詩人の友達もサッカーの試合の行方に一喜一憂を共にしながらも政治の話がポッと現れ、またお姉ちゃんのお尻の話になり、パイントが交わされる。そんな美しい光景を前に何故、僕の知っている日本の打ち上げと言う場所では誰もそんな話をフラットに並べて話すことが出来ないのだろうと思いました。また自分自身も時勢に反応できる程度の政治の基礎は自国、他国の人と話す際に必要なので改めて勉強したいです。
あと、この機会にもっと他文化の人と交流するための新たな言語の取得、補助言語のエスペラントも気になっています」
#3: Crossfaith Merch Lookbook ’18 Autumn
ーー事態が好転し、COVID-19が収束したらしたら何をしたいですか。
Hiroki「まだ知らない文化に身を置き、そこで友人を作りたいです。共に悲しみ、喜ぶこと。あと、大阪で昼間っから飲み歩きしたいです(笑)」
ーー政府の施策は満足できるものだと思いますか。もしNOであればどのようなことを提案したいですか。
Hiroki「個人事業主に対しての補助金の引き上げを求めます。まだまだこの状態が続く中で古着屋やライブハウス、レコードショップ、呑み屋等が居なくなった街というのは文化的にとても貧しいもので、フィジカルでの体験はもうなくなってしまうのかなと危惧しています。
また、施策に関して満足はしていませんが、もっとも自分にとって怖いことはこの状況下でも日本のバンドマンと括られる人達の多くが声を上げないということです。いわゆる音楽家、映像作家、デザイナーと言われる人達の領域では危険信号をフォロワーに示したり、新しいプラットフォームの議論がもう行われているのを目にすると遅れを感じずにはいられません。また、我々を含めたバンドマンのみをフォローされている人達のタイムラインに関しても同じ状況と想像します。
皆一人一人が国の政策を日々の生活に置き換えて想像をし、考え、議論に発展する、行動が生まれる明日を少しでも早く創っていきたいです」
Hiroki Ikegawa
Bassist, Merchandise Director for Crossfaith
Twitter : hirocrossfaith
IG : hirocrossfaith
#1: Photo by dr.koto
#2: Photo by cazrow Aoki
#3: Photo by yukubo