—“Run Away”はアルバム制作時に作ったんですか?
川上「これは最近で、10月から着手しました」
—そうなんですね。アルバムからの流れを感じたし、その発展型だと思ったので時期が近いのかと思ってました。
川上「ああ、それはその通りです。あのアルバムでもちゃんと得たことを出してるけど、僕の中ではさらにこうしたかったという部分もあって、次に活かしたいと思ってたんです。だから『Me Do No Karate』よりも通しやすくなってるけど、サビでずっとファルセットだったりする、ちょっと攻めてるところがあります」
—うん、相当攻めてると思いました。“Run Away”だけじゃなくてここに収められている4曲のバリエーションがとにかく広い。前から片鱗はあったけど、『Me Do No Karate』くらいから特に、実はブライアン・イーノとかも好きだったり、そういういろんな音楽を吸収してきたものがさらに顕著に形になって表れてきているのを感じます。
川上「そもそも自分たちの中にあったものを探して行く過程で、自分たちが憧れてたものからの脱却もしなくてはいけないというのはありますよね。もっと言うと、デビュー前に[Champagne]の中で転換期があって。それまではずっとオアシスっぽい、ブリティッシュポップをやっていたんですよ。でもそればかりだと自分のグルーヴと合わないんですよね。やっていて楽しいし、いい曲なんだけど、心の底から本当に何もかも忘れられるような、未来も過去もなくなるくらいに酔いしれる曲じゃないよねって。それで自分たちが好きだとか憧れているという前に思わず出てしまうようなビートやリズムパターンを用いだして、新しい音楽が出来た。
それがデビューに繋がるデモテープになったので『ああ、やっぱり自分たちのものを出すのが大事なんだな』と思って。それがファーストアルバムなんですけど、その音楽をリリースしたらそれが[Champagne]というバンドの音楽だということになる。でもそのままそれを正攻法みたいにセカンドで活かそうとしても駄目だし、というのでセカンド、サードって挑み続けたんですけど、4枚目でまた今までの[Champagne]とは違うのをやんなきゃなというのと、あと単純に飽きてきて(笑)。
でもその違うことをやるのはクリエーターとしては大事なことだと思うんです。このアルバムを6月にリリースして、シングルは12月発売だから時期は近いんですけど、この半年間はツアーだったので、嫌というほどアルバムの曲を聴くし、やる。だからここをこうしたい、ああしたいというのが出てたんです。それがシングルに活かせたので、短いスパンでもその成長が結構見れるのかなって自負はしています」
—打ち込みも前作からやりだしてたけど、今回は元々の[Champagne]との混ざり具合が完璧です。
川上「昔から打ち込みも好きだったりするんで。それをロックバンドっぽく、『いや、打ち込みなしで』っていうのも格好いいと思うんですけど、やっぱり声に合ってたりすると入れた方が良かったりしますよね。いい意味で柔軟になれたなあって。“Starrrrrrr”くらいからそういう方向になっていたんですけど、今、なんか音楽が楽しい状態ですね。色んなことをやりたいし、やっていい。メロディをいいものであるという前提で作っているのでブレはしないので。メンバーも引き出しはいっぱいあるから、アレンジとかに関しては多彩なものをドンドン持って来れるし、やってて楽しいですね。あと、リリース資料にはエレクトロって書いてあるんですけど、あんまり自分の中でエレクトロって聴こえないんですよね」
—エレクトロではないですよね。打ち込みという言い方かな。
川上「そう。だけどそこは一つの要素というだけで、やっぱりロックというものが前に出てるので、それは良かったと思います」
—打ち込みで大変なのはやはりドラムだと思いますが、庄村さんはそことどういう付き合い方をしたんですか?
庄村「そうですね。でもおっしゃったように、“完璧”というのがまさにそうで、前のアルバムとかはそういったテクノロジーとか自分たちの楽器以外のものと取っ組み合いながら作った感じなんです。今回は、そのアルバムないし、“Starrrrrrr”で培った自分たちなりのテクノロジーとの付き合い方のセオリーが上手く組み込めたので、聴いた印象もバランスが完璧で、形としてきれいなものが作れるようになったんですよ。僕たちのロック感は全く失っていない、でも打ち込みのいいところは活かせてますという。それは僕らなりの意見というか答えなので、他の先人の方々がやってた方法とはまた違うけど、現時点では、そういうバランスの良さ、自分たちなりの黄金率みたいなのが導き出せたと自信を持って言えます」