今年リリースした最新アルバム『Silver Wilkinson』が各方面から称賛されたBIBIO。 日本でも1stシングル”À tout à l’heure”がロングヒットとなるなど、 柔らかでノスタルジックな旋律が、 多くの音楽ファンに届けられた。新たに完成した今作”The Green E.P.”は、雨の日に自宅のガレージで録音され、 屋根に降り注ぐ雨音と共に響く歌声とギターが、 最高に美しく切ない名曲”Dye The Water Green”を中心に制作されている。
”Dye The Water Green”を中心に据えたEPを作りたかったんだ。 というのも、これが『Silver Wilkinson』で一番気に入っていた曲だし、 この曲と相性が良さそうな音楽が僕のアーカイヴには沢山あったか らね。
”Dinghy”は、(今やレザレットの片割れでもある) リチャード・ ロバーツと2006年頃にレコーディングした古いトラックだ。 当時僕らは古いヴィクトリアン・パブで働いていて、閉店後の“ 貸し切り”状態を待つのが習慣となっていた。 いつも夕方の仕事前にギターを持ち込んでおいて、 客を全て追い出した後にジャムセッションをやっていたんだ。 その頃、僕らは一緒に様々なものを録音したよ。時にはパブで、 時には庭で、また森の小川の畔、あるいは自宅で。その多くが、 とても古いカセット・レコーダーと安物のマイクを使って、 超ローファイな方法で録音されているんだ。 このトラックもワンテイクでカセットに直接録音したものさ。 この頃、僕らはしょっちゅう一緒に演奏していたから、 二人のリズム感覚は完璧に一致していたんだ。 このトラックではとても自然にお互いのタイミングに合わせて反応 し合っていると思うよ。 リックはナイロン弦のギターを弾いていて、 僕はカヴァキーニョを弾いている。 僕はずっとこのトラックがお気に入りだったんだ。 これは鮮明な記憶を甦らせてくれるし、 僕にとってはまさに白日夢のようなトラックさ。 このEPはこの曲にとっての理想的な居場所のようなものだよ。”Dye The Water Green”のくぐもった、輪郭をぼかしたサウンドは、 この曲にとてもよく調和しているからね。
”The Spinney View of Hinkley Point”は、 僕が初めて生ドラムを使用してリリースした曲なんだ。 MPCにサンプリングされているようなものではなくてね。 友人がサマセットの田舎に所有していた倉庫でドラム、ギター、 ベースのパートを録音したんだ(ライヴ・トリオ・ セッションを撮影したのと同じ倉庫だ)。
”Carbon Wulf”は、もちろんアルバムに収録した”Wulf”の別録だ。これはバリトン・ギターとリヴァーブ・ ペダルによる正真正銘の一発録り即興演奏だよ。 アナログのリミッターで思いきり圧縮して、あのゴツゴツした、 焼け焦げたようなサウンドが生まれたんだ。
他のトラックも何年か前に書かれたもので、 アーカイヴを探っている間に再発見し、 新鮮な耳で聴き直してみた。僕はそれらを改良することにし、 ヴォーカル・パートを録音して、 いくつかの楽器を加えて完成させたんだ。
Bibio
November, 2013
”The Green E.P.”は1月25日にリリースされ、日本でのみボーナス・ トラックを収録したCDフォーマットでの発売も決定している。