——岩渕さんが撮る女の子はすごく魅力的な反面、時たま“嫌な女”にも見えると前に言ったことがありましたね。美しいのと同時に生々しい。巨匠・篠山紀信が善意の写真家だとすれば、その逆というか。その女の子がどう見られたいか、ではなく、岩渕さんがどう見ているかのほうが前に出ているんです。
岩渕「最近になって、写真を始めたころからずっと撮ってきた女の子をいつの間にか撮らなくなっていたことに気が付きました。前までの彼女は、なにもかもが澄み切っていて、いろんなことを吸収しながら生きていたからたくさんの表情を持っているように見えていたんです。僕もそんな彼女の、余白があって柔軟性のある表情にどうしようもなく惹かれていました。でも彼女が表舞台に立つことが増えて、雑誌やメディアを通して彼女を見るようになってから、そこに写る彼女にあまり被写体としての魅力を感じなくなった。あのときに僕が感じたことを感じなくなっていたんです。そうやって偉そうに言っているだけで、どれが本当の彼女らしさなのかは自分にも分かりません。でも彼女の強い人間性と澄んだ魅力はよく知っている。だからもう少しお互いが成長して、これまでとは違う別の糸口でそれを引き出せるようになったら、2人でまた写真を撮りたいです」
——本質は変わっていなくとも、たくさんの物や情報に晒されているうちに一人の人間の中で変化が起きるというのはきっと自然なことですよね。岩渕さんの中でそういった変化はあったと思いますか?
岩渕「3年前の上京したてのころは、毎日が楽しくて仕方なかったんです。東京っていう大都市に放り出されて、日々新しい発見があって。だけどしばらくすると、だんだん東京に魅力を見つけられなくなってきました。そのときにアドバイスをくれたのはやっぱり佐々木先生でした。先生は『それは東京に魅力がなくなったんじゃない。キャッチできていないだけだ。自分が何処を見ていたいかが定まっていて、じっと観察を続けていたらどこにだって “何か”は見つかる』と」
——上京して3年が経って、今の日々をどう感じていますか。
岩渕「上京と同時に写真を撮り始めて4年目ですが、今がスタートラインだと思っています。本当にダメ人間だから、いままで継続してやってきたことって写真以外になくて。撮りたいものが常にポンポン出てくるわけじゃないけれど、ここでやめるわけにはいかないんです」
岩渕一輝
1995年生まれ、岩手県出身。 現在大学4年生。
Text&Interview Makoto Kikuchi
Photo Kazuki Iwabuchi