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text by Ryoko Kuwahara

Fiction Issue: Interview with Clint Woodside x Dan Monick about “Vineland”

Vineland_Dan_08
(C)Dan Monick


——なるほど。ClintはDeadbeat Club、DanはCash Machineという出版レーベルをやっているけれども、LAでの紙の状況はどうですか? 


Dan 「LAのセルフパブリッシング事業はどんどん大きくなっていて、より多くの人たちが自費出版でzineや本を出していると思う。LA Art Book Fairも年々大きくなっているし、他にも小さなbook fairも増える一方だよ。
実際に、俺はまだコピー機を使って印刷して、手で折って、ホチキス止めでzineを作ったりもしているんだ。いろいろな人がzineの作り方について聞いてくることがあるけど、俺がまだ実際にそうやって手を使ったやり方でzineを作ってるのを滑稽だと思ってる奴もいるけど、その後に本の作り方について聞いてきてどれだけお金がかかるか教えると、びっくりしてちょっと怖気づいてるのがわかるんだ。(笑)
俺の好きな小さな出版社を挙げるとしたら、もちろんDeadbeat ClubThese DaysHesse PressFulcrum Press、そしてZoe Zagかな」

Clint「例えば一日中スマートフォンをスクロールしてインスタグラムを眺めているのは、座ってじっくりアイデアを出し合って、全ての写真をテーブルの上に並べて眺めることほど興奮しないと思うんだよね。
インスタで出てくるドーナツの写真を見ながら『この写真のなかで何が起こっている』なんて話したりしないだろう? 流れてくる写真を座って見ながら、それについて話すことに時間を費やすなんて俺らしくないしね。
ちなみに俺の写真はインターネット上ではうまく魅せられないんだ。それはその写真の一部にしかすぎないしね。ふさわしい環境に身をおいて座って、その時間を設けて見るってことも写真には含まれてるだろうから。
だからこそ、俺は写真出版レーベルを始めたんだ。そうやってじっくりと時間をかけて作ったり楽しんだりする時間やそこで生み出されるものを欲している。小さな出版レーベルはまさにその極みでもあると思っているよ」


Dan「俺はいつでもインスタを辞めることが出来るよ、100%ね。インスタは今や1つのコミュニケーションツールの1つで素晴らしいものなのも分かっているんだ。今日だって、たまたま街で出くわした若い子が、突然iphoneを取り出してインスタグラムを見せてきたんだ。彼は英語が話せないし、オレは日本語が話せない状況で、彼はインスタで俺とClintの写真展のオープニングの写真を指差して『これはあなたたちだよね?』って感じで。そこでインスタを通してコミュニケーションが産まれたことが最高にクールだな、と思った。
だけどそれと同時に、それはなんでもないことのようにも思える。
俺は、本があったから写真を撮り始めた。本はいつだって最高のものだよ。どんなことだってやり遂げられる気持ちにさせてくれる。
若い頃は仕事を抜け出して、欲しい写真集を探しに行ったりして、欲しかった本を見つけて『OMG!!』って本当に興奮してたよ。僕らはその流れの中に常に、そして永遠に存在するんだ。俺はそういうことをずっと続けていくだろうってことかな」


Clint「インスタグラムは無料で、誰でも何でもかんでもあまり気負わず投稿できて、それをすぐにお披露目できる。でもインスタに投稿したこともある写真だって、写真集の1ページとして印刷されることでお金がかかってもいるし、この写真をこのページに入れるという考えに至るまでに、僕らは何度も試行錯誤したんだ。出版はとにかく大変なんだよ」


Dan「同時にインスタは本を作る術を知らなかったり、または場を持ってない人たちにそういった場を与えてもくれてるよね。例えば、今日道で出会った若者も、インスタグラム自体が彼の作品のショーケースのような役割をしていたり。それはすごくいいものだよね。
俺らが若い頃にはなかったものを今持っているという世代的なもので、それはなかなか良いことではあるけど、なかった時代を恋しく思うのも正直なところだよ」



Clint「自分や自分の作品にとって、印刷されたモノであるのはとても大切だよ。ネットで見る作品は一瞬にして過ぎ去ってしまうけど、本だとゆっくり作品を見るし、自分の目の前でそれをしっかり消化することができる。
作り上げることが大変であればあるほど、実際に出来たものが愛おしく感じる。
またそれは限りあるものなので、最終的には本は売り切れになり、買えなくなる。
そういう意味で特別で収集価値のあるものと言える。俺は自分が取り組む全てのプロジェクトにおいて少部数の本を作っている。本はそのプロジェクトが世の中にどう働きかけるのか、何が欠けているのかを推し量る素晴らしいツール。出版は俺の活動にとって常に重要なことだね」


Dan「業界云々ではなく、俺はとにかく本が好きだし、印刷物が好き。そしてそれら印刷物を楽しむことが大好きだ。ただそれだけだよ。
自分が楽しめるものを作れば、それで他の人も楽しんでくれると思っている。誰かが自分の作品を見てくれているという充実感。それはいつも本当に素晴らしいことだよ」



Vineland_Clint_08
(c)Clint Woodside



Clint Woodside × Dan Monick ‘Vineland’
会期:2017 年 6 月 2 日 ( 金 ) ~ 6 月 30 日 ( 金 ) 開廊時間:水ー金 12:00~20:00、土日 12:00~18:00 ※月・火・祝日休廊
オープニングレセプション:6 月 2 日 ( 金 ) 19:00~21:00 アーティストが在廊致します。是非お越しくださいませ。
会場:VOILLD(ボイルド)
〒153-0042 東京都目黒区青葉台 3-18-10 カーサ青葉台 B1F
アクセス:東京メトロ日比谷線・東急東横線「中目黒駅」出口より徒歩 12 分、 東急田園都市線「池尻大橋駅」東口より徒歩 8 分
主催・企画:VOILLD、commune
WEB:http://www.voilld.com
(C)Clint Woodside , Dan Monick Courtesy of VOILLD, commune

Clint Woodside|クリント・ウッドサイド
ニューヨーク州 バッファロー出身の写真家。
Let Me Die In My Footsteps(2013)、Build Us A Path(2014)、Undercover Cars(2016) など、これまでに 10 冊以上の写真集をリリースして おり、本国アメリカ以外にもロンドン、スウェーデン、中国、ソウル、オーストラリアなど世界各地で作品、写真集が販売されている。2014 年には Tobin Yelland や Lele Saveri(8ball zine) らと House of Vans のアジアツアーに参加。エド・テンプルトンをはじめ数多くのアーティストに支持 される写真出版レーベル「Deadbeat Club」の創設者、キュレーターとしても活躍している。現在はカリフォルニア州 LA 在住。
http://www.clintwoodside.com
http://www.deadbeatclubpress.com


Dan Monick|ダン・モニク
カリフォルニア州 LA 在住の写真家、ミュージシャン、ディレクター。 これまでに多くの出版物や広告、スヌープ・ドッグやケンドリック・ラマー、スクリレックスなどのポートレイト撮影を手掛ける。Showboat Gallery、Slow Culture、THIS:Los Angeles、Subliminal Projects、Soo Visual Arts Center など数多くのギャラリー、スペースで展示を開催。 2003 ~ 2006 年までは LA の Jeff Electric Gallery にて新人アーティストに焦点を当てたキュレーターを務め、2010 年 1 月~ 2011 年 2 月までは、 THIS: Los Angeles のメンバーとしても活動した。2012 年 10 月にリリースした写真集「Every Payphone On Sunset Blvd」で Ed Rucha の Books&Co 展に参加し、仲間のアーティストやムエタイ選手である Anthony Anzalone と「F/S Press」、さらに Atwater Village にアーティスト プロジェクトスペース兼出版レーベルである「Cash Machine」を設立。2016 年には 3 冊目となる写真集「Psychic Windows」を Cash
Machine からリリース。2016 年 12 月に Showboat Gallery で開催された個展「Silk Degrees」では、LA のストリートに対する彼なりの視点を 写真とネオン、樹脂、アクリルを用いて表現した 27 の作品を発表した。
http://www.dmonick.com
http://www.cashmachine.la

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