2012年に発表したEP『I.』が4年越しに突如オンライン上で話題となり、無名の新人ながらYouTube上にてEP収録曲“Nothing’s Gonna Hurt You Baby”が4千万ビューを記録。フランシス・ビーン・コバーンがファンを公言し、Marc JacobsのADやRaf Simonsのショーでも楽曲が使用されるなど、女性のように柔らかで甘美な歌声と浮遊感のあるメロディーは世界中を魅了している。来日公演の先行チケットは3分で完売、はやくもHOSTESS CLUB ALL-NIGHTERでの再来日が決定するなど、日本でも高い注目を集めているCigarettes After Sexのフロントマンであるグレッグの音楽遍歴やバンドやライヴへのこだわりなどを聞いた。
——いきなりですが、4年前に出したEPが突然注目を浴びるというのは、結構珍しいことだと思うのですが、ブレイクポイントや理由をどう考えていますか?
グレッグ「リリースした当初は反応がよくなかったんだ。でも自分では素晴らしい楽曲ができたという手応えがあった。時間が経ってようやくそれがわかってもらえたのかな。これがあったから注目を浴び始めたというのは特になくて、ネットにはたくさんの音楽が溢れているから、そこから見つけてもらうには時間がかかったんじゃないかと思っている。特に僕らは小さい街の出身だし、周りにビッグなアーティストがいるような環境じゃないからね。それがこうやって多くの人に聴いてもらえるようになったというのはすごく嬉しいし、いつも感動してるよ(笑)」
——初の日本単独公演を終えたばかりですが、日本のオーディエンスの反応はいかがでした?
グレッグ「すごくポジティブなエネルギーを感じたよ。あと、他ではあまりないんだけど、ファンがお酒やお菓子などのプレゼントをくれたり(笑)、手紙をくれたりして、僕たちのことを気にかけてくれてるのが目に見えてわかるのも嬉しかったな」
——ライヴでは、単純なスローコアというよりドリームポップやアンビエントからの導きも感じました。音数は多くはないけれど、シンプルの中に様々な音楽要素がしっかり組み込まれている。それは技術が必要でもあると思うんですが、どういうバックグラウンドがあってこういうことができているのか知りたいです。
グレッグ「10歳からギターを始めて、ガレージバンドにいたこともあればデスメタルバンドにいたこともある(笑)。曲を書いて友だちに披露したり、一緒に演奏したりというのをずっとやっていたよ。その流れで2008年にCigarettes After Sexを始めて、いまここにいるんだ(笑)。
影響を受けたのは、Mazzy Starの”Fade Into”やRed House Painters。ドリーミーな感じでいうと、Cocteau Twins、フランスのFrançoise Hardy。エリック・サティやマイルス・デイヴィスもよく聴く。とにかく音楽が好きなんだ。デスメタルをやりながらもポップもアバンギャルドもジャズも好きだし、全部を表現したかった。それでそういういろんなものが混ざっていって、自分のアイデンティティが確立されていったって感じかな」
——ああ、マイルス・デイヴィスを好きな理由がわかります。様々なものを恐れず取り入れていった人ですから。
グレッグ「そう、彼はエクスペリメンタルだったからね。そういう意味では僕たちもそうかもしれない」