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text by Ryoko Kuwahara
photo by Akiko Isobe

Fiction Issue : Twin Peaks Homage by Akiko Isobe & Kosuke Kawamura

twinpeaks_NeoL_1_photography : Akiko Isobe| hair & make up:  Yousuke Toyoda| model : Megumu | graphic : Kosuke Kawamura | style : edit  Ryoko Kuwahara

twinpeaks_NeoL_2_photography : Akiko Isobe| hair & make up:  Yousuke Toyoda| model : Megumu | graphic : Kosuke Kawamura | style : edit  Ryoko Kuwahara

twinpeaks_NeoL_3_photography : Akiko Isobe| hair & make up:  Yousuke Toyoda| model : Megumu | graphic : Kosuke Kawamura | style : edit  Ryoko Kuwahara


全世界で社会現象を巻き起こした伝説の海外ドラマ「ツイン・ピークス」。その最終話、殺された美少女ローラがクーパー捜査官に“25年後にまた会いましょう”と語った通り、その25年後を描く全世界熱望の新作がWOWOWにて放映開始。アメリカの小さな町を舞台に、田舎ならではの閉鎖性や独自のルール、そしてそこに暮らす人々の知られざる顔——鬼才デヴィッド・リンチが描く日常の延長線上にある奇妙な世界へのオマージュを込めて、写真家・磯部昭子とコラージュ・アーティスト/グラフィックアーティスト・河村康輔が撮りおろし作品を制作。日本での新シリーズ放送スタートという記念すべき日(7月22日)に行った対談とともに、デヴィッド・リンチの遺伝子を受け継いだアーティストの作品をお楽しみあれ。

——1991年に日本では『ツイン・ピークス』の放映がスタートしたのですが、お二人はオンタイムで観てましたか?

磯部「私は高校生だったんですけど、オンタイムで吹き替え版で観ていました。カイル・マクラクラン本人の声より吹き替えの声で記憶が出来上がってたから、WOWOWの字幕版で観たらなんかピンとこなくて(笑)。吹き替えで観て『これだー!』となってました」


河村「俺も中学生のときにWOWOWノ吹き替え版で観てて、そのときは全くわけわからなくて。高校生くらいのときにもう1回VHSで吹き替えで観直したんです」


——「ツイン・ピークス」の魅力のひとつとしては、スタイリッシュな画作りが挙げられますが、ヴィジュアルを手がけるお二人はそこをどのように見ていたのか気になります。


河村「このヴィジュアルの格好よさに気づいたのは、ある程度年齢がいって物事がわかってきたときなんです」


磯部「うん、当時はそれほど小物だったりの印象がなかった。でも時が経てば経つほど、コップや置物、部屋などの印象が深くなる。部屋の絵とか本当に絶妙で、誰が選んでるんだろうと思う。剥製も動物だけじゃなくて魚の剥製が印象的だったりする」


河村「過剰にやり過ぎてると入り込めないから、ギリギリ日常にある気持ち悪さを突いてて」


磯部「変な世界観って、パッと見て変じゃないんですよね。パッと見ておかしな世界は舞台だから、怖さはない。なんだか変だな、あやしいなというほうがより異常性がある。そういう絵の作り方は自分の写真にも刷り込まれていると思います。『ツイン・ピークス』は要所要所でインパクトがある演出がされているけど、ドラマティックなライティングというわけでもなくて意外とノーマル。でも自分の中でインパクトのある場面がどんどん拡張されていって、記憶が更新されてきてしまった」


河村「全く同じ。俺も勝手にそう思ってて、もっと変なものがたくさん出て来ると思ってたの。でもそんなことないんだよね」


磯部「小人もちょっとしか出てこない。ただその踊り方が奇妙で怖い」


河村「リンチのすごいところは、再生して観てるときは、完全にその世界になってるんだけど、止めた途端に現実に戻るんだよね。それは絵が強いから」


磯部「彼は写真も撮っていて、ラフォーレで展示を見たんだけど、雪だるまの写真がすごく狂気を感じて、いいなあと思った。そういうこともやるくらいだから、本人がこだわってるんだろうね」


twinpeaks_NeoL_4_photography : Akiko Isobe| hair & make up:  Yousuke Toyoda| model : Megumu | graphic : Kosuke Kawamura | style : edit  Ryoko Kuwahara


河村「今回観返して思ったもん。ずっと前に買って食べずに置いてるキャプテン・クランチのシリアルの箱が事務所にあって。その箱は年代によって変わるんだけど、第1話でローラ・パーマーのキッチンの後ろにあるのと全く一緒だった」


磯部「ええーっ! すごいね」


——無意識に刷り込まれていたんですね。


河村「そう。だからそれを買って置いてたんだと思う」


磯部「一番刷り込まれやすい時期に観てるから。私も赤と黒のギザギザの布をずっと持ってて、どうしても捨てられなかったんだけど、観返してみたら赤と白のギザギザの床が出てきて『一緒じゃん!』ってなった。そういうのが多くて、恩恵を受けてるなあって(笑)。ジャケットのローラのぐるぐるビニールに巻かれたシーンも一瞬しか出てこないのに、ザワザワするでしょう?」


河村「ローラは回想シーンでちょっと出るけど、それ以外はたった2枚の写真だけであれほどのインパクトを作り上げているわけで」


磯部「あのプロムの写真は、河村くんのコラージュで出てきそうだなって思う。展示で家族の肖像とかやってたけど、あの延長な気がする」


河村「その通り! あれは昔から一番好きな写真なんだよね。それこそああいう写真が部屋に置いてあるのを『ツイン・ピークス』で観て、知らない人の家族写真とかを収集し出した。コラージュで使う写真も、思い切りあの時代のものばかりだし」


twinpeaks_NeoL_6_photography : Akiko Isobe| hair & make up:  Yousuke Toyoda| model : Megumu | graphic : Kosuke Kawamura | style : edit  Ryoko Kuwahara


twinpeaks_NeoL_5_photography : Akiko Isobe| hair & make up:  Yousuke Toyoda| model : Megumu | graphic : Kosuke Kawamura | style : edit  Ryoko Kuwahara


——話の内容としてはどうですか? 話が繋がらなかったりと議論を呼んだにも関わらず、25年間もファンを魅了し続けるのはなぜなんでしょう。


磯部「私は一番多感な時期に都会ではない田舎で観ていて、もちろんアメリカと日本という落差はあるけど、同時にあの独特の閉鎖感の中に自分をどことなくシンクロさせていたからハマってしまった感じはありますね。起こっていることは自分の周りにもゼロではないという奇妙な親近感」


河村「一歩間違えたら、あの中にいる人になっちゃうんじゃないかというのはあった。ヴィジュアルだけじゃなく、人物描写なども過剰演出に見えて過剰じゃないんだよね」


磯部「うん。だって、知らないだけで自分の隣にいる人がとんでもない秘密を持って生きているかもしれない。それがドラマだから見えているだけで、片目に眼帯してても、なくはないよね」


河村「子どもながらにあのキャラクターは衝撃だったけどね。気が狂った感じだったし、本当に怖かった」


磯部「わかる。ただ変な人って特に田舎には結構いたなあ。別に突拍子もないということもなかった」


河村「ちょうど『ツイン・ピークス』を観てた時期に、実際にそういう感じのおじさんが近くの公園にいたもん」


磯部「ドラマとして描いたら異常に思えるけど、誰にでも起こりうることなんだよね。自分もそこに行く可能性が0じゃないという感覚が気持ち悪いし。自分にもある闇の部分を引き出されそうで、それがちょっと快感でもあり、怖くもあり。そういう気持ちにさせるのが上手いんだと思う」


河村「不安な部分をくすぐってくる」


磯部「触れてほしくないところを見せてくる。土足で踏み込まないギリギリのところを探り合ってる感じとか、みんなのダークサイドな部分をちょいちょい出すんだけど、ポップに描かれていたり。ゴシップ的な要素もあって、いい意味でB級の昼ドラに近いテンションだったりもするのかも」


河村「覗きたい欲求、怖いもの見たさというか。当時はとんでもなくヤバいものを親に隠れて観てる感覚だったんだけど、そこで得た断片的なものが処理されないまま残っていて、アキ姐のライティングや俺のコレクションみたいに、作るものにソースとしてどこか入ってる。そもそも小さな田舎の町で、外部と遮断されてる中でしか起こらないルールや狂気性があるというのは、すごく箱庭的。いま自分たちがやってることもそれと同じだと思う。アキ姐も箱の中に一個自分の世界を作って、俺もA3だったらA3の中で作品を作り上げていくという。俺の場合はもう、コラージュ自体があの世界観的に近いんだよね。絶対繋がらないところをあえてひとつの部屋に入れてしまって、ぶつかるであろうものを重ねてコラージュを構築していくのが、あの話の展開みたいじゃない? で、みんなはわりとわかりやすく結びつけちゃうんだけど、俺の場合はわからないように、あたかも普通に見えるように落とし込んでいくから、その作り方は『ツイン・ピークス』のちょっとモヤッとさせる感じに近いのかもしれない。無意識にそれも刷り込まれている」


磯部「モヤモヤはずっとしてるよね。エンディングを迎えても、なんかまだどこかで続いてるんじゃないかって思ってたし」


河村「普通はヴィジュアルと内容とで合わせて答えを出していくところが、キーとなるヴィジュアルと内容が全く結びついてないから100人いたら100通りの答えが出る。俺が持っている答えも、自分だけの答えなんだよね。通常ならエンディングでカタルシスで終わるはずが、ずっとモヤモヤが続いている。でもその答えのないところに惹かれ続けているんだと思う」


twinpeaks_NeoL_7_photography : Akiko Isobe| hair & make up:  Yousuke Toyoda| model : Megumu | graphic : Kosuke Kawamura | style : edit  Ryoko Kuwahara


twinpeaks_NeoL_8_photography : Akiko Isobe| hair & make up:  Yousuke Toyoda| model : Megumu | graphic : Kosuke Kawamura | style : edit  Ryoko Kuwahara


磯部昭子/Akiko Isobe
写真家。2001年武蔵野美術大学造形学部映像学科を卒業。主にファッション、広告の分野で活動を展開。数多くのADに加え、星野源などのCDジャケットでも知られる。
http://www.isobeakiko.com


河村康輔/Kosuke Kawamura
1979年、広島県生まれ。東京都在住。グラフィックデザイナー、アートディレクター、コラージュアーティスト。「ERECT Magazine」アートディレクター。
多数のアパレルブランドにグラフィックを提供、コラボレーションTシャツを制作している。他にもライブ、イベント等のフライヤー、DVD・CD のジャケット、書籍の装丁、広告等のデザイン、ディレクションを手掛ける。代表的な仕事に、「大友克洋GENGA展」メインビジュアル、「ルミネ×エヴァンゲリオン」広告ビジュアル、アートディレクション、デザインなど。
2017年、大友克洋氏と共作で「INSIDE BABEL」(ブリューゲル「バベルの塔」展)を制作。


photography Akiko Isobe
hair & make up Yousuke Toyoda
model Megumu
graphic Kosuke Kawamura
style & interview & edit Ryoko Kuwahara


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ツイン・ピークス The Return
7月22日(土)スタート(全18話)[第1話無料放送]
毎週土曜 夜9:00 毎週金曜夜11:00(字幕版)


全世界で社会現象を巻き起こした伝説のドラマシリーズ「ツイン・ピークス」の続編。再びデヴィッド・リンチを製作総指揮に迎え、物語の25年後を描く。
1990年代から現在にかけて日本全国にファンを生み続けている伝説の海外ドラマ「ツイン・ピークス」。その最終話、殺された美少女ローラがクーパー捜査官に“25年後にまた会いましょう”と語った通り、その25年後を描く全世界熱望の新作。全米では5月21日からショウタイム局で放送されているが、日本ではどこよりも早くWOWOWが独占初放送する。企画・製作総指揮、そして全18話の監督を務めるのは、奇才デヴィッド・リンチ監督。本国放送前は前作の25年後を描くという以外、物語を一切明かさないという秘密主義を 徹底した一方、クーパー役のカイル・マクラクラン、ローラ役のシェリル・リーなど旧作の出演陣が多数再登場するのに加え、ローラ・ダーン、アマンダ・セイフライド、ナオミ・ワッツ、 アシュレイ・ジャッジ、日本人では裕木奈江などのスターが新キャストとして参加することが決定。リンチが再び全世界を空前絶後の迷宮にいざなう!
<ストーリー>
オリジナルシリーズの最終話で、赤い部屋に取り残されたクーパー捜査官。25年後の世界を描く新作では、クーパー捜査官やローラ・パーマー殺害事件をともに捜査した保安官らのその後だけでなく、ナオミ・ワッツ、アマンダ・セイフライド、モニカ・ベルッチ、裕木奈江ら、豪華キャスト陣の役どころも見逃せない。
監督: デヴィッド・リンチ
脚本:マーク・フロスト、デヴィッド・リンチ 出演:カイル・マクラクラン(ダギー・ジョーンズ/デイル・クーパー役/声:原康義) シェリル・リー(ローラ・パーマー役/声:高島雅羅) キミー・ロバートソン(ルーシー・ブレナン役/声:安達忍) ハリー・ゴアス(アンディ・ブレナン役/声:幹本雄之) マイケル・ホース(トミー・“ホーク”・ヒル役/声:仲野裕) リチャード・べイマー(ベンジャャミン・ホーン役/声:秋元羊介) デヴィッド・パトリック・ケリー(ジェリー・ホーン役/声:中村大樹) マシュー・リラード(ウィリアム・ヘイスティングス役/声:宗矢樹頼) コーネリア・ゲスト(フィリス・ヘイスティングス役/声:水野ゆふ) ラス・タンブリン(ローレンス・ジャコビー役/声:浦山迅) キャサリン・E・コールソン(マーガレット・ランターマン役/声:巴菁子) カレル・ストルイケン(男役/声:清川元夢)



Screen Grab - Trailer


Episode 100


TP2-TheRedRoomi


TP2-TheWaterfalli


“TWIN PEAKS” : (c)Twin Peaks Productions, Inc. All Rights Reserved.


新規・追加登録の方はこちら→https://prgnews.wowow.co.jp/




twinpeaks_NeoL_2_photography : Akiko Isobe| hair & make up:  Yousuke Toyoda| model : Megumu | graphic : Kosuke Kawamura | style : edit  Ryoko Kuwahara
jacket Vintage
underwear/socks Stylist’s own
skirt John Galliano


twinpeaks_NeoL_4_photography : Akiko Isobe| hair & make up:  Yousuke Toyoda| model : Megumu | graphic : Kosuke Kawamura | style : edit  Ryoko Kuwahara
pleated dress ¥58,000 AKIKOAOKI
boots Maison Margiela


twinpeaks_NeoL_6_photography : Akiko Isobe| hair & make up:  Yousuke Toyoda| model : Megumu | graphic : Kosuke Kawamura | style : edit  Ryoko Kuwahara
tops ¥18,000 Kriss Soonik
bag Gucci


twinpeaks_NeoL_7_photography : Akiko Isobe| hair & make up:  Yousuke Toyoda| model : Megumu | graphic : Kosuke Kawamura | style : edit  Ryoko Kuwahara
tops ¥32,800 Jenny Fax
skirt ¥17,900 Desigual
socks ¥5,000 Demodee


John Galliano http://www.johngalliano.com
AKIKOAOKI http://www.akikoaoki.com
Maison Margiela https://www.maisonmargiela.com/jp
Kriss Soonik http://kriss-soonik.com/ja/
Gucci https://www.gucci.com/jp/ja/
Jenny Fax http://jennyfax.com
Desigual http://www.desigual.com/ja_JP
Demodee http://demodee.jp

*price excluding tax

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