1936年8月、ナチス政権下のベルリンで第11回オリンピックが開催された。開会宣言をしたのはアドルフ・ヒトラー。会期中の人種差別政策の凍結などナチス・ドイツが国の威信をかけて演出した大会だった。大会の様子はレニ・リーフェンシュタールが監督した記録映画の傑作「オリンピア(二部作)」に克明に収められている。
『オリンピア ナチスの森で』は、筆者であるノンフィクション作家の沢木耕太郎が行なったレニ監督へのインタビューをメインに、第11回オリンピックに出場した、日本選手団や他国のアスリートの証言からその内幕に迫るノンフィクション作品だ。
当時、ロンドン軍縮条約からの脱退や2・26事件など不穏当な雰囲気が漂っていた日本。ナチスドイツと同じく数年後の破滅を前に、日本の選手たちはこのオリンピックをどう見ていたのか。日本統治下の朝鮮から「日本代表」として参加した孫基禎選手(マラソン)が金メダルを取るまでのエピソードなど徹底した取材を基に、筆者ならではの精緻な文章で当時を描く。
『オリンピア ナチスの森で』
作者:沢木耕太郎
出版社:集英社(集英社文庫)
594円
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