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天野太郎(横浜美術館 主席学芸員)「美術は近くにありて思ふもの」Vol.3 美術と建築 中編 ゲスト:光嶋裕介 

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森村泰昌展や奈良美智展など数多くの重要な展示を成功させ、現代アートの名裏方として名高い天野太郎。その天野が様々なゲストを迎え、アートの定義や成り立ち、醍醐味を語る連載企画の第3弾。今回は、各界から注目を集める建築家であり、銅版画やドローイングの作品集を出版するなどアートにも造詣が深い光嶋裕介との対話を通し、これからの美術館のあり方、建築のあり方を探った。

 

(前編より続き)

天野「そうですね。そのストックがあればあるほど、例えばどこに辿り着くのかがわかってしまうような作品だとがっかりしちゃって感動できなかったりもする」

光嶋「それはありますね。建築で言うと、建築を語るリテラシー、共通回路があまりにも少ないと思っています。例えば、住宅一つとっても、坪単価いくらでこの家ができるとか、この部屋の大きさは12畳だよね、という数値化できる尺度でのみ物事を判断したりする。それは当然分かりやすいですけど、本当のモノってそういうところじゃなかったりしますよね。

比較できないもの、言語化できないものは世の中にたくさんあって、そういう違ったレイアーのものにどれだけ耳を傾けられるか、それを拾って建築の空間の中に落とし込めるか。そのときに、さっき言ったある種の『余白』を持って現場で生まれたものとか、更に言うと完成してからが建築だと思うんです。完成して終わりじゃなくて、建ってから愛されないといけない。築3年の綺麗なビルだって人が一人も住まなかったら3週間で廃墟になっていきます。人がいないと建築は成り立たない。だから原宿だって、表参道だって、猛スピードでコロコロ変わってしまう街の姿を見ると僕は心が痛む。

対して僕が住んでいたベルリンには戦争中のレンガに銃弾の跡があるビルが未だに残ってるんですよ。ベルリンの壁がここにありましたという負の遺産を隠さないで、俺たちはこんな悲惨なことをしてしまったんだとしっかり都市に痕跡として残している。それはまさしくさっき仰っしゃった、孤立、排除しないということと同義だと思うんです。建築空間の中においてもどうやって異物同士がうまく調和していくかが大事だと思います」

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