『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)でアカデミー脚本賞、『サムウェア』(2010)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞に輝いた、世界的映画監督ソフィア・コッポラ。3年ぶりの新作『ブリングリング』は、パリス・ヒルトンやオーランド・ブルームなどセレブの自宅を突き止めたティーン窃盗団が、総額3億円もの現金やブランド品を盗んだという実際の窃盗事件を基にしている。ソフィアは2008~09年に起きたこの事件と、その後を追った「ヴァニティ・フェア」誌掲載のルポタージュ「The Suspects Wore Louboutins(容疑者はルブタンを履いていた)」に衝撃を受けて、映画化を決意したという。
ー この題材を映画にしたいと思った理由は何ですか?
ソフィア「これは今のセレブ至上主義とSNSに支配された若者のカルチャーを象徴している事件だと思うんです。そんな情報社会の危うさとか、私の育った時代といかに違うかを描きたかったのです。実話を題材に映画を作ったことがなかったので、リサーチのプロセスは新しいチャレンジだったと言えます」
ー リサーチした中で、発見したことはありますか?
ソフィア「驚きの連続でした。記者の記録や、警察の報告書を読んだり、窃盗団の子に会ったのですが、窃盗団の一人の男の子の『エキサイティングな思い出だった、でも今は後悔している』という発言には本当に驚きました。それ程間違ったことをしたという自覚がなさそうだし、窃盗によって世間の注目を集めることに惹かれていただけだのように感じました。でもそれを聞いた時に、“セレブへの憧れ”という犯行の動機も、証拠を残す危険にすら気づけずに、盗品を自慢げにフェイスブックにアップしていたことも、容疑者なのにリアリティ番組などに出演して、脚光を浴びていたことも、何となく理解できました」