[画像: 国宝 火焰型土器 新潟県十日町市 笹山遺跡出土 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 新潟・十日町市蔵(十日町市博物館保管) 写真: 小川忠博]
特別展「縄文-1万年の美の鼓動」が、東京・上野の東京国立博物館にて開催中。会期は、7月3日から9月2日まで。
本展は、全国各地で出土した縄文時代の遺物から、えりすぐりの土器や土偶、装身具や石器などおよそ200点が揃う。6つの国宝も展示される。これまでに9万件を超える数が確認されている縄文時代の遺跡。数多ある縄文時代の出土品の中でも、たったの6件しかない国宝が勢ぞろいするのは、今回の特別展が初となる。
今からおよそ1万3千年前から1万年続いた縄文時代。その長い歴史の中で生み出された土偶や土器といった道具からは太古の昔につくられたとは思えないほどの高いデザイン性を感じ取ることができる。
全身が現存する中空土偶のなかで最大を誇り、北海道唯一の国宝でもある「中空土偶」は、頭部から足先まで中空で薄手に形作られた体と、全身を飾る精緻な文様を特徴としていて、熟練した土器作りの技術を巧みに応用したものといわれている。
一般に仮面土偶と呼ばれる、顔の表現が仮面をつけたような土偶。なかでも一際大きく優美な本例は「仮面の女神」と呼ばれ、墓と考えられる土抗群の一つから出土したこの国宝は、死者への鎮魂と再生を祈るために埋納されたと考えられている。
「縄文の女神」は“八頭身美人”と評され、堂々たる正面観と先鋭的な印象を与える側面観との差異が際立ち、現代美術に匹敵する造形美ともいわれる。
「合掌土偶」は、膝を立てて座り、胸の前で両手を合わせるその姿を形容して称され、祈りの姿そのものとも評されている。
土偶は安産や子孫繁栄を祈るために作られたと考えられているが、まさにその祈りを体現したかのような土偶が「縄文のビーナス」。力強くも柔らかな曲線美は、縄文時代の人びとの女性美の理想を表したかのよう。
そして、縄文時代にもっとも数多く作られた道具のひとつが縄文土器。そのなかでも圧倒的な存在感を示し、土器本来の役割が煮炊きの道具であったことを忘れさせるほどの造形美を誇るのが「火焔型土器」だ。
土器や土偶に見られる縄文の造形は世界史的に見ても独創的なものだが、芸術的価値をいち早く見出したのは、芸術家であり民俗学者の岡本太郎だったというのも興味深い。
「縄文-1万年の美の鼓動」
東京国立博物館
東京都台東区上野公園13-9
TEL 03 5777 8600(ハローダイヤル)。
〜9月2日・9時30分〜17時(金・土〜21時、日・祝〜18時、7月16日〜18時、入館は閉館30分前まで)
月曜休(7月16日、8月13日は開館、7月17日休)
入館料1,600円