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text by Meisa Fujishiro
photo by Meisa Fujishiro

藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#59 ティク・ナット・ハン

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 ティク・ナット・ハンさんは、ベトナム戦争を経験している。その渦中で、僧院の中で修行を続けるべきか、それとも僧院を出て戦争に苦しむ民衆のために行動すべきかを悩んだ末に、修行も支援も、両方することに決めた。つまり、修行を通して高めた自己を、みんなのために役立てようとしたのである。これはとても当たり前のように思われるかもしれないが、大方の人々は、努力によって得た力を自分の利益となることを優先に考えがちである。簡単に言うなら利己的になる。ハンさんは利他的であった。エネルギーというのは一箇所に溜めてしまうと、水がそうであるように淀む。流れてこそエネルギーが活きるのである。
 修行とまではいかなくても、何らかの手段で自分を高める努力を絶やさず続けている人は多いと思う。その結果・報酬を仕事を通じて世の中のために還元している意識を持っている人も多いと思う。エネルギーというのは循環することで、その輪の中にいる者たちを癒し、活気づけるのだ。


 さしずめ、美しい言葉、美しいエネルギーと、意識的に触れ合っていくことは、良い波動の循環に入るためのチケットを得るようなものだ。日々それを絶やさずにいたい。肩肘貼らずに、敬遠しがちな教訓臭のある物事を、無理せず、コーヒーやお茶を飲むように、このうちに含めたらいいと思う。最後にハンさんの言葉をもうひとつ。
 

 目覚めていることを実践に移さなければなりません。
 私たちはみな、自らの人生を生きなければないません。
 
      
                               「抱擁」より





※『藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」』は、新月の日に更新されます。
「#60」は2018年11月8日(木)アップ予定。

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