『ジェンダー写真論 1991-2017』は、「フェミニズム」という視点での展覧会を日本で初めて、今から30年近くも前に、企画した笠原美智子さんによる様々なテキストをまとめたもの。
ロバート・メイプルソープ、ダイアン・アーバスから、横浜美術館での個展も記憶に新しい石内都まで。1991年から2017年まで。写真家と女性アーティストを中心に、いくつもの展覧会や写真集のために書かれたテキストの一つ一つは短く、短編集のように読めるサイズ感。
それでも取っつきにくいかも…と思った人には、「あとがき」を読んでから本書を紐解くことをおすすめする。
笠原さんはあとがきで、「わたしの理想の死に方を『孤独死』と命名した人は、ひとりでいることが寂しくてつらいと感じる人なのだろう。死ぬときは愛する家族や友人に見守られて逝きたいと思っているのだろう。しかしそれはひとつの価値観、イデオロギーである」と穏やかに綴る。家族とは仲が良いし、大恋愛の可能性もまだ残してはおきたいが、ひとりは快適、と。
「フェミニズム」や「ジェンダー」を専門とする研究者が、それを体現した生き方をしなくてはいけない、なんてことは全くない。けれども、笠原さんの言葉は、読めば単なる研究成果以上に、そして静かに響いてくるはず。
『ジェンダー写真論 1991-2017』
笠原美智子
里山社
2,700円
里山社サイト http://satoyamasha.com/books/1836