ハンさんは、怒りへの対策として、否定したり目を背けるのではなく、寛容な心で受け入れ、観察し、その怒っている自分を抱きしめてあげることによって、怒りを愛へと変容させていくことが大切だと教えている。
否定ではなくて、変容させること。それは、容易くはないことだが、始めなければ、何も変わらないのだから、覚束ないながらも、とにかく、まず怒りを受け止めることから始める。とはいえ、頭では理解していても、実際には血が登っている最中に冷静になること自体が難しい。となれば、事前の準備として、大らかな心を育てる日常を過ごすことが大切になってくる。ベース作りである。ハンさんの言葉を読むことは、実はこういうベース作りにとても役立つのだ。
いくつか引用してみたい。
・ 私たちは、幸福が「今、ここ」にあるのではなく、未来にあると信じているため、いつも走ることが習慣になっています。走らないで、止まってごらんなさい。それは重要なことです。
・ あなたが探しているものは、すでにあなたの中にあります。
・ 自由に至る本当の道は、何も求めず、今、この瞬間の中にただ存在することです。
・ 存在する質が、行動の質を決めるのです。
・ 私たちは苦痛から逃げるのではなく、苦痛に対して、愛情を込めて世話をしなければなりません。
・ 私たちは、未来のために現在を犠牲にしようとします。しかし、私たちが現在に完全に存在し、それに没頭するならば、幸福に存在するために十分すぎるものを持っていることが分かります。
・ 人生は、今、ここにのみ在るのです。私たちが今、この瞬間を抜け出してしまったなら私たちは生きるということを深く体験できません。
・ 私は、幸福というものは、「幸せに存在する能力だ」と考えます。
・ 新しい始まりは、いつどの瞬間からでも可能なのです。
・ 怒りは毒と一緒です。怒りはすべてのものに害を与えます。
・ 怒りと闘ってはいけません。怒りを押さえつけてもいけません。愛情のこもった心で怒りを受け止めるのです。
・ 瞑想は、目覚めた心と集中の目で現実を観る、その勇気を意味します。
・ あなたの祖国と国民が目覚めれば、政府は国民の知性に合った行動をとらざるを得ないのです。
・ 何よりも神は、私たちの神に対する考えに左右されません。
・ あなたは、自らを神にゆだねてますか?
・ わたしたちみんなが平和で自由で幸福だとするなら、先祖、父母、子供、世界のために、することは何もないのです。
ここまで「抱擁」からの抜粋
あくまで抜粋なので、文全体を味わうのが難しいが、それでも飾らない言葉の連なりに何かを感じてもらえるだろうか。難解な宗教用語や、読めない漢字、書き手本位の比喩などなく、私たちの日常語によって平易に語られている。
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