「一音でも間違えたら殺される――」。3月8日より公開中の映画『グランドピアノ~狙われた黒鍵~』は、コンサートホールを舞台に、天才ピアニストが演奏中に命を狙われるという、極限の緊張感に包まれた密室型サスペンス。
今回は、エウヘニオ・ミラ監督へのインタビュー後半を公開。「スーパーな逸材」と称するイライジャ・ウッドとの撮影裏話は必見。
―天才ピアニスト役にイライジャ・ウッドを起用した理由は?
「イライジャとは、2010年のオースティンでのファンタスティック映画祭で会っていたんだ。カラオケにも行ったし(笑)。そして2011年に再会した時に僕のことを覚えていてくれて。彼は地に足が着いた人なんだよ。しかも、再会する2か月前にたまたまグランドピアノの脚本を仕上げていて、その時に『この役はイライジャかな?』って思っていたんだよね。トムは天才少年、ワンダーボーイだから、彼の持っている優しい部分もこの役にピッタリだと思ったんだよね。映画祭後スペインに戻ってプロデューサーに話して、イライジャに脚本を送ったら『すぐにやりたい』って言ってくれたんだよ」
―劇中のイライジャの、終始不安そうな表情が印象的なのですが(笑)、現場でのイライジャはどんな様子でしたか?
「イライジャは本当に大きな存在。どんな要求にも応えてくれる才能あふれる俳優であるばかりか、フィルム・メーカーでもあるんだ。監督とキャストが共犯関係にある。そう思わせてくれる俳優だね。
撮影時にはイヤーピースを使ってアクションのタイミングやセリフ、助監督からの指示を出していたんだけど、イライジャがバッチリタイミングを合わせてくれたおかげでスムーズに進んだよ。うまくいかなかったところも彼から『もう一回やろう』と言ってくれたおかげで助かったんだ。
イヤーピースが入ったまま演技ができること自体が、彼の俳優としての凄さを物語っているよね。カメラワークとイライジャ間の対話というか、いくら技術的なことが決まっても、そこに演技がないと成立しないからね。そこにマッチするスーパーな逸材がイライジャだったんだ」
―イライジャのピアノ演奏については、いかがでしたか?
「幼少期にピアノを習っていたらしいんだけど、すべて忘れてしまっていたらしい(笑)。でもカラオケに行った時に、リズム感があるなと思っていて。僕はミュージシャンだから、イライジャの素質をすぐに見抜いたんだよ。だから、手元のクローズアップのシーンは別にしても、90%はイライジャが演じているんだ。撮影はシンプルな曲から、難しい曲を撮って、徐々に慣れてもらってね」
―監督が命を狙われながら、演奏しなくてはならないという同じ状況に陥ったら、どうしますか?
「銃口を突きつけられたらスピーチを始めるね。注目を集めて移動して、殺されないようにするよ(笑)」
―監督ならできそうです(笑)。最後に、日本の観客にメッセージを!
「(日本の)多様な国民性が、僕と似ているように感じるんだ。だからモノの見え方が変わる本作を楽しんでほしいね。自分にとっても特別な1本。主人公のトムのように天才的なスキルを持った人に偏見を持ってしまいがちだけど、本当はハートなんだよ。そういう誤解を本作で解きたいんだ。“心”が大切なんだよ」
グランドピアノ~狙われた黒鍵~
監督:エウヘニオ・ミラ
脚本:ダミアン・チャゼル
出演:イライジャ・ウッド、ジョン・キューザック、ケリー・ビシェ
(2013年/スペイン・アメリカ)
新宿シネマカリテほか全国公開中
©NOSTROMO PICTURES SL / NOSTROMO CANARIAS 1 AIE / TELEFÓNICA PRODUCCIONES SLU / ANTENA3 FILMS SLU 2013
http://grandpiano-movie.jp/