ーとてもシンプルなストーリーの中で、エネルギーに満ちた役者たちが輝いていました。このストーリーは長い間温めていたものなのですか?
長谷井「内容は全然違うのですが、ずっとドイツのプロデューサー(カール・バウハウトナー)と動かしていた別の企画があったんです。でも、途中で彼が他界してしまって。それで帰国して日本の仕事をし始めたときに、イタリアのプロデューサー(フラミニオ・ザドラ)から『企画を出してみない?』と言われました。そこでこのストーリーを考えて送ったら通ったんです」
ーギター弾きのピーター役のピーター・ミラリさんともストリートで出会ったそうですが、脚本は彼をイメージして書いたのですか?
長谷井「そうです。自分が知っているピーターを考えながら書いたら、本当に彼の人生とシンクロしてしまったんですよ。ピーターから『この話、知ってる!』と言われたのですが、彼も11歳の女の子とクラブで歌っていた時期があるそうなんです。その子は日本の大阪に住む方の養子になって、フィリピンを去っていったそうです。本を書いていると、本当の人生とリンクすることが多々あると思います」
ーブランカ役のサイデル・ガブデロさんも素晴らしかったです。目に強い力があって、小さな体からとてつもないエネルギーを発しているように感じました。
長谷井「僕がパリで脚本を書いていたときに、イタリアのプロデューサーから彼女が歌っているYouTubeのリンクが送られてきたんです。動画を観たら、自分が書いているキャラクターとすごく近くて、彼女で撮ろうと決めました。でもフィリピン入りしたら、彼女はすごく遠い島に住んでいるから諦めるように言われてしまって。絶対に無理だと言われたのですが、どうしても彼女にアプローチしてほしいと再度お願いたんです。そうしたら、たまたまマニラの事務所の近くに来ていて(笑)。すぐにお父さんと一緒に来てくれました」
ー最初に会ったときの印象は?
長谷井「ブランカは歌う役なので、まずは歌ってもらったんです。僕のインスタグラムにそのときの映像が残っているんですけど、彼女の歌がとにかくすごかったので、『これから演技のワークショップが10日間くらいあるんだけど、どう?』と話したら、『やりたい』とワークショップに参加してくれたんです」
ー彼女はYouTubeで歌を配信していただけで、プロではなかったのですか?
長谷井「完全に独学で歌って、お父さんが配信していたんです。演技も今回が初めてです」