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text by Ryoko Kuwahara
photo by Akiko Isobe

Interview with St.Vincent by Rei

NeoL_StVIncent | Photography : Akiko Isobe | Edit : Ryoko Kuwahara



突出した音楽性と揺るぎないテクニック、そしてアートワークの高い完成度——21世紀を代表するSSWであり、クリエイターとして尊敬を集めるSt.Vincentが待望の新作『Masseduction』のリリースを発表した。リリースに先駆け、8月に開催されたHOSTESS CLUB ALL-NIGHTERのために来日を果たした彼女に、SSW/ギタリストのReiがインタビューを敢行。パワー、セックス、危険な関係、死について描かれた今作について、そしてギターや音楽の存在について、ミュージシャン同士ならではの対話を記した。

Rei「私も歌手、そしてギタリストとして活動していて、あなたの作品に沢山の影響や刺激を受けているので、インタビューをすることができて光栄です。2年前にあなたのパフォーマンスを観て、ショーの構成にとても興味が湧きました。ステージを作り上げる時のルーチーンや過程にルールなどがあったら教えてください」


Annie「前回のレコードの時は、ポストモダンの振り付けにとても惹かれていたんです。それでアニー・ビー・パーソンという天才的な振付師と仕事をして、そこから多くの身振りや要素を取り入れました。ほとんどの場合、ショーの構成の着想はアルバムのアートワークからスタートします。冷酷な支配者や支配的な中枢機関という近未来の雰囲気を醸すことが前作のコンセプトだったので、色味がなく物思いに沈んだムードのものになっていきました。いまはそういう時代だと私が感じていることを反映したんです。プロセスには時間がかかったけれど、うまくまとめあげることができたと思う」


Rei「アルバムのアートワークと音楽を核にショーを広げているということですが、個人的にあなたのショーには細部まで行き渡る独特のスタイルがあると感じました。それらの統一性はロジカルに生み出されるものですか。それとも直感的に?」


Annie「両方ですね。道を歩いてる時や夜中にアイデアが浮かんでワクワクしてくる。そこから、『どうやって形にしようか』とプロセスを考え始めるんです。さらに、『観た人がどう感じるか』『どういう風に伝わるか』なども考えます。そうやって観衆がお金を払ってでも観たいと思うレベルにまで磨きをかけていきます」


Rei「ステージ上での小刻みなステップやギターを抱いてのダンスは、ポストモダンの振り付けから影響を受けたものですか?」


Annie「自然にやってしまうんです(笑)。私の特徴的な動きになっていますよね」


Rei「日本のオーディエンスと他の国とでは違いはありますか? 国によってオーディエンスに違いはあるんでしょうか」


Annie「あると思います。日本のオーディエンスは、知識があることがプライドに繋がっているから、事前に予習をしてくれたようにすごく楽曲に詳しいし、とても楽しみにしてくれていたのが伝わってくる。ライヴがただのカジュアルなイベントではないのよね」


Rei「私もそう思います。日本のオーディエンスは控えめで恥ずかしがり屋なイメージがあると思いますが、相手のことをちゃんと知ったうえで心から好きなりたいという想いを感じます。その「どんなアーティストかな?」と慎重に窺う段階があったうえでようやく好きな気持ちを表現して、熱狂できるんです」


Annie「ああ、なるほど。それはとても素敵なことね」


Rei「あなたのショーは緻密に計算されていて、台本があるように思えるほどです。演出してる際に、オーディエンスの反応でパフォーマンスが影響されることもありますか?」


Annie「もちろんよ。しっかりと構成されているから、そこまで大胆に変えないけど、オーディエンスとの間には毎回、何か特別な感覚が生じているのがわかります。毎晩同じようなショーに見えるかもしれないけど、私にとっては1回1回が新しい体験なの」


Rei「私はあなたのアートワークがすごく好きなのですが、アルバムのアートワークにポートレイトをよく使われていますよね。実はそれにとても影響されて、私自身のアルバムのアートワークもポートレイトにしたんです」


Annie「3枚もアルバムを出してるのね!」


Rei「7曲入りのミニアルバムを3枚出しています。あなたのアートワークはとてもシンプルで洗練されたデザインで、ちゃんと音楽に寄り添っていますね。視覚的要素と音楽には強いコネクションがあると思いますか。それらを並行して考えているのか、個別に考えているのか教えてください」


Annie「アルバムによって違うかな。前作は、ヴィジュアル要素はレコード自体から引き出したもので、そこから工夫して拡大させていきました。今回はレコーディング中やその最終段階あたりでできたので、今回のほうがちょっと凝縮されたものになっているかもしれない。インスピレーションというのは、大抵が元から内にあったイメージから引き出されるものだと思います」


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