オトナになるという境界線は、公的には”20歳(もうすぐ18歳に引き下げ)“となっているけれど、もちろんその年齢になったからといって突然に精神が成熟するというわけではない。なんなら、20歳を超えてもまだオトナになりきれていな人はたくさんいるようだ。じゃあ一体”オトナ”ってなんなのか。確固とした定義は難しいけれど、自分だけの換えのきかない毎日をしっかりと歩むことの延長線上に、自分なりの答えが見つかるかもしれない。
進路が少しずつ重きを増してきて、身体も気持ちも毎日少しずつ変化する14歳の頃、いま楽しく仕事したり生活している先輩たちはどんなことを考えて、どんなことをしていたんだろう。そんなファイルを作りたいと始まった「14歳」特集に、映像作家のUMMMI.(UMI ISHIHARA)が登場。様々な側面を内包する人間という存在を愛しく描くその感性は、どのように育まれたのか。
――14歳の時の自分を振り返って、客観的にみてどんな人物でしたか?
UMMMI.「隣の席のギャルと一緒になってパラパラとか踊ってるくせに、えろい話ばかりしてるくせに、めちゃくちゃ暗くて、めちゃくちゃ混乱していて、いつも悲しい」
――14歳の時にどんな24時間を送っていたか円グラフに描いてみていただけますか。
――14歳の時に考えていたことは?
――当時の思い出で、自分でもなぜかわからないけれど覚えているような些細な日常の出来事があれば教えてください。
UMMMI.「記憶がほぼない」
――14歳の時になりたかった職業は?
UMMMI.「哲学者、小説家」
――今のご職業についた経緯をきかせてください。
UMMMI.「14歳の頃は本ばかり読んでいて、小説家または哲学者になりたいと思っていました。そして歳を重ねるたびに、絵画が好きになり、音楽が好きになり、服が好きになり、映画が好きになり、自然と総合芸術である映像の分野を目指そうと思った」
――映像作家になるためにおこなった努力はありますか。
UMMMI.「映画を見まくった。あとは日常のなかに潜む、奇跡のような瞬間に敏感になろうと心がけた」
UMMMI.'s Lonely Girl – short ver from UMMMI. on Vimeo.
――今の職業についてよかったことと、ちょっと辛いところはどんなものがありますか?
UMMMI.「よいところは、撮影日以外は朝起きられなくても大丈夫なところ。締め切り前以外はわりと好きなように時間を使えるところ。ときどき大きな収入がぽんっと手に入るところ。ふらふらと真昼の街を歩いたり、コーヒーを飲んでぼんやりとすることも仕事につながると心の中でこっそり思えるところ。あとは普通に、映像を撮ることが純粋にめちゃくちゃ楽しい。辛いところは、収入が安定しないところ。そして、誰かを撮らせてもらう、ということはその人の人生を背負うことだから、すごく繊細にならなければいけない。あまりの責任感の重さに押しつぶされそうな気持ちになる。もっともっと、どこまでも優しく、もっともっと気配りのできる人になりたい」
――14歳の時に影響を受けていたり、大好きだったものや作品、人は?
UMMMI.「正直、初めて恋人ができた15歳より前の記憶がほとんどない。ほぼ毎日死ぬことばかり考えていた気がする。12歳から両親と住んでなかったり、とにかく家に金がなかったりして、アタシが死んだらみんな楽になるだろうな、とかそうゆうことばかり考えていた。まだこの頃は(本当の意味で)映画と音楽に出会ってなかったことも大きいと思う。文学には出会えて、たぶんそれだけが救いだった。14歳の頃に図書館で『自殺について』と書かれた本を見つけて、なんだろうと思い、著者もよくわからぬままその本を読んで夢中になった、その著者がショーペンハウアー。『意思と表象としての世界』とか『知性について』とか、ショーペンハウアーが書いたものは全部読んで(とにかく時間だけがあったから)その流れでカントを読み、ゲーテを読み、ヘーゲルを読み、って感じで、すべてはショーペンハウアーから始まっている気がする。あとは小学生の頃から14歳の頃、そして今も変わらずにずっと好きなのは中上健次と村上龍。金井美恵子に夢中になったのもこの頃。文学という闇に飲まれつつも、隣の席だった華ちゃんとユキ(アタシのこと覚えてるかな)の二人と一緒にマルキュー行ったり、パラパラ踊ったりして、その二人の影響も実はめっちゃ大きいと思う。バカみたいに遊んだり、あんまり人生を重たく考えなくてもいいことに気づいたり、社会性みたいなのは彼女たちが教えてくれた気がする」
post benning generation from UMMMI. on Vimeo.
――いま14歳を生きている人たちに知ってもらいたい、もしくは知っていると楽になったり、役立ったり、楽しかったり、寄り添ってくれたり、道しるべになるかもしれない作品や物があれば教えてください。
UMMMI.「映画を撮りたいとか、こうゆうことがしたい、みたいなことが14歳の頃はまったくわからなくて、本当にただひたすら時間を持て余していた気がする。学校の外にも世界があるのはわかってるんだけど、どうやって外とつながりを持てばいいのかもよくわかんなかったりして。いま考えてみると14歳くらいまでの年が一番しんどかった気がする。(少なくともアタシはね) でもちょっとづつ歳を重ねて、ちょっとづつ自分の好きなものがわかってきて、ちょっとづつ学校の外にもっともっと解りあえる自分と同じように孤独な友達ができたりして、本当に大人になるの、めっちゃ楽しい。だからしんどいなーと思っている人はもう少し生きていたらいいことあるかも、くらいの柔らかい心構えで時間を潰せばいいと思う。って14歳の頃の自分に向けて声をかけつつも、14歳でNeoL Magazineを読んでる時点で、あなたの14歳は大成功です!」
UMMMI.「ロンドンに移住した際にほとんど自分の持ち物を捨てちゃったんだけど、14歳のときから持っているもの2つ。お気に入りの貝殻柄のシャツと、村上龍の本」
UMI ISHIHARA(UMMMI.)
http://www.ummmi.net