フィジカルには距離を置かねばならない現状に際し、アイデアや情報のシェアでポジティヴに自宅での時間に向き合うための「Self Isolation」特集。アーティスト/クリエイターによる現状への向き合い方やオンラインで楽しめる情報などを随時アップデートしていく。3月31日、「#SaveOurSpace」による記者会見が渋谷SUPER DOMMUNEから無観客配信された。「#SaveOurSpace」とは、新型コロナウイルス感染拡大による自粛要請に伴い、多くのライブハウスやクラブ、劇場などの施設が苦境に立たされている状況に対し、政府や国会議員に対する助成金交付に向けた嘆願書を作成し、署名を集め、政府に提出するプロジェクト。当初目標としていた10万筆を大きく上回り、30万筆を超える署名が集まった。会場には、発起人の篠田ミル、スガナミユウ、 Mars89、賛同人を代表してLicaxxxが登壇し、さらに発起人の一人であるDJ NOBUは会場にメッセージを寄せる形で会見に参加した。会見内では、これまでの経緯、クラブ、ライブハウス、アーティストの現状、政府への要求、賛同人の声の紹介などがされた。記者会見の内容を抜粋してお届けする。
ーーまず、発起人であり、yahyelのメンバー、DJ,コンポーザーとしても活躍する篠田ミルさんからお願いいたします。
篠田ミル「現在、ライブハウス、ナイトクラブ、 劇場などの文化施設は、新型コロナウイルスの影響により経営の危機に瀕しています。イベントの自粛要請や不要不急の外出の自粛要請を受けて、売り上げがゼロに等しい状況となり、文化施設は日々の賃料や高熱費、また従業員、出演者、音響や照明の方など関係者への給与の支払いにも困窮する状態に追い込まれています。もちろん文化施設の従業員や関係者が他業種と比べて集団感染の発生が高いことは事実であり、今感染の拡大を防ぐことは重要なことであることは事実です。しかし、現在の状況下では、いくら集団感染の発生を防ぐことが大切なことだと理解をしていても、日々の生活のために営業を続けなければならない状況にさらされています。私たちが求めているのは、安心してお店を閉めて自宅で待機するための政府の支援であり、助成金です。
一見すると、文化というものは、我々が生活する上で、不可欠でないように思えますが、実際には我々が人間であること自体を下支えする、人間が人間であるために必要不可欠なものです。コロナウイルス感染防止のため、みなさまがご自宅で待機されている期間中もスマートフォンやインターネット、テレビなど様々な媒体を通じて皆様にささやかな喜びや束の間の安息を提供できるのも文化の力だと信じております。そんな我々人間に欠かすことのできない文化を守り、育んで来たのは、大小様々なライブハウス、クラブ、劇場などの文化施設です。どうぞ我々人間を人間たらしめる文化、ひいてはそれを守り、育てて来た私たちの空間である文化施設に対するご理解とご支援をいただけますと幸いです。
また、この問題は我々だけではなく、飲食店、宿泊施設、その他娯楽施設から商業施設まであらゆるスペースに携わるお仕事に関係する問題だと考えています。ひいては、この動きをきっかけにライブハウス、クラブ劇場などの文化施設だけではなく、あらゆる施設に支援が行き渡ることを望み、業種や領域を超えて連帯し何らかのもっと大きな動きにできたらと考えております。また、今後は与野党様々な国会議員の方に署名を直接お届けし、実行的な政策に落とし込んでいただくための活動を展開していく予定です。我々の方でもドイツなどの海外からの事例を勉強して、日本の法律や政府、制度などに照らし合わせたときにどこまで実現可能なのかということを国会議員の方や、行政の方に相談して実行的な政策に落とし込めればどうすればいいかを考えていきたい。また、活動を通じて得たコネクションや発信力を用いて、コロナウイルス感染防止のための啓蒙活動や皆様のご自宅での待機期間中にささやかな楽しみや安息を提供できるような活動を展開していきたいです」
ーーライブハウスLIVE HAUSの経営者であるスガナミユウさんから、ライブハウスの現状について伺いたいと思います。
スガナミユウ「様々な事業者の方、それにまつわる関係者の方、フリーランスの方が非常に危機的な状況にさらされており、すでにお店を閉じざるを得ないライブハウスも出て来ております。私どもの業種でいうと、2月の末に大阪でライブハウス内での集団感染の報道があり、そこから、さらに名指しで報道されるたびにどんどん追い込まれているのが現状です。今は感染拡大を防ぐのが第一だとは考えておりますが、その先に、新型コロナウイルスが収束したのちに、また人が集まって音楽をならせる場所が必要になってくると感じています。この活動の主体は、私たち発起人ではなく芸術、文化そのものです。それぞれ一人一人が主体となって、みんなで更に声をあげて行きたいと考えております。また、他の業種の方々も同じように声をあげていますが、それぞれに必要な措置というのは、異なると考えていて、そこに応じた助成を行って欲しいと考えています。どうかそれぞれの声を国の方々、行政の方に聞いていただきたいです。そして、私たちが収めている税金を有効に使っていただけるようにお願いいたします」
――プロジェクトに賛同していただいた方を代表して、DJのLicaxxxさんにアーティストの立場から現状などについてお聞かせください。
Licaxxx「私自身は普段はライブハウスやクラブなどの文化施設でのイベントを中心に活動していますが、ジャンルや規模の大小にかかわらず、全アーティストが中止を余儀なくされている状況です。そんな中で、現場で活動することを軸にしている人たちはこの先困窮する可能性は大いにあるし、目に見えた問題ですが、さらに恐れているのは出演して来たライブハウスやクラブなどの経営が立ち行かなくなっていることですね。コロナが収束した後でも、イベントなどをやる場所がなくなってしまう恐れがあるからです。また、このような状況下では、自分で考えて、胸を張って自分の意見を周りに発信していくことが大事であると今回の件を通して強く感じました」
ーー発起人でもあり、DJとして活動されているMars89さんはいかがですか?
Mars89「海外のミュージシャンやプロモーターの話を聞くと、海外では既に助成が始まっていて家で過ごすことができ、これから先のことを考えられるような環境になっていたりします。日本だと、文化や芸術、エンタテインメントは人命にかかわらないから後回しだろうという声をよく聞きますが、家でこもっている間に自分を助けてくれるのが、映画や音楽や芸術ではないかと感じます。そういう文化や芸術がどこから生まれたのかを今再び考えてみると、現場の大切さというものが身に染みます」
ーー発起人の一人であるDJ NOBUは、千葉に住んでいて、なるべく移動をしないほうがいいということで、今日はメッセージを代読をさせていただきます。(以下中略)
DJ NOBU「日本でも、感染爆発の瀬戸際にいることが明らかになり、医療崩壊の可能性が高まっていることを考えるとなるべく外出を控えることが望ましい。そのことは、私自身ではなく、ライブハウスやクラブの関係者も皆十分理解しています。ただ、休業すれば確実に破産するという状況であれば、人は働かざるをえない。だから、休業を要請するのであれば、保証を約束するべきなのです。私は人生の長い時間をクラブやライブハウスで過ごして来ました。これらの場所が私にとって人生の学びやでした。この場所が存在したからこそ今の自分があります。この極めて厳しい状況に置かれ、苦渋の判断を迫られているたくさんの友人の顔が思い浮かびます。絶望的な気持ちにもなりました。でも、まず自分が行動を起こさなければならないと思いたち、議員会館に足を運びました。そして、それがSave Our Spaceという仲間を持つことに繋がり、これふだけ多くの人たちの賛同を得ることができました。ジャンルや職業を超えたコミュニティの力、更に、そのネットワークが強くなれば、きっと変化を起こせると信じています」
ーー最後にスガナミユウさんから一言お願いいたします。
スガナミユウ「どの施設に関しても、人が集まることで、商売が成り立ち、そしてたくさんの芸術が生まれます。これから先、その場所に人が戻ってくるようにし、この価値をもう一度取り戻したいです。そうでないと文化が本当になくなってしまうと思います。でも、何もせずに助成だけ受けたいと思っているわけではなく、その後のことも考えて私たちも努力をし、変わっていきたいと思っております。助成のご検討をお願いいたします」
嘆願書の詳細と署名はこちらから
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdoS3wgiYphbbmU-c-qnf65nj4oHhknV6LVY3BPpVYoMa6-XA/viewform
Twitter:https://twitter.com/Save_Our_Space_
#Save Our Space