——原作は読まれたんですか?
上杉「読んだんですけど、正直よくわからなかったんです。それで、監督に『これはなんなんですか?』と聞いたら、『その感覚があるんだったらできると思うよ。分かんないんだったらできる』と言われて」
レイジ「あの中にいる人たちはわからないまま生活しているから、わかっちゃうとなると客観視しすぎているということなんだろうね」
上杉「そうなのかもしれないです」
レイジ「(資料を見ながら)吉沢亮くん、かっこいいよね。すごい好き」
上杉「めちゃくちゃ格好いいですよね。彫刻みたいに整ってる。いい人ですよ」
——「とと姉ちゃん」の時は相手役の杉咲花さんや周りの方がすごくて悔しかったとおっしゃってましたが、今回はどうですか?
上杉「今回はないです。『とと姉ちゃん』あたりが、これまで画面の中で観てきた人たちがいる世界にポンって入ったタイミングで、急に『右に唐沢(寿明)さんいて左にピエール瀧さんがいる……』みたいな状況の中で自分と向き合って萎縮したんです。杉咲さん含め素敵な人たちと同じモチベーションでいなかった自分に腹立った時期でした」
——その萎縮を振り払えたのはどういうきっかけですか?
上杉「『とと姉ちゃん』が終わって、空いてる時間にいつもの仲間と会ったりしていたらリセットされました。仲間たちが開けていて良い意味で適当な部分がある人たちなので、『相手が誰でもよくない?』という気持ちになれて。その『よくない?』はマイナスの意味ではなく、どんな人とでも役でいるときは対等でいていいというそのための理由を探して、冷静に辻褄を合わせたんですよ。『リバーズ・エッジ』はいいタイミングで払拭された後の作品なんです。『好きにやっちゃおう』と思えたし、駄目だったときには駄目と言ってくれるのは監督だから」
レイジ「いい話だね」
——レイジさんもバンドで自分に対して悔しかったことあります?
レイジ「悔しいという感覚はあまりないですね。悔しさを感じる前に改善しなきゃと思うから」
上杉「マインドの持っていき方ですよね」
レイジ「そう。あと、バンドというのは特殊で4人でひとりだから『今日は俺すごく良かったな』と思っても、その中の1人が全然良くなかったというときもある。でもそれは悔しいというのとは少し違うし、良くなかったわけでもない。それはお客さんが決めることだから。更に言うと、一人一人に『今日良かったですか?』って聞けることでもないから、自分なりに『今日は良いプレイができたな』と思えるほうが良いんじゃないかな。逆に『今日は自分だけが良くなかったな』って時は悔しかったかな」
上杉「映画もそう。良かった良くなかったはお客さんが決めることで、演技がオッケーか否かは監督が決めること。自分が思っていたプレイができない時は日々どうしようと思っていたんですけど、もう『どうしよう』をやめようと思いました。観音崎もただの無意味な暴挙の人ではないということをどうやったら映像で伝えればいいのかって思っていたんですけど、そういうことを考えるのはやめよう。それは監督に任せようと思って」