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text by Atsuko Ota

Berlin Issue : Book Selection by Atsuko Ota

mono.kultur
 
  
1冊目は、ベルリンから世界に発信されるインタビューマガジン「mono.kultur」。コンセプトはシンプルだ。one issue, one person, one conversation。つまり、毎号たった一人のアーティストだけを取り上げ、彼らとの対話を軸に、50ページほどの冊子が構成されている。いくつもの質問と回答、そこからはじまる興味深い会話が、たくさんのイメージと一緒に綴られていく。娯楽も、ゴシップも、トレンドもない。そのかわり、語り手の個性的な見解や、経験、人生が、ストイックに掘り下げられていて、稀有な世界観にまるまるどっぷり浸かれる作り。これまでに登場したのは、ベルリンを拠点とするコンセプチュアルなファッションブランドBLESSをはじめ、映画監督のガス・ヴァン・サント、建築ユニットMVRDV、写真家のライアン・マッギンレー、アーティストのデイビッド・ラシャペルや、作家/映像作家のミランダ・ジュライ、Sonic Youthのヴォーカリスト、キム・ゴードンなど、それぞれのシーンを牽引してきたアーティストたちばかり。最新号はアメリカの小説家リチャード・プライスをフィーチャーしている。
 
  
タイトル:mono.kultur
出版社:mono.kultur
オフィシャルサイト:MONO KONSUM http://www.mono-konsum.com/
(国内なら…ユトレヒト恵文社にあるかも!)
 
  
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2冊目は、ドイツといえば、の出版社Walther Königから。アートブック系出版社の老舗といわれるWalther Königの本拠地はケルンだが、実はベルリンにもブックショップを持っており、貴重な版がセールプライスになっていたりするそうなので、現地にいったらぜひ覗いてみてほしい。「New Observation」は、そんなWalther Königから出版された1冊。人類学的な視点から日常を再解釈するような作品を生み出すアーティストRoman Ondackが、古いモノクロ写真に、短いキャプションをつけていく写真集なのだが、その的確かつ鮮烈な言葉が、静かな、もっと言えばやや退屈な日常を一変させている。これをどう言い表す?という新鮮な感覚にページを捲る手がとまらなくなるのだ。人生が退屈だ!と思ったらぜひ手に取ってみてほしい。日常を楽しむヒントが見つかるはずだ。
 
  
著者:Roman Ondack
タイトル:New Observation
出版社:Walther König
オフィシャルサイト:Buchhandlung Walther König  https://www.buchhandlung-walther-koenig.de
(国内なら…POSTにあるかも!)
 
  
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3冊目は、ベルリンを拠点に活動するファッションブランドTHERIACAの世界を紹介するもの。「解毒剤」を意味するこのブランドを手掛けるのは、日本人デザイナー濱田明日香氏。フリルやギャザーといった服のディテールから、通常のパターンとは違った小さな布のピースから、はたまた、オーバーサイズやジャストサイズといったサイズから、と、これまでの服という概念を取り払い、自由な発想で表現してきた。紹介するのは、2018年に島根県立石美術館で開催された初の大規模展覧会「服のかたち/体のかたち」にあわせて刊行された図録となる1冊。これまでの要素に加え、幾何学的なパターンをモチーフにした服、ソファやトイレットペーパーといった身近なものを落とし込んだ服、など、独自の視点が、自身のアイデアノートとともにたっぷりと盛り込まれている。ブックデザインもユニーク!服好きはもちろん、煮詰まった思考を柔らかくしたい人にもおすすめです。
 
  
著者:濱田明日香
タイトル:THERIACA 服のかたち/体のかたち
出版社:torch press
オフィシャルサイト:torch press http://www.torchpress.net/
Amazonでも購入可能!)

 
selection & text Atsuko Ota

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