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text by Ryoko Kuwahara

Self Isolation Issue :「外に遊びに行けないのであれば、たまには“中”に遊びに行けばいいんじゃないかと思います。“中”というのは自分の心の中や、脳みその中、体の中、お家の中など」 Niky Roehreke/How to Survive – Niky Roehreke




フィジカルには距離を置かねばならない現状に際し、アイデアや情報のシェアでポジティヴに自宅での時間に向き合うための「Self Isolation」特集。アーティスト/クリエイターによる現状への向き合い方やオンラインで楽しめる情報などを随時アップデートしていく。日本とドイツのルーツを持ち、世界中を旅するノマド・アーティストのNiky Roehreke。自らの勘や感性を大切に日々を生き、生活や自然全てから受けたインスピレーションでもってアートを創作。AppleによるArt Labプロジェクトにも選出された彼女は、そのように1人ひとりが生活やアートにフォーカスすることで社会を変えることができると信じている。迅速に自主隔離を選択した彼女は、この状況下でどのように感じ、暮らし、制作しているのか。


ーー新型コロナウィルス感染症(COVID-19)で生活、クリエイティヴそれぞれの面でどのような影響が出ていますか。



Niky「私は普段から絵を描く仕事なので、お家にこもってずっと絵を描くことがわりと日常で、生活スタイルにはあまり影響がないです。ただ、例えば去年から制作に取り組んできていたAppleとの仕事があって、3月から全世界のアップルストアで絵のワークショップが行われるはずだったのですが、全世界アップルストアがワークショップが始まる日に閉まってしまいました。
現時点では仕事はまだ幸いな事にあるのですが、バジェットがカットされてしまったり、年間契約するはずだった仕事が急遽変更になってしまったり、今月末からしばらくヨーロッパで仕事するはずだったのもキャンセルになってしまいました」

ーーこの側面で新たに気づいたこと、心がけたいことがあれば教えてください。


Niky「ウィルスのおかげで気づきだらけの毎日です! 昔からいつも自分がすること、言うこと、想うことは必ずなにかしらと周りに、地球に影響をしていると信じてきたのですが、ウィルスのおかげで確信しましたね。ポジティブに言えば、勇気が出ました。やっぱりそうだったんだと。例えば、地球のゴミ問題が嫌なんですけど、だからと言ってプラスチックいっぱい使ってる店をやだなーとか政府なんとかしろよ!って文句いうのは少し古いがして、一番問題の解決につながるのは自分で自分自身を理想の人間にするということ。自分ができていないことを周りがやってくれるだろうと期待しない、求めないこと。
すべて責任を自分が持つということを、へんな言い方ですが、楽しむこと。このウィルスの状況も全く同じです。政府や上の人になにかやってもらうこと、指示されるのを待つのではなく、自分がこうあってほしい、こうかなーということを積極的に自分の直感を信じてどんどんやっていくこと」

ーーロックダウンに向けての精神的、物理的対応があればお聞かせください。


Niky「急にいままでは普通にしていたことができなくなる時期は大変な時期でもありますが、自分にとって何が大事で、何が好きなのかが明確になるチャンスの時だと感じます。普段都会生活は忙しいし、休みの日でも東京という場所は刺激的だし、楽しいことを求めて外に遊びに行く。でももう外に遊びに行けないのであれば、たまには“中”に遊びに行けばいいんじゃないかと思います。“中”というのは自分の心の中や、脳みその中、体の中、お家の中など。外が楽しいからってあまりいままで遊びに行けてなかった中の世界が今どうなってるのかを探検する」





ーーご自身の活動を鑑みて、室内でどのような創作が可能だと思いますか。


Niky「外にどうしても必要な時以外は行かないと決めてからは、家の中の物に対しての見方・発想がよくなった気がします。ないからと言ってすぐに外に求めに行くのではなくて、あるもので作れないかという意識で家にいつもある物ものを見てみるとアイディアが増えました。例えば古いもう読まない雑誌を捨てるのではなくて、重ねて分厚くして白いペイント塗るとキャンバスになれる。いままではクライアントワークで絵を描かないきゃいけないのを全部紙に描いていたのを今は部分的にiPadで描いて、必要な紙の量を減らしたり」

ーーオンラインの活用方法や1人でもできる施策など、良いアイデアがあればシェアをお願いできますでしょうか。

Niky「オンラインは情報がありすぎて、危ないですね。特に今はメディアがすごい力があるし間違った情報もいっぱいあるので必要以上に心配になったり怖くなってしまいます。なので、私のオンラインの活用方法は、できるだけ控えるということかな。
毎朝とりあえず日本、ドイツとアメリカのオンラインニュースに上がってるタイトル達はチェックするけど、そこから選んだ記事だけを読む。怖そうなのはあまり読まない。“怖い”という気持ちは一番自分の免疫にも、絵の制作にもよくない気がするから。手を洗うこと、うがいなどはもちろんしますが、それ以外は旬の食材で自分においしいごはんを作ること、笑うこと(これはオンライン活用してyoutubeで志村けんを見てる)、十分な睡眠(最近はお家のwifiルーターの電源を切って寝るとすごくよく寝れることを発見した)あとは大好きな友達とか家族と会えないから久しぶりに長電話するなど」


ーー新たにチャレンジしてみたいことはありますか。


Niy「大きなチャレンジですが、徐々に政府や国に頼らずに、自分が生きるために必要なものをすべて作り出せる人間になることです。なにかがない、できない、と思った時には国や決まり事に左右されずに、自分で解決できたり、仲間と一緒に作れたらいいなと思います。お家、電気、食べ物など勉強したら実は自分で全部作れちゃうんじゃないかと思ったり。そして病気になってから病院にお世話になる前に、元気でハッピーな体を自分でどうやって常に作っていくのか。自然に答えは全部あるはず。とりあえず今は野菜のタネをいっぱい撒いています」


ーー事態が好転し、COVID-19が収束したらしたら何をしたいですか。


Niky「旅がまたしたいです。大好きな人たちに会いにいきたい。特に年配の友達を訪ねて行って、美味しいごはんとか和菓子をみんな一緒に食べながら、お話をいっぱい聞きたい。自分にとって大切な人々と過ごす時間にいままで以上に感謝をして、思いっきり楽しみたい」

ーー政府の施策は満足できるものだと思いますか。もしNOであればどのようなことを提案したいですか。


Niky「小さいことかもしれませんが、政治家がウィルスに対して“打ち勝つ”という言葉を使うのがとても気になってしまいます。勝つとか負けるという考えはもうちがう気がします。自然の原則というものがあり、ウィルスも自然の一部であり、人間も自然の一部であり、すべての存在は意味があって存在しているはず。ウィルスの存在に怒りや憎しみをいだくような発言ではなく、ウィルスが存在することを受け入れて、今はこれ以上ウィルスが広まらないためには全国の一人一人がしばらくお家にいることによって、日本の伝統文化や芸術にとっては宝である日本の年配の人々、難病や病気、体が不自由で普段から生活が大変な方々の命を守ることに繋がると強調してほしいです。強い薬を発明してウィルスを殺していままで通りに“勝つ”という意識よりも、今はまだ薬ないし、一番目に見えないウィルスに効くのは目に見えない愛なんじゃないのかなと思います。
“愛”という言葉を政治家の口から聞いてみたいな(笑)」

Niky Röhreke ニキ ローレケ
nikyniky.com
instagram : @nikyroehreke

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