Dan Monick|no title|2017
(C)Dan Monick
6月初旬、中目黒のギャラリーVOILLDでLAの写真家による二人展“Vineland”が開催された。題材はLAの中でも異質な存在感を放つ街、サンフェルナンド・バレー。時が止まったような寂しさとアウトサイダーな雰囲気を持った街だ。
気持ちの赴くままに惹かれた対象を撮るということ。題材を最大に活かすためになにを優先するか。互いの視点を分け合い、理解しあうこと——この展示のために来日したふたりと話してみえてきたことは、モノづくりだけではなく、誰もが日々の生活において置き換えることができる“在り方”。
さらに、タイムラインのスピードで全てが流れていくかのような今日において、それぞれにインディペンデントな出版レーベルを運営するふたりに、LAの出版業界の現状からSNSとの向き合い方を聞いた。
——今回の展示プロジェクトが生まれた経緯を教えてください。なぜこのサンフェルナンド・バレーを題材に選んだんですか。
Dan「俺は田舎で育って、ロサンゼルスに移ってきて15年くらいになる。このサンフェルナンド・バレーには一瞬にして惹かれて、それからずっと惹かれ続けているんだ。ここは魅力的な場所とは言えないし、住人もあまりいい印象を与えるような感じじゃない。でも、だから惹かれてるのかも。人ってアウトサイダー(よそ者)に魅了されたりするじゃない? 俺は、ここで感じる独特な雰囲気に焦点を定めていたんだ。最初はこのヴァインランドという一つの通りを撮ろうというアイデアで何マイルも何マイルも車で走り続けたんだけど、大きすぎたんだよね(笑)」
Clint「そう、だから違う方法にしようとなったんだ(笑)。そもそも俺たちは、何か変わった場所を撮ろうなんて考えてなかったし、計画やアイデアも敢えて決めなかった。何か形があるものだったり、何かを完成させるような物質を探していたわけではなく、もっと本質的で精神的な何かを探していたんだよ。だから何かを撮るためや得るための行為より、ただその場所に足を運んで狩りに来たという感じがすごくよかったんだ」
——既存のLA像と違う場所を撮りたい気持ちもありましたか?
Clint「まぁ、今まで違う側面のLAはたくさん見せられてきたね」
Dan「でもサンフェルナンド・バレーはないな。ここはロサンゼルスの一部であるけれども、ロサンゼルスではないーーなんというか、双子みたいなものかもね。でも、ここにいる人たちは他に比べて信じられないくらい違う。お互いに良い印象を持っていないんだ。ロサンゼルスで育った人たちにサンフェルナンド・バレーのことを話すと必ずネガティヴな反応が返ってくる。みんな嫌いなんだよ」
Clint「ここはLAから孤立しているからね」
Dan「もちろんロサンゼルスとは繋がっているけど、『やったー! 休暇が取れたからここにドライヴに出かけよう!』ってことにはならないな。地理的にも、物理的にもロサンゼルスなんだけど、全く別の場所。例えば、Hollywood Hills やValleywood Hillsと言ってもいいかも。
この場所のことは歌の歌詞にも出てきたり、『Vallery Girl』を始めいくつかの映画にも出ているよ。別にみんなのロサンゼルス像を変えようとしているわけではない。ただ、俺たちはこの場所が持つ不思議な魅力を見せたいんだ。個人的にはかなり大好きな場所だし、ただシンプルにこの場所を見せたいだけなんだよ」
(c)Clint Woodside