NeoL

開く
text by Meisa Fujishiro
photo by Meisa Fujishiro

藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#43 巨木に会いに

meisafujishiro_newmoon2


ちょっと話が遠回りしたが、植物があることでストレスを感じる人は少ないと思う。観葉植物が有ると無いとでは、部屋の雰囲気と自分のメンタルコンディションが違うように、人と植物とは相性の良いパートーナーなのだと思う。木を触っていると、攻撃性は失せ、柔らかな心地がする。そう、ストレスを緩和させてくれるのだ。


 そういう植物の中でも巨木というのは、古老のような者から、壮年期のもの、まだまだ青年のようなものまで様々で、森の中で見つけて思わず寄って行ってしまうような木には、今現在の自分が必要な力と知恵を授けてくれると僕は信じている。この辺は科学的根拠を出せないのだが、当たり前のように僕は信じている。
 なぜか?それは僕の経験からである。森や山に入り、出会う動物、出会う草木、そして巨木は、恋愛が運命という言葉を使うなら、ここにもその言葉を当てたいのだ。
 無数にいる異性の中から出会うことを喜ぶように、動植物との出会いも同じように喜んだっていい。


 先日、三重の飯高という土地を訪れた。友人が林業に携わっている山を案内してくれるというので、喜び勇んで行った。
 山をいくつか持っているというので、実際こんもりした山の全容を想像していたのだが、それぞれ数キロ以上先に離れた山々の一部100箇所以上にも分散していて、山を分譲住宅地に見立てた場合、まとめて持っている面と虫食いのように持っている部分があるような感じである。
 その散在している場所には、当然異なる植生があり、今回は標高差も交えた異なる場所を案内していただいた。
 自分のクライマックスは二つあった。一つ目は野生のニホンカモシカとの出会いである。確か標高千メートルぐらいな所だっただろうか。ふと振り向いた先にニホンカモシカが一頭で急な斜面の上で食事中な様子であった。
 僕は声を掛けながら斜面の下に取り付いて登っていく。一般的には、刺激しないようにそおっと近づいていくようなイメージがあるかもしれない。だが、僕はこういう時は、必ず先に声をかける。それで逃げられたらそれまでで、近くなって気付かれて驚かれるよりも、遠くからノックをしてお邪魔していいかを確認するのだ。人間に対して、そうっと近づかないのと同じで、お邪魔していいですか?と前もって許可を得るのである。


3ページ目につづく

1 2 3 4

RELATED

LATEST

Load more

TOPICS