ユカ・ツルノ・ギャラリーは、大﨑のぶゆきの個展『マルチプル ライティング』を2018年4月21日(土)から 5月26日(土)まで開催。ギャラリーでの3年ぶりとなる本個展では、大﨑が長年取り組んできている「イメージが消失する」という表現がもたらす曖昧さとともに、流動的な時間や記憶のあり方をもとにした作品を発表する。
大﨑はこれまで、自身を取り巻く世界や認識への興味から「リアリティの不確かさ」について表現することを探求し、独自に素材や制作方法を開発しながら「イメージが消失する」現象やその過程をモチーフに、社会における虚構性やリアリティについて問いかけてきた。近年は、未来に対して予見されていることや過去に起こった出来事を「現実」として引き受ける感覚について考えるようになり、イメージの曖昧さだけでなく記憶や時間について深く考察をし、曖昧さや懐かしさといった感覚を誘発する作品を展開している。
このような取組みのもと、本展は、描いたドローイングが溶けて流れていく瞬間を撮影したシリーズ『untitled album photo (2016-2018)』、鏡のインスタレーション『Observer』、そして版画や古典絵画技法を応用した“未可視”の状態にある絵画を制作したインスタレーション『不可視/可視/未可視(2015)』で構成される。タイトルの「マルチプル ライティング」、つまり「マルチプル/多数の・多様な」「ライティング/照明装置」とは、マサチューセッツ工科大学のブラッド・スコウ博士の「過去・現在・未来は同時に存在しており、スポットライトが照らすように現在がその空間を移動していく」という「相対論的スポットライト理論」からインスピレーションを受けている。展示空間に配置される鏡は常に移りゆく「現在」を光として映し出し、「過去」であり「未来」でもある複数の時空間を繋げるような作品や「現在」においては見ることが出来ないイメージは、直線的な時間ではなく流動的でパラレルに存在する「過去/現在/未来」の可能性を問いかける。
“様々な方法で制作される作品で構成する空間は、確定した「過去・現在・未来」があるのではなく並行世界の可能性、すなわち「スポットライトが当たる現在は無数の可能性がある」ということを示唆する。表現がもたらす「ある/ない」「消える/消えない」「見える/見えない」「光/闇」などの様々な両義性の「間」によって、この世界について思考する装置となるのではないだろうか。” 大﨑のぶゆき
これらのシリーズは、ドイツや大﨑が拠点とする愛知や関西で発表されてきたが、東京では初めての発表となります。大﨑の身の回りの環境や認識の変化とともに発展してきた作品群は、もしかしたら過去から未来が作られるだけではなく、未来が過去を変えていくかもしれないという作品を通じた感覚の試行実験の場でもある。
大﨑のぶゆき「マルチプル ライティング」
2018年4月21日 – 5月26日
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