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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#58 疲れをとる

NewMoon1| Photography :  Meisa Fujishiro


 一般的に疲れの原因として、多くの人がまず思い浮かべるのが、睡眠不足と過労だろう。睡眠不足は、不足にならないような生活スタイルを生み出す努力で解消すべきであり、過労に関しては自己調整できる範囲であれば、仕事の効率化によって対処できるとして、労働環境などの不可抗力による場合は、労働時間中の姿勢や軽い運動を取り入れることで軽減できるだろう。


 睡眠不足というのは、絶対睡眠時間の不足と睡眠の質の悪さから実感される。東京の就労者の睡眠時間は先進国の都市のそれと比較しても少ないので、まずは必要十分な睡眠時間の確保が大切だ。就寝前は、昼間の興奮状態からリラックス状態へと導くために副交感神経を優位にしたい。ぬるめのお湯での入浴を就寝90分前には済ませたり、ゆったりとしたヨガをしたり、音楽でチルアウトしたり、気持ちを落ち着かせるアートや詩に親しんだり、なだらかな下り坂をゆったりと歩いて降りていくような時間を創ることが大切だ。よく言われるように、明日は日の出と共にではなく、就寝時から始まると考えるのが分かりやすい。1日の良いスタートを切るのは就寝時からなのだ。飲み会の興奮の冷めないままに帰宅して、崖から飛び降りるようにベッドに自分を放り込むような心のストレスの一時的な発散の蓄積の代償は、想像以上に大きい。


 姿勢の歪みからの疲労。これは単純に歪まないようにしていくしかない。とはいえ、姿勢を含む長年の体癖は、自分で気づきづらいもの。まずは、鏡などを見ながら体の軸が曲がっていないかを確認したい。体の各部位が正しい位置に収まっていることで、血液や気などの流れが良くなるので、今一度丁寧に観察することだ。
 体には総合重力線というのがあり、人を横から見て、耳・肩・大転子・膝関節前部・くるぶしが地面に対し垂直に一直線に並んでいる状態だ。改めてチェックをする時は、気持ちも改まっているので、鏡の中の自分は案外まともな姿勢であろう。だが、ここから通勤電車中、歩行中、デスクワーク中、食事中、などの場面の自分を正直に想像してほしい。通勤中は背中を丸めて首を突き出してスマホを凝視していないだろうか。立っている時も片方の足に重心をかけ背骨を曲げて首を突き出していないだろうか。歩行中の背筋は伸びているだろうか。それぞれを思い浮かべてみると、いかに正しい姿勢を取れていないかに気づくだろう。
 もちろん場面場面で必要な姿勢が求められるので、いつも正しくあるのは無理だが、それを時々は正しい位置へと戻すことが大切だ。筋肉のバランスを整えて、関節を正しい位置へ戻す「もどし運動」なども書籍などを参考にやるのもいいだろう。要は、間違った姿勢をずっと続けることが肩の凝りや腰の痛みの元となるので、30分に一度は、身体をほぐすのだが、ただ伸びをしたりするだけでなく、ほぐしながらも脊柱起立筋や腸腰筋(腸骨筋と大腰筋)など体の中心にあって姿勢を保持するコア筋を鍛えられるような軽い運動をするといいだろう。
 

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