— では、特に注目している俳優・女優は?
夏目「『ゼロ・グラビティ』(公開中)のサンドラ・ブロックさん(主演女優賞ノミネート)ですね。宇宙という特殊な空間の中で、90分間ほぼひとり芝居で演技を見せてくれるのですが……とにかく圧倒されましたね。過去に子供を亡くした彼女が、その深い悲しみから立ち上がって行く姿が見事で。同じ女性として、背中を押されたような気がしました。もうひとりは、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2月28日公開)で助演女優賞にノミネートされている、ジューン・スキッブさんです。もし受賞すれば史上最高齢。本当にチャーミングなアメリカの田舎の肝っ玉母ちゃんを演じていらっしゃるんですが、年を重ねるって素敵なことだなと感じましたね」
—日本ではこれから公開の作品も多いですが、アカデミー賞といえば、受賞作の予想も楽しいもの。案内役に決まり、ノミネート作を試写で観まくっている夏目さん的に「この作品に受賞してほしい!」、お気に入りのノミネート作品は?
夏目「町山(智浩)さんや(ジョン・)カビラさんは、『アメリカン・ハッスル』(公開中)、『ゼロ・グラビティ』、『それでも夜は明ける』(3月7日公開)の三つ巴ではないかとおっしゃっているのですが、個人的には『あなたを抱きしめる日まで』(3月15日公開)と『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』が何かの賞に絡んでくれたら嬉しいですね。『あなたを抱きしめる日まで』は、カトリック教会による人身売買のお話で、お母さんが自分の子供を手放さざるを得ないという重く目を伏せておきたい歴史が綴られています。でも、ただ暗いお話じゃないんです。ジュディ・デンチさん演じるお母さんは明るく前向きでとても強い女性で……。親子という永遠のテーマ、親子の絆について、今一度考えさせてくれる作品です。『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』は、モノクロで撮られた家族4人のロードムービー。特に何か事件が起きるわけでもないんですが、描かれる登場人物がみんな愛おしくて。うちの親戚にもこういう人いるよなぁって(笑)、共感が持てる微笑ましい作品です。こちらも家族の繋がりについて考えさせてくれます」
(後編へつづく)