年齢は単なる数字であって、オトナになるという境界線は人ぞれぞれ。定義できないからこそ、誰もが答えを探している。多感で将来のことを考え始める14歳の頃、みんなは何を考えて過ごしたのか?そんなファイルを作りたいと始まった「14歳」特集。東京、NYに続くベルリン編には、年齢やバックグラウンド、仕事の異なる個性豊かな15名をピックアップ。
高校生3名に続く4本目は、オンラインカルチャーマガジン「Gusto – Ablass für Massenkultur(以下、GUSTO)」より若きジャーナリスト兼インタビュアーのマーティン。幼い頃からギターロックとジャーナリズムに夢中な彼は今、ドレスデンとベルリンを拠点に新しいメディアのかたちを提案している。(→ in English)
ーーこんにちはマーティン!まずはじめに自己紹介してください。
マーティン「オンラインマガジン『GUSTO』のマーティン。主にポップカルチャー、オルタナティヴ・ギターロック・ミュージック、シアター、文学関連のジャーナリスト兼インタビュアーをしているよ」
ーー14歳のときはどんな子でしたか?
マーティン「当時は少し憤りを感じてた。というのも僕が住んでいた東ドイツの小さな村は政治の問題があって、ナチスのような極右がいたんだ。それに学校ではみんなが僕のこと理解できないと感じてたし、ほとんどの人が僕を好きじゃなかったと思う。僕もみんなのことが好きじゃなかったんだけど。そんな僕にも親友が2人いて、1人は今一緒に『GUSTO』を運営してるアダム(Adam Gräbedünkel)なんだ。彼は小学校から知ってるよ」
ーー14歳のときにどんな24時間を送っていたか、円グラフに書いてみてください。
ーーでは、14歳のときにどんなことを考えていましたか?
ーー当時の思い出でよく覚えていることがあれば教えてください。
マーティン「初めてお酒を飲んだこと。まだ若かったしひどくお酒に弱かったから、ビール2本で見事に酔っ払ったよ。あの頃はまだ思春期からほど遠かったと思う。それに体重もまだ40キロしかなかったんだよね(笑)!お母さんがとても厳しくてお酒が嫌いな人だから、こっそり親友たちと週末飲んでて。とにかくこのときみたいに酔っ払うことはもうないかな、あれはひどくて最高だった。この感覚にハマったんだよね」
ーー14歳のときに抱いていた夢は何ですか?
マーティン「実は政治家、首相になりたかった。村のナチス問題の影響で政治に興味があったんだ。よくドイツの新聞『ZEIT』の政治・文化記事を読んでたよ。だから政治ジャーナリストにもなりたいと思ってた。14歳から18歳にかけて、徐々に政治からカルチャーに興味が移ったんだけど、当時はかなり政治にのめり込んでたね」
ーーそうなんですね。どのように『GUSTO』を始めたのですか?
マーティン「2018年1月、ちょうどアダムが大学のプロジェクトを一緒にやろうと僕に持ちかけたんだ。大学の外にも広げたいってことでね。それからフォトグラファーのノエル(Noel Lichter)も加わって、正式にスタートしたよ」
ーー『GUSTO』はテキストよりもビデオに力を入れている印象です。なぜあえてビデオインタビューなのですか?
マーティン「僕はカメラが好きし、カメラの前にいたりビデオで自分の姿を見たりしたいんだ(笑)!とにかくテキストよりインタビュー対象者を見たいからビデオインタビューの方が好き。僕らは何か新しいことをやる必要があるし、他のメディアとは違うことをしなきゃいけない。テキストだけのメディアはたくさんあるからね」
ーー年齢や知名度を問わず、さまざまなアーティストが特集されている『GUSTO』ですが、ネットワークはどうやって作ったのですか?
マーティン「運よく発足当初からたくさんの人に好かれてるんだ。例えば『GUSTO』発足前から知ってる唯一のバンド、アイソレーション・ベルリン(Isolation Berlin)。それからダゴベルト(Dagobert)、ドラングザル(Drangsal)とか。彼らは連絡先を教えてくれて、後にインタビューしたんだ。そんなこともあって僕らのネットワークはとても早く広がったと思うよ。新しいコンテンツを持っているから、たくさんのアーティストたちが僕らのこれからを信じてくれる」
ーーそもそも『GUSTO』とはどういう意味ですか?
マーティン「イタリア語で”テイスト”。大きな意味はないんだけど、響きが好き」
ーー『GUSTO』を始めてよかったこと、大変だったことはありますか?
マーティン「新しい人たちや友達からたくさんのことを学べるのはいいことだね。それに自分たちで始めたから、自分の本当にしたいことができる。一方でとてもストレスフルだよ。自宅のあるドレスデンとベルリンを移動しなければいけないしね。難しいと感じることもあるけど、自分の仕事が好き」
ーーこれまで会社やマガジンで働いたことはありますか?
マーティン「うん。『DRESDNER Kulturmagazin』で半年くらいインターンシップをしたよ。ミュージシャンやアーティストたちにインタビューしたんだ。あの頃も本当によかったなぁ。一日中タバコを吸ってたり、自分の好きなときに出退勤したりするオールドスクールなジャーナリストたちがいたんだ。地元の素敵なジャーナリスト、ハインツとヤナによろしく!その後に『GUSTO』を始めたんだ。インターンシップの前は大学で哲学と社会学を2年間勉強したけど、途中で辞めたよ」
ーー今は次のステップに進んでいるのですね。14歳のときに影響を受けた、大好きだったものはありますか?
マーティン「ザ・リバティーンズが好きだった。好きなアルバムは1stの『Up the Bracket(2002)』なんだけど、好きな曲は2ndアルバム収録の”Music When The Lights Go Out(2004)”。CDでよく聴いてた。アダムがお父さんの影響で音楽に詳しくて、彼によく音楽のことを教えてもらったよ。あとドイツのテレビ局『ARTE』を見るのが好きだった。アートやカルチャーに関する素晴らしい番組を放送してるんだ。インディペンデントのアートハウス系やオードリー・ヘップバーンが出演してるようなクラシック映画とか。もちろん音楽もね。さっき話したように僕は東ドイツの小さな村出身だから、テレビを見て外の世界の情報をインプットすることが大事だったんだ」
ーーいま14歳を生きている人たちに伝えたいメッセージはありますか?
マーティン「”Alles wird gut(すべて上手くいく)”。アイソレーション・ベルリンの”Lisa(2014)”に出てくる歌詞なんだ。14歳の頃には聴けなかったんだけど、これが僕から今を生きるユースたちへのメッセージ」
ーー自分でメディアを始めたいと思っているユースに何かアドバイスはありますか?
マーティン「他のマガジンとは違う何かが必要。特別なものも必要だし、自分自身が特別でないといけない。人に礼儀正しく、でも礼儀正しくなりすぎないように。大事なことだよ」
ーー最後に何かお知らせがあればどうぞ。
マーティン「『GUSTO SALON』っていうトークショーを計画してるんだ。クラシカルで20年代の美学を詰め込んだようなものになるよ。あと来年は夏フェスか冬フェスをする予定。ウェブサイトとインスタグラムをぜひチェックしてみて!」
photography Tereza Mundilová
text Yukiko Yamane
Gusto – Ablass für Massenkultur
www.gustoonline.de
@gustoablassfuermassenkultur:https://www.instagram.com/gustoablassfuermassenkultur/